61冊目
「天王船」
宇月原晴明
中公文庫
- 天王船 (中公文庫)/中央公論新社
- ¥620
- Amazon.co.jp
天文十七年夏。
宵祭を楽しむ十五歳の信長の眼前に、見慣れぬ船が現われた。
数百の提灯に彩られた船上から、甘い唄声と異形の舞が信長を密やかな剣戟に誘う(表題作)。
―松永久秀と斎藤道三をペルシア渡来の暗殺秘術の兄弟弟子として描き、戦国史を異形の活躍で彩った刮目の長篇『黎明に叛くもの』の外伝四篇を収録。
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「隠岐黒」
「天王船」
「神器導く」
「波山の街 ――『東方見聞録』異聞」
の4編収録の短編集です。
「黎明に叛くもの」のスピンオフだと書いてあったので安心して読んだのだけど、読了して読書メーターで他の人の感想を見ると、『「信長」とのリンクが』とか『「秀吉」とのリンクが』とか書いてあって、順番を間違えたかと少しがっかり。
とはいえ、基本的には「黎明」のサイドストーリーとして楽しめたので、前述2作品を読み終えたらまた読もうと決意しました。
「黎明に叛くもの」に連なる様々なアイテム(「アイコン」と称した方が正確かもしれないけど)がちりばめられた「波山の街」もなかなかに興味深く、楽しかったのだけど、もっともよかったのは表題作の「天王船」。
これだけを読んだのならいまひとつだったかもしれないけれど、「黎明」で久秀の心情を解してから読むともうこれはたまらない。
道三に対する親愛の情。信長に対する嫉妬。それらの煮え滾る思いを隠しきれないままに、祭りの座興と軽口を叩くことで信長を挑発しつつも自分の心をなだめようとするとか、ああああ久秀ェェ!
前提情報の違いでこれだけ読後感が変わるであろう物語も珍しい。
珠玉の掌編でございました。
「信長」と「秀吉」もとっとと読まないとなぁ・・・