林美一「艶本研究」特装本とプレゼン | mizusumashi-tei みずすまし亭通信
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最近のコレクションから林美一「艶本研究」シリーズから国貞、続歌麿、春章の三冊です。これは特装本で書店では流通しなかった本です。直接作者に注文して取り寄せます。したがって、本の扉にはすべて作者のサインが入っています。1960年代の発刊で、浮世絵権威の研究本に飽き足らない林が、渾身をそそいでまとめた研究本で全十数冊に及びました。並装幀でほぼ集めましたが、噂の特装本がオークションにでていたので。

上の写真は表紙と裏表紙を左右にならべましたが、木版手刷りで口絵も木版が挿入されています。本文は銀版と墨版による2色刷りでこちらも贅沢なもの、製本は糸綴じです。おまけに春章の一冊は作者からの贈呈本で艶文伏せ字の脇に、おそらく作者の手によると思われる伏字部分の書き込みがあります。実は書店流通本も並装幀と特装幀があって、さらにこちらの私家版特装幀があるようです。私の旧コレクションは並装幀と特装幀がゴッチャですがほぼ揃っております。

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上2枚が歌麿の差込木版で、もちろん当時の彫師による新版だとおもわれます。下が春信似の春章の作品です。今はともかく、林美一はいわば在野の研究家ですから当時にあっては権威から無視されていました。発刊の意図はあっても出版社はのってくれません。ちょうど映画ブームの最中でしたから、時代考証のアルバイトをしながら、愛好家の予約を取り自費出版にこぎ着けたのでした。いわば執念本ですね。福田和彦などとは一線を画した研究本です。

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こちらが扉のサインですね。そういった経緯で編まれた本ですから、一読者へのつながりも強かったようです。まだまだ艶本は偏見の眼で見られていましたが(今でも?)、浮世絵師たちは通常の浮世絵に倍する、あるいはそれ以上にこの手の「あぶな絵」を描いていましたから、これを無視して浮世絵を語ることは江戸の昼を語って夜を語らずというところでしょう。

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ごらんとおり子どもの絵本ではありません。おっ艶っぽい影に忍び寄る出歯亀ではありますが、実は色恋の修羅場でありました。これもいちいち手貼りになっております。いかに手間のかかった本であるかの証左ですが、ほぼ出生知れぬ浮世絵をたどる林の研究がドキュメンタリーにたどれる面白本ですね。残念といえば、旧い本ですので本文挿入の写真は小さく画質も悪く、肝心の部分は白い窓があいてございます。こちらは最新のカラー本をご覧ください。どうどうと誇らしげに印刷されております。江戸のウタマロどもには敵いませぬ。

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昨日はダンディーN沢氏と某商事にプレゼンにいってきました。よほど脈がないとしないのですが、新社長になりちょうど商品構成の見直し時期に入っていますので、これを先途(船頭)に川渡りです。丹下左膳の文章のようですが、そうそう左膳は「濡れ燕の巻」を読んでいます。善人左膳になってきてちょっとダレてきております。さて、そろそろおそば屋さんとの打ち合わせの時間です。その後フルート練習、夕方はY崎さんとの打ち合わせですが、この御仁大丈夫でしょうかねぇ。