13冊目
「安徳天皇漂海記」
宇月原晴明
中公文庫
壇ノ浦の合戦で入水した安徳天皇。
伝説の幼帝が、鎌倉の若き詩人王・源実朝の前に、神器とともにその姿を現した。
空前の繁栄を誇る大元帝国の都で、巡遣使マルコ・ポーロは、ジパングの驚くべき物語をクビライに語り始める。
時を超え、海を越えて紡がれる幻想の一大叙事詩。
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「御霊信仰」というものをご存知でしょうか?
ウィキペディアだと、
御霊信仰とは、人々を脅かすような天災や疫病の発生を、怨みを持って死んだり非業の死を遂げた人間の「怨霊」のしわざと見なして畏怖し、これを鎮めて「御霊」とすることにより祟りを免れ、平穏と繁栄を実現しようとする日本の信仰のこと
と書かれています。
つまり、この物語は、「なぜ安徳天皇は怨霊になっていないのか」という疑問から生まれたわけですね。
一応、鎌倉幕府の源家将軍は僅か3代で絶えてしまうのですが、安徳天皇ほどの身分と非業さを持った怨霊の呪いが、その程度のはずがないではないか、と。
ならば、そこで「何か」があったのではないか、と…
まあ、そんなことを知らなくても問題なく楽しめるのですが、知ってると更に楽しめるかもしれない、豆知識のコーナーでした。
で、感想に戻りますが、多くを語ることはしません。
とても面白かった!
あらすじにもあったように、物語が時を超え、海を越え、一本の道として紡がれていくさまは、見事の一言でした。
以前に読んだ「黎明に叛くもの」でも思ったけど、宇月原さんは、誰も考え付かないようなところを綺麗にリンクさせるのが本当に巧いなぁ。
十二分に堪能しました。
もうこれは、全作品読むしかないでしょう!
てか、絶対読む!!