ここでは、非住宅案件の幹線計算(許容電流、電線サイズ、遮断器選定、電圧降下)について、わかりやすく解説します。



幹線計算のやり方は、設計者によって多少の考え方の違いがありますが、当記事では、内線規程や国土交通省の建築設備設計基準のやり方に則って解説をしていきます。



まず、計算の流れを解説したあとに、様々な条件ごとの具体的な計算例(演習問題)を示したいと思います。



初めは計算の概要を説明しますが、それだけだとよくわからないと思うので、ぜひ記事の後半の具体的な計算例についても読んで理解を深めていただければと思います。



※分岐回路の配線や分岐遮断器の選定については、また別の記事で解説したいと思います。



単相3線式の幹線の場合の計算の流れ



1.設計負荷電流の算出

2.幹線保護用遮断器の定格電流の選定

3.幹線保護用遮断器の定格電流から、電線サイズを選定

4.選定した電線サイズにて、電圧降下を計算し許容値に収まっているか確認




1.設計負荷電流電流の算出


設計負荷電流とは、設計上、電路に流れる電流です。


単相3線式の場合、以下の式にて、設計負荷電流を算出します。


↑単相3線式


I=((L1N又はL2Nのうち大きい値)/100 )+ (L12/200)


I:設計負荷電流

L1N:L1〜N間の電灯負荷容量合計 VA

L2N:L2〜N間の電灯負荷容量合計 VA

L12:L1〜L2間の電灯負荷容量合計 VA



単相3線式は3本線のうち、L1とNまたはL2とN間の電圧を取れば100V,L1とL2間の電圧を取れば200Vと、100Vも200Vも両方取れるようにした配線方式で、住宅を除き、施設などでは一般的に採用されている方式です。


100Vの負荷については、例えば、L1NよりL2Nに多くの100V負荷を接続すれば、L1に流れる電流に比べ、L2流れる電流が大きくなります。

その場合、L2に流れる電流値に合わせて、3本の線のサイズが決まるため、L2に流れる電流値が設計負荷電流ということになります。


まず、L2Nを100Vで除することにより、L2に流れる100V負荷の電流値を求めることができます。そして、200V負荷の電流については、L1とL2に均等に流れるため、L12を200で除することにより、L2に流れる200V負荷の電流値(=L1に流れる200V負荷の電流値)を求めることができます。


以上が、上記の式の考え方ですが、L1-N間とL2-N間に100V負荷を均等に配置すれば、基本的には、L1もL2も流れる電流はほぼ同じになりますので、実際の計算では、簡略式として以下の式を使うことも多いです。


 (L1+L2+L12)/200


単純に負荷容量の合計値を200で割った式となります。

100V負荷も200V負荷も含めて200Vで割るという非常に簡単な式になっています。


これは、L1-N間とL2-N間に100V負荷を均等に配置した場合のみに適用できますが、基本的には均等に配置して製作するため、均等配置が難しい場合を除き、そのように考えて問題ありません。



2.幹線保護用遮断器の定格電流の選定

(省令第63条、電技解釈第148条、内線規程3705-8)


省令第63条より、低圧幹線の電源側には、その電線を保護するために過電流遮断器を設置することが義務付けられています。具体的には受変電設備内に設置する送り出しのブレーカーということになります。

先ほど算出した設計負荷電流以上の定格電流の遮断器を設置します。

(分電盤の主幹ブレーカーは任意ですが、受変電設備の送り出しのブレーカーは法的に必須であることに注意)




3.幹線保護用遮断器の定格電流から、電線サイズを選定


幹線保護用遮断器の定格電流以上の許容電流を持つ電線サイズを選定します。

設計負荷電流からではなく、遮断器の定格電流から、電線サイズを選定する点に注意です。

なぜなら、例えば遮断器の定格電流が50Aの場合で、許容電流が50A以下の電線を選定してしまうと、その電線に45Aなどの過電流が流れても、50ATの遮断器が動作せずに、電線に許容電流以上の電流が流れ続けてしまうからです。

