74.「折れた竜骨」米澤穂信 | 町に出ず、書を読もう。

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物語がないと生きていけない。社会生活不適合者街道まっしぐら人間の自己満足読書日記です。

74冊目
「折れた竜骨」
米澤穂信
東京創元社




ロンドンから出帆し、波高き北海を3日も進んだあたりに浮かぶソロン諸島。

その領主を父に持つアミーナはある日、放浪の旅を続ける騎士ファルク・フィッツジョンと、その従士の少年ニコラに出会う。

ファルクはアミーナの父に、御身は恐るべき魔術の使い手である暗殺騎士に命を狙われている、と告げた……。

自然の要塞であったはずの島で暗殺騎士の魔術に斃れた父、犯人候補の8人の容疑者、いずれ劣らぬ怪しげな傭兵たち、沈められた封印の鐘、鍵のかかった塔上の牢から忽然と消えた不死の青年――そして、甦った「呪われたデーン人」の襲来はいつ?

魔術や呪いが跋扈する世界の中で、「推理」の力は果たして真相に辿り着くことができるのか。

現在最も注目を集める俊英が新境地に挑んだ、魔術と剣と謎解きの巨編登場!




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はじめにハッキリと言っておきますが、とても面白い作品でした。



最初は米澤さん自身、もっとファンタジー色の濃い舞台で描くイメージだったようですが、現実に片足を残したようなこの舞台設定の方が、この作品には向いていたように思います。



ミステリーとファンタジーの配合バランスが秀逸で、舞台設定による「現実の物語では適用されない特殊ルール」がとても自然に盛り込まれているのも巧い。



昨年末の年間ミステリーベスト本でも、だいたいベスト3には入っていましたが、読んで納得の作品でした。



でも。



どうも世間一般では、ファンタジーとミステリーの融合という『斬新なこと』をしていることで、評価が高まっているように見受けられるんですよ。



曰く、「こんな設定はじめてだ」

曰く、「ファンタジーとミステリー??と思ったけど、すごくマッチしていた」

等々…



違う!と声を大にして言いたい。



すでに先人たちは、同じカテゴリーの作品をいくつも発表してるんだよ、と。



私はその「斬新さ」を考慮しない状態でも、この作品はベスト3に入って然るべき作品だと思います。



だから、逆に「斬新さ」を加味してベスト3止まりだったら、それは過小評価に過ぎると思うんですよねぇ。



まあ、私もそっち系のミステリーをそんなに多く読んでいるわけではないので偉そうな口は利けないのですがね。



何かちょっと腑に落ちなかったもので、つい。






上遠野さんの事件シリーズは、続き出ないのかなー。