今月の二十三日金曜日未明
壱千五百萬圓相当の本が消えた
某研修所跡地…
基、研修所になり損ねた跡地から…



朝十時過ぎから七人の男共が何やら忙しく動く
口数も少なく思える
黙々と手足を動かし丁寧に『物』を運ぶ
車五台に積み込む
凡そ八時間に及ぶ其の行程
想像を絶する…

数人が運ぶ『物』を纏め
数人が階段を上り『物』を車に積み込む
何百回繰り返されたであろう
気が遠くなる

男共は還暦を過ぎた者から三十路を過ぎた者
普段重労働をしていない者や重労働をしている者
即席で集められた男共である
彼等も又、某研修所へ着く迄は夢にも思っていなかったであろう
此の様な光景を…

研修所から倉庫迄、凡そ一時間
車から『物』は倉庫へと運び込まれる
勿論彼等の手作業に依る訳である


恐ろしい光景
地獄絵だ




三重県伊勢市河崎に
古本屋が在る
其処から近くに大きな倉庫が在る
最近、其処には大量の『本』が運び込まれ
店主や息子はどうしたもんかと頭を抱えている
猫等は知らぬ顔をしている



余談
若者等に読ませたかったであろう『本』
内容は兎も角、社長の底無しの阿呆さ加減には
頭が下がる




三重県伊勢市河崎
此の小さな町に一軒の古本屋
店主、息子、息子の嫁、雄猫一匹、雌猫三匹…

十時開店、夜六時閉店

断っておくが宣伝では無い

此の八時間
店主、息子、息子の嫁は気が抜けない…

何故か……?

至極簡単な事

小さな確執が其処、此処で勃発するからだ



茶、黒、灰色の毛皮を纏った姫君は散歩に目がない
必ず息子を供にしなくては気がすまない
他の者と一緒では断じてならない
其れ程、彼女の存在は古本屋にとって重要である

黒い巻き毛のお喋りな女子は、毎日息子の嫁に話し掛ける
今、起きた・雨が降る・干した魚が欲しい・散歩に行きたい・雨が止んだ
お喋りが無い日は無い
お客とお喋りする日は気分が良いのである

古本屋一、否、河崎一の小心者の彼は、鍛えた身体で忙しく見回りをする
ミルクティー色の上着を纏い、小さな隙間も欠かさず見回る
偶に、御飯が御座らぬ・散歩に出たい・皆の視線が怖いと、申される
古本屋で彼に出逢った日は幸運日と云えるのである

片足を無くした少女は、目を離すと扉を開け一人で何処かへ出掛けるので、大人達は毎日気が気でならない
白いドレスに身を包み、黒い帽子を被り颯爽と出掛ける
頭の回転の良さや行動力は見習いたいものである


此の様な多彩な顔触れ
確執たるもの
起こるべくして起こる
回避する方法は只一つ

皆の申し出を受け入れる事だ……!

古本屋の一日は
想像以上に慌ただしい



余談
夏場、冬場はまだ静かである
春、秋は格別に慌ただしい
故に只今店内は息子の嫁だけである
大阪の梅田に

アフリカの楽団がやってくる


三重の伊勢から

良い土の村長が梅田へ行く


随分長い間待ち焦がれていたようだ
心は既にアフリカだろう

否、

勿論、未だ見ぬ土地である


目の当たりにするであろうアフリカの風は日本人にどの様に吹くのか
少々愉しみである


道中気をつけて、村長。


余談
アフリカの楽団に支払われる七千円は
高いのか安いのか…
疑問だ…
家計に大打撃は間違い無し…