焼損まではいかない場合でも、熱の影響で絶縁体の劣化の原因になり、ケーブルの寿命を縮める可能性があるので、避ける必要があります。

よって、配線サイズは、ブレーカーの定格電流以上の許容電流を持つものを選定します。

※後述しますが三相動力の場合は、始動電流の関係上、この考えは適用されません。


また、電線の許容電流は敷設方法によって異なります。

ケーブルは電流が流れることで、電流の2乗に比例して発生するジュール熱により、絶縁体が徐々に劣化したり、場合によっては火災につながるため、許容電流が定められているのですが、周囲の温度が高かったり、隣接するケーブルがあったりすると、当然そのケーブルからの発熱もあるため、周囲温度上昇により、ケーブルの許容電流は低減することになります。


例えばケーブルラック配線の場合は、周囲に多数のケーブルがあることにより、周囲温度があがるため、許容電流が下がります。逆に地中線路の場合は、気中よりも周囲の温度が低いため、許容電流は気中と比べ高くなる傾向にあります。


なお、配線の敷設方法ごとの許容電流値は、内線規程や建築設備設計基準、ケーブルメーカーの技術資料などに、代表的な数値が載っているため、それを参考にすることが多いです。 しかし、1本の電線管に複数本のケーブルを敷設する場合など、代表的ではないものについては載っていないため、そのような場合は何かしら根拠を持って、うまく想定する必要があります。


代表例が載ってない場合で、しっかりと計算したい場合は、JCS0168-1「33kV以下電力ケーブルの許容電流計算ー第1部:計算式および定数」により算出する必要がありますが、計算式が複雑で結構大変です。


想定する場合、例えば、電線管内にCVケーブルを2条敷設する場合の許容電流の例は載っていませんが「内線規定 資料1-3-3」に電線管に収めた場合のVVケーブル1条、2条の場合の許容電流が載っているので、その比率からCVケーブルの2条の場合の許容電流を想定するなどのやり方もありかと思います。


また、内線規程1340-2表に電流減少係数が載っていますが、これは原則として絶縁電線を使用の場合に適用する表となります。ケーブルは、シースがある関係で絶縁電線に比べ放熱性が減少するため、厳密にいえば、同表の適用が正確とは言えませんが、この表を参考にしてる設計者も多いかなと思います。



あとは、これは安全側に働くので、考慮しなくてもいいのですが、単相3線式で、CV-3Cを使用する場合はCV-2Cの許容電流を、CVTを使用する場合はCVDの許容電流を参照します。

↑許容電流の代表例(建築設備設計基準より抜粋)


例えば、CVT38sqの許容電流を調べたいときは、一覧表のCVD38sqの許容電流の値を参照します。

なぜなら、単相3線式の場合、CVTの3本の電線のうち、1本は中性線になるため、基本的にはそこには電流は流れません。そのため、中性線からは発熱がなく、他の電線に影響を及ぼさないため、許容電流的には実質CVDとして使用しているのと同じ状態になります。



幹線分岐がある場合は、分岐点より3m以内に遮断機を設置しないといけないことが電技に定められていますが、分岐の幹線の太さを一定以上にすることで、分岐点の遮断器が免除されるため、幹線分岐がある場合は、それも考慮して電線サイズを選定します。

計算例にて後ほど解説しますが、詳しくは内線規程1360-10をご確認ください。




4.選定した電線サイズにて、電圧降下を計算し許容値に収まっているか確認 (内線規程1310-1 資料1-3-2)


許容電流的には問題なくても、電線の太さが細いあるいは電線のこう長が長くなる場合、電線のインピーダンスが大きくなり、電圧降下が発生するため、電圧降下が許容値以下に収まっているか確認します。



電圧降下の許容値は以下のようになります。

(建築設備設計基準より抜粋)


