12.「楊令伝12 九天の章」北方謙三 | 町に出ず、書を読もう。

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物語がないと生きていけない。社会生活不適合者街道まっしぐら人間の自己満足読書日記です。

12冊目
「楊令伝12 九天の章」
北方謙三
集英社文庫




うおぉぉぉぉーー!



○○ォォォーー!!



△△ゥゥゥーー!!



おめぇら、超絶カッコいいぞぉぉぉぉーー!!!



…というわけで、ネタバレ防止で伏せ字にしているため、何にもわからないですよね。



語尾の母音だけで誰のことか分かったら、かなりすごいと思います(笑)



いやあね、この巻は上記の伏せ字ふたりに尽きますよ。



ふたりとも、「水滸伝」からの古参で、そんな中で重要なポストに就きながらも、ちょっと地味めのキャラクターだったんですけどね。



散り際に咲かせた花がもう、お見事でした。



ふたりのシーンは外で読んでいたので、感情の揺らぎを必死で抑えながら読んだのですが、部屋で読んでたら間違いなく号泣ものでしたよ、これは。



最近何巻かはあんまり戦もなくて、ちょっと盛り上がりに欠けるな、なんてことを正直思っていたのですが、この巻でまた一気に引き込まれました。



一番印象的だった台詞は、読んだ人みんながみんな挙げそうなベタな箇所ですが、



「全て『替天行道』が悪かった。そう思うしかないだろう」



という部分です。(原文ママではなく若干アレンジはしてますが)



宋江が『替天行道』を記してから、何年もの年月が流れました。



叛徒に毛が生えた程度の規模で梁山湖に拠っていた頃ならば、皆が皆『替天行道』に違和感なく心酔できていたでしょう。



それは見果てぬ夢であり、大いなる理想だったのだから。



しかし、時は流れ、状況が刻々と変化している今。



『替天行道』を記した宋江ではなく、後事を託された楊令が頭領となっている今。



悪い言い方をすれば机上の空論だった『替天行道』の通りに突き進むだけでは、色々と不都合が生じるのは当たり前です。



しかし、『替天行道』を誦んじるほど読み込み、志を抱いた者にとって、楊令の方策は裏切りに見えてしまうのかもしれません。



順調かに思えた梁山泊の、内部から生じ始めた軋み。



今はまだ小さい軋みですが、いずれ大きなものになるのかもしれません。



そして、そういう折衝をさせれば梁山泊いちだった男(○○さんのことです)がこの巻で退場してしまったことが、今後に影を落としそうな予感がするなぁ。



あと3巻。



まだまだ結末は、見えてきません。