現代俳句集です。

俳句の「現代化」「現代文学化」
について実作を通して模索しています。

今回は、テーマ別作品集の
2025年夏の総集編をまとめました。

「口語体・現代仮名遣い」「現代的切れ字」
を基本にして詠んでいます。

生成AIでの
作品解説などもお楽しみください。

楽しんでご覧いただければ幸いです。

*作品はすべて既発表句です



『夏の総集編』
〜現代俳句集〜

「白と赤」

知と心薔薇しろを手にあかを手に

天道虫そらを真っぷたつに割って

アトリエよあめが色塗る濃紫陽花

鯉池よにしきゆきかうかきつばた

おくせんねん日ごとに新た大夕焼

テーマ∶色彩の美



「ブルー」

香水よブルーの香から減ってゆく

打ち水よくろくしずめて石だたみ

トマト剪る鋏のおととひとつに手

かわのなか影透きとおるラムネ瓶

そそぐ灯よ短夜のBAR琥珀いろ

テーマ∶涼しさ



「地球」

あゆ釣りよひとついのちの星地球

やみと灯にさかいのなくて祭の夜

生きるとは噛み跡のこと冷し西瓜

手花火よ黙すひとつのじんせいが

蝉の殻さらさらほろびゆくように

テーマ∶生と死



「ピエタ」

厭戦よつんとはじめてパセリの香

水鉄砲撃てばぽつんと日暮れるか

せんそうよマリアの月のピエタ像

散りこぼれ生おびただしえごの花

振りならす鐘撞きならす鐘大夕焼

テーマ∶平和希求



「薔薇」

薔薇園よ咲せるしごと咲くしごと

停泊のヨット帆ばしら揺れもせず

サイダーよ百年かけて為せばいい

わかれへといざなう蚊取り線香が

手花火よ味方たくさんうしろに居

テーマ:気づき



「夏の富士」

稜線よあらく彫られてなつの富士

鼻唄よいまのこの世の田植えうた

アイスティー机にのこる水たまり

鹿の子よ影を蹴り蹴りとびはねて

瀬戸うたいつづけて詩碑よ大夕焼

テーマ∶花鳥諷詠 1



 「逍遥」 

そしてまた草ぶえのみち四季逍遥

風鈴よ吹っきれたときたかいおと

もぐっては隠れかくれず金魚藻よ

おとたててつきひを冷やす冷蔵庫

蛍火よふぶくじだいの変わりめを

テーマ:変化



「水中花」 

一つきえ二つあらわれほたるの夜

ちりますかゆめをみますか水中花

山車とあゆむ法被かその他大勢か

うなばらが押寄せやまずこおり旗

立つゆうぐれ座るゆうぐれ橋涼み

テーマ:対比



「アイスティー」

なつのつき飛びたって死の爆撃機

水害のどろみず引けば引くほどよ

国民を手で押ししぼりなつみかん

アイスティー政治を語りだす街よ

わすれられやすさよデモも晩夏光

テーマ∶社会時事



「利休梅」

はしらから伸びていっ枝よ利休梅

いっ滴よ輪とひろがって新茶の香

たんざくのしんと揺れるか軒風鈴

敷きいしよおくへとしずか夏暖簾

断つ鋏はかないおとを花しょうぶ

テーマ∶侘び・寂び



「孤独」

梅雨晴かリモートワークふと孤独

もうひとつの東京も夏メタバース

ワイヤレスイヤホンの静なつの星

ちんもくがばちとはじけて誘蛾灯

またたいてなつぞらのほしAIも

テーマ∶テクノロジー



「清流」

ハンモック木洩日ばかりさわぐ空

サイダーよ昇天めいてあわのおと

楊枝入れせいりゅうのおと水羊羹

ふうりんよ不倫疑惑を消すテレビ

夜をふたりだまってからの風鈴よ

テーマ:音



「たましい」

ひまわりよ黄にまよいなく陽の光

なつの浜寄せてだれかの靴ひとつ

ハイビスカス花咲くネット人格が

たましいに性別あるかかたつむり

沈黙よ目の奥くらくキャンプの火

テーマ:自己同一性



「奈良団扇」

千ねんよ手がひらひらと奈良団扇

麦わら帽子歳月かたくいろ褪せて

栓抜くかおと押しまげて瓶ビール

しめ鯖よなみうねるかに盛って青

嶺晴れて殻だけのこるかたつむり

テーマ∶帰省



「天文台」

すずしさよ夜ぞらとひとつ星座盤

だんだんとほしぞらのなか海の家

ちんもくよつきぬけて夜は夏の星

夜釣りしてあかりひとすじ沖の月

なつのほしとわにとおのき天文台

テーマ∶天体と観測



「赤富士」

赤富士よ横ひとすじのくものうえ

紺浴衣下駄をからころからころよ

したたりのつらつら落ちて山奥か

神木よけっかいのそとせみしぐれ

あらう手よみずよりあおく夏大根

テーマ∶花鳥諷詠 2



「蝉しぐれ」

蝉しぐれただ父というそんざいが

立ちあがる蟻よたたみをあるく足

へいわの像しんしんと灼け炎天下

葬の夜よ傘のおもみがまして梅雨

そえる手よ葉の脈にまで薔薇の棘