電圧降下が許容値より大きいと、機器が正常に動作しない可能性があります。


電圧降下の計算式は以下のようになります。


e=K×I×L×(RcosΘ+XsinΘ)/1000


e:電圧降下 V

K:電気方式による係数(単相3線:1  三相3線:√3)

R:電線1kmあたりの導体抵抗 Ω/km

X:電線1kmあたりのリアクタンス Ω/km

cosΘ:力率

sinΘ:√(1-cosΘ²)



力率は建築設備設計基準を参考に単相の場合、0.95とする場合が多いです。


(RcosΘ+Xsin)の部分については、建築設備設計基準やメーカーの技術資料に力率ごとに計算された数値が載っているため、それをそのまま使う例が多いかと思います。


計算した結果、もし、電圧降下が許容値に収まらない場合、サイズをワンランクあげて、再度電圧降下を計算します。




三相動力幹線の場合の計算の流れ



1.設計負荷電流の算出

2.電線サイズの選定

3.幹線保護用遮断器の選定

4.選定した電線サイズにて、電圧降下を計算し許容値に収まっているか確認




1.設計負荷電流の算出


三相動力の場合、負荷容量は、負荷容量(kVA)、消費電力(kW)、出力(kW)の3つの表し方があり、メーカー側から3つのうちどれか一つを示される事が多いです。


消費電力と出力は単位がkWで同じため、それらを混合している設計者も多いですが、出力はモーターの軸動力のことであり、正しくは消費電力×効率=出力となります。また、消費電力/力率=負荷容量(kVA)となります。


たまに、出力を力率で除して負荷容量を算出する人がいますが、正しくは出力/力率×効率=負荷容量(kVA)となります。



負荷容量(kVA)や消費電力(kW)の場合は、以下の式にて、設計負荷電流を算出します。


I=負荷容量(VA)/√3×200(V)



出力(kW)の場合の設計負荷電流は、メーカーに確認するか、内線規程の3705-1表「200V三相誘導電動機1台の場合の分岐回路」にて、各出力値ごとの全負荷電流(定格電流)の参考値が載ってるため、それを参考に設計負荷電流を求めます。

なぜ分岐回路の表なのかと思われるかもしれませんが、三相動力の設計負荷電流算出においては、各分岐回路ごとに電流値を算出し、それを合計したものを設計負荷電の値として扱っています。

(参考 内線規程3705-3表の次のページの使用例より)


↑内線規程の3705-1表「200V三相誘導電動機1台の場合の分岐回路」抜粋


※80kW以下の電動機は、汎用品であるため、基本的に

該当する出力と同じものが内線規程の表にあることが多いです。なお、この表は出力表示のため、消費電力しか分からない場合は適用ができません。




2.電線サイズの選定


三相動力の場合、電線サイズを求めるにあたり、始動電流を考慮し設計負荷電流を補正します。


具体的には、以下のようになります


①その幹線に接続する電動機の定格電流の合計が50A以下の場合は、その定格電流の合計の1.25倍

②その幹線に接続する電動機の定格電流の合計が50Aを超える場合は、その定格電流の合計の1.1倍



よって、上記で求めた値をもとに、それ以上の許容電流をもつ電線を選定します。

始動電流は3-6倍となるため、1.25倍しかしなくていいのかと思われるかもしれませんが、始動電流は短時間であるため、短時間だけ電線の許容電流を超える分には、問題ないので、3-6倍までは必要ないという考えになります。


なお、単相の場合は、遮断器を選定し、その遮断器の定格電流を求めてから、その定格電流以上の許容電流をもつ電線を選定していましたが、三相動力の場合、始動電流の関係で、遮断器の定格電流がかなり大きな値になっているため、「遮断器の定格電流>電線の許容電流」となる事が多いです。

遮断器の定格電流については、始動電流により動作しない定格のものでかつ、電動機の定格電流の3倍以下とする必要があります。始動電流を考慮して遮断器の定格電流を選定するため、単相の場合と違い、遮断器の定格電流>電線の許容電流という現象が起こりえます。

