2013年夏。
その頃の俺にとって新潟を拠点にするアイドルNegiccoはまだ遠い存在だった。
ただ、曲が聴きたくなってYouTubeで検索しては観るという事を週に何回かはしていたと思う。
しかしその頃使っていたスマホは3Gにしか対応していなくて、Wi-Fiはあるが通信速度が使い物にならない。
3Gの速度もムラが有りすぎて、なかなかまともに動画を観る事がままならなかった。
だから観られる時には集中して観る、というパターンが決まっていた。
それが繰り返される事によって、ある意味刷り込みの様な効果は有ったのかも知れない。
様々な動画に触れ、様々な楽曲を知り、気が付けばまた聴きたくなるというある種の中毒性に気付いたのもこの時期だったろう。
そしてこの頃Negiccoは10周年を迎え、ワンマンLiveやイベントなどを行っていたのだろうが、遠く離れた新潟や東京での話。
軽く知ってはいたものの、あまり関わりのない事だと考えていた。
10年は率直に凄いと思ったけれども。
そんな日々の繰り返しで、正直なところ余り気持ちに変化の無い時期だったと思う。
そして秋。
たまたまHPをチェックしたところ、新曲リリースの知らせが。
新しい曲が聴けるんだなぁ、ぐらいの感想しか俺にはなかった筈だ。
その直後、多分、新曲リリースに合わせたインタビュー記事か何かを見たんだと思う。
そこで語られていたのは10周年の思い。そして11年目への決意。
その内容はむしろありきたりで、その決意も当然の事だと感じた。
ブレイク間近、ブレイク直前と言われ続けてきたのだ。
少しも厳しい感想ではない筈だ。
もっと攻めるべきなんだ。
そして公開されたPV
「ときめきのヘッドライナー」
勢いは予想以上。
そして歌詞。
泣いた。
震えて涙が止まらなかった。
これは何の感情だろうか。
もちろんマイナスじゃない。
感動、歓喜、そして気付いた。
本当に、どうしようもなく、好きになっていた。
アイドルソングの歌詞ごときに感動とかフツーじゃ考えられなかったり安っぽいCGのPVで感極まったりしてどうかしてんじゃねーのかとかのいっさいがっさい戯れ言を否定して、世界の全てがひっくり返った。
俺は、本当に、この人達が好きだったんだ。
厳しい感想はその裏返し。
きっと、繰り返して観た動画は、彼女らを観たくて、会いたくて、また繰り返して。
何の事はない。
気付かないうちにすっかりハマっていたのだ。
そうなるともっと深く知りたくなるのが人間の性。
そして知ることになるのが自分の浅さだった。
つづく。