テーマ∶圧



「手花火」

手花火ようかぶ顔ノンバイナリー

どの手にも薔薇様々であるように

夏の月みなたましいを照らされて

たけのはな咲く常識が変わるとき

夏星よじぶんがふるくなってゆく

テーマ∶多様性と時代の変化



「滝」

立ちのぼる泡のしろさよ黒ビール

つり下げて透きうつるそら金魚玉

さびしさよみち伸びているお花畑

こなごなにしぶいて岩よ滝のおと

とまるたび羽根あらわれて扇風機

テーマ∶内と外



「苔の花」

注連濡れて八千代の岩かこけの花

魂を揺りきよめるかキャンプの火

やおよろずの神がみの土地泉わく

法螺吹いて夏山のかげ十重二十重

ほほえむよヱビス麦酒の恵比寿天

テーマ∶アニミズム



「孤影」

入りまじる言語のなかよ山鉾来る

グエンさんは微笑むばかり田草取

ガーベラよ子にははの国ちちの国

オーバーステイ孤影が仰ぐ夏の月

ビールラムウォッカ多言語多民族

テーマ:多民族化



「水鏡」

ふんすいよそらたかだかとみず鏡

ざくざくとむすうのあなよかき氷

いのる手に蝉しぐれまた蝉しぐれ

なみうちぎわ横いっせんよ浜昼顔

さす月よはらのなみ打つかぶと虫

テーマ∶写生



「背泳ぎ」

後悔よ灯のしみてゆくゼリーの黄

金魚鉢尾ひれははなとたゆたって

えださきに飛び来てそらよ瑠璃鶲

かたつむり伸びてひかりの一行詩

背泳ぎで空をひらいてゆくことよ

テーマ∶比喩



「すだれ」

道後温泉はためかす風掛けすだれ

笹の葉よ氷灯やどす冷やそうめん

蜘蛛の巣に大穴いくつかぜのおと

釣りびとよ日ごととおのく大夕焼

なつのつきいしぶみ照らし爆心地

テーマ:三物一句



「夏越の祓」

大鳥居木もれ日まみれなつのそら

拝殿よ千木のあたりにくものみね

くぐるたび玉砂利のおと大茅の輪

すずのおとひかえめのおと夏神楽

神木よときどき飛んでせみしぐれ

テーマ∶行事



「端居」

端居して背に守るべきものばかり

ひとすじよときをくゆらす蚊線香

みつ豆よ旅これまでもこれからも

住む街にしんとあいされソーダ水

籐椅子よかべにストレリチアの影

テーマ∶生活



「夏芝」

収穫よつやにのこって茄子のいろ

トマトあま酸っぱアンデス山脈か

寝ころんで大地に浮かびなつの芝

つかむ手もおなじ匂いに干瓢干す

夕顔よやがてあなたもわたしも夜

テーマ∶植物



「鮎」

釣りびとに瀬々よおそらく鮎の川

玉虫のかぜよりおもく飛びたつか

おおさかはおおさか色よ夏つばめ

からませて蛸つかむ手ようみの底

子かまきりみぎも左もわからず野

テーマ∶動物



「天花粉」

あかん坊よみなでそだてて天花粉

なつのつき家族をひきはなす時代

ふんすいよ誰でもなくて誰しもが

誘蛾灯都市をさまようひとばかり

またたいてひとつ星ぞら帰省の夜

テーマ:家族と分断



「ビール」

白扇よ所作とはかぜのようなもの

サングラス昨年よりもきっぱりと

うきくさの花よ「30いいね」程

逝ってなお遺る「つぶやき」旱星

生ビール声があっちもこっちもよ

テーマ∶承認欲求



「波打ち際」

おなじそらひとつもなくて昼顔よ

水平線かたむけビーチパラソルが

ふうりんよ鳴って空鳴りやんで海

うみの家灯すなんでもない暮れを

波打ちぎわあしあと黒く夏の暮れ

テーマ∶海の日



「バス停」

消滅集落みちだけのこりわか葉山

うわささえなし空家みな草いきれ

鈴もなく神社朽ち果てなつのあめ

くものみね畑つぎつぎ捨て荒れて

バス停よ色褪せてゆくせみしぐれ

テーマ∶故郷と過疎化



「酢のもの」

和える箸よろこばす透く玉ねぎが

音よ揚げものとキャベツの千切と

盛付けも懐かし茄子の揚げびたし

遠甘い味よきゅうりの酢のものは

せん抜きよ家郷に冷えて瓶ビール

テーマ∶食と団欒



「熱帯夜」

スカイツリー地平夜ごとの雲の峰

アスファルト日傘ハンカチ大切に

ドドドドドダダダダダ路地炎天下

サーモグラフ日本が真っ赤夏盛ん

灯きえても都市冷房をつけどおし

テーマ:ヒートアイランド現象



「噴水」

こうすいよエレベーターの朝と夜

はしりだすバスのかがやき晩夏光

交通誘導アスファルト色日焼して

ふんすいよゆうひにまじる外国語

夜すすぎよこの灯あの灯が東京を

テーマ:都市の夏



「大緑陰」

一舟と化すゆう焼けのみずうみは

雲千々に湧いてとどかずなつの月

やまみちよ徒歩ことごとく大緑陰

羽抜け鶏影よりはやくはしりだす

あおぐ木よどれも傷つき青ぐるみ

テーマ∶自然の夏



「風鈴」

かぜを切りますそらをゆく長刀鉾

なに色がほんとうですか夕焼富士

奈良団扇夕かぜでしかありません

あさ焼けがけぶるじゃないか桜島

あの人のようだね南部ふうりんは

テーマ∶話し言葉風 1



「切り絵」

ふねというふねが切り絵だ大夕焼

それでまた一人っきりさ缶ビール

いっさいは過ぎて行きます桜桃忌

きっぱりと断りましたトマト剪る

「私にはゆめがある」また八月来

テーマ∶話し言葉風 2



「水草の花」

ひまわりのうしろすがたの静寂よ

かろうじて姿をたもつゼリーこそ

吹かれればすなのあらしを蟻地獄

ふらふらと夢のなかまで夏風邪か

たとえればひとつ泡みずくさの花

テーマ∶一物仕立て



「金魚鉢」

盆の月満ちてあなたというひとよ

そして家事手つだいだす子夏休み

プール出て立てば一人の水たまり

からっぽよ死をおしえられ金魚鉢

手花火よつどって一つ屋根のした

テーマ:夏休みとお盆


終わり



各作品や各テーマ別の
解説、批評、疑問点など
生成AIでもお楽しみください

Chat-GPT、Grok、Gemini、copilot



いつも
ご覧いただき
ありがとうございます



◯詠んでみた感想

現代俳句集のシリーズでは個人的に、

俳句の「現代化」「現代文学化」
について実作を通して模索しています。


今回はテーマ別作品集の
2025年夏の総集編をまとめました。

一部編集、再構成を行いました。

・口語体、現代仮名遣いの読みやすさ
・タイトル、作品、テーマの重層性
・各テーマごとに深みを探る挑戦
・各作品ごとの驚き、余韻、季感等
・作品集全体としての統一感
・現代的、伝統的、双方のよさを活かす

・現代的主題について探る挑戦
・俳句の伝統的な理念、思想、技法等

など。


「口語体・現代仮名遣い」「現代的切れ字」
を基本にして詠んでいます。

また現代小説、現代詩、現代短歌などと同様に、主に「現代の書き言葉」表現をメインに詠んでいます。

「現代の話し言葉」表現の作品も適宜詠みこんでいます。


俳句の「現代化」「現代文学化」について、

様々な現代的主題、現代性、社会性、思想性、詩性だけでなく、

さび、軽み、写生、花鳥諷詠等の作品もごく自然に詠めることが実作を通じてわかってきました。



◯文語・口語の大まかな図

下記は、俳句における
文語・口語の大まかな図です

◇文語俳句ー文語体ー古典語ー古い時代の文体

◇口語俳句ー口語体ー現代語ー書き言葉
                                            ∟ーー話し言葉

◇仮名づかい 歴史的仮名遣い 現代仮名遣い

より詳しく細かいことについては、書籍・ネット等でしらべてみてください


下記は
現代的な切れ字の候補についての記事です

「現代切れ字 十八字(推奨)」
よ・か・ぞ・と・に・へ・せ・で・まで
ず・れ・け・た・が・て・は・な・こそ

これらは「現代の言葉」で俳句を詠む際に切れ字のような役割を果たす語はないのか

「間」を生み出すために必要な「句を区切るための語」が現代の語にはないのかを探ったものです


俳句の「詩性」「思想性」
などについて作品を中心に探究しています






◯俳句の目標

下記について、毎日の投稿などで
月日をかけて探っていければと思っています

「表現の新と万象の真」「驚きと感動の詩」

「一新一真」「都市詠の探求」「一句新世界」 

「ものごとの花」「沈黙の美」「内的宇宙」

「三物一句」「風情の継承」「平明深遠の詩」




◯現在の主な活動内容

現代語・現代仮名遣い・現代的切れ字
を基本にして俳句を詠んでいます


① 現代俳句
俳句の「現代化」「現代文学化」
について実作を通して模索しています


② 多文体俳句
俳句の「使用文体の拡張」
について実作とともに探究しています


③ 一行詩的俳句
俳句の「詩性」「思想性」など
一行詩としての側面も探っています


個人的な
俳句の探究を楽しんでいます


*本俳句集に収められた各作品について、生成AIを用いた解説・批評・疑問点・問題点の確認などは私的な楽しみの範囲内でご自由にお試しください

ただしその内容をインターネット上に転載・公開することはご遠慮ください

*解説について至らない点、充分に書き尽くせていない部分もあると思いますがご容赦ください

*俳句については個人・団体によって様々な考え方や見解があります



◇関連記事◇