その場合、幹線保護用遮断器では、短絡に関しては遮断できても過負荷に関しては遮断できなくなってしまいます。しかし、三相動力の場合、電動機ごとに分岐回路を設けて、サーマルリレーなどを設置し、過負荷保護を行っているので、幹線保護用遮断器は短絡に対してのみ配慮すればよいとの考えで、「遮断器の定格電流>電線の許容電流」となっても問題ないという考えを採用しています。単相は、三相と違い、遮断器のみでの保護になり、基本定格電流20Aの分岐遮断器で統一しているため、電線の許容電流>遮断器の定格電流とする必要があります。



補足

内線規程3705-5より、電動機回路については、単相で15A分岐回路(配線用遮断器にあっては20A)から使用する場合、電動機の出力が0.2kW以下である場合を除いて、サーマルリレーなどの過負荷保護装置の設置が求められています。

よって、単相の場合、過電流遮断器で短絡電流及び過負荷を保護していますが、三相動力の場合、過電流遮断器で短絡保護をして、サーマルリレーなどで過負荷保護を行うことになります。

なお、モーターブレーカー(過電流遮断器とサーマルリレーを一体化したような、短絡と過負荷両方に対応できるようにしたブレーカー 別名、電動機保護兼用配線用遮断器)を使用する場合は電動機の定格出力に適合したものを使用することとなります。



3.幹線保護用遮断器の定格電流の選定


三相動力の遮断器の定格電流は始動電流を考慮し、大きめのものを選定する必要があります。過電流遮断器は多少の過負荷電流なら、瞬時に動作せず数分間たってから動作するようになっていますが、始動電力は定格電流の3-6倍、大きいときには10倍以上にもなるため、遮断器がすぐに動作してしまう可能性があります。

そのため、幹線保護用遮断器の定格電流は、負荷の特性を考慮する必要があるため、正確に調べるには各負荷のメーカーに確認する必要がありますが、直入れ始動及びスターデルタ始動については内線規程の3705-3表「200V三相誘導電動機の幹線の太さ及び器具の容量」に参考値が載っているため、それにより選定をするのが一般的です。


↑200V三相誘導電動機の幹線の太さ及び器具の容量(内線規定より抜粋)


※先ほどは分岐回路の表でしたが、こっちは幹線の表であることに注意



なお、内線規程の表は出力ベースのため、消費電力しか分からない場合は、出力に換算する必要があります。メーカーに確認するのが確実ですが、内線規程の資料3-7-1「一般用低圧三相かご形誘導電動機の全負荷特性」などから、効率の値を推定し、それに近しい出力の欄を参照することで、本表を適用することが可能となります。


インバーター始動の場合は、内線規程の表は適用できないので、メーカーに確認する必要があります。



4.選定した電線サイズにて、電圧降下を計算し許容値に収まっているか確認


基本的には単相の場合と計算の仕方は同じです。

注意点としては、設計負荷電流は、始動電流を考慮した補正した電流値ではなく、補正前の電流値で計算行ってください。

また、力率は建築設備設計基準や内線規程の資料3-7-1「一般用低圧三相かご形誘導電動機の全負荷特性」を参考に0.8とすることが多いです。






計算例



例1  

単相3線式の単独幹線の場合で、ケーブルラック及び電線管使用の場合



【諸条件】


・配線方法

 横引きはケーブルラック 盤への立ち下げは金属管

・こう長

 60m

・ケーブルの種類 

 EM-CET


・分電盤容量

 7.3kVA


・基底温度(電線が敷設されてる環境の温度)

 30℃




1.設計負荷電流の算出



まず、設計上、どれくらいの電流が流れるのかを算出します。



単相負荷電流=負荷容量(VA)/電圧(V)


例えば受変電設備〜分電盤1L-1の幹線の設計負荷電流を求めたい場合、分電盤の容量が7.3kVAだったら、

設計負荷電流は7300/200=36.5Aとなります。



つまり、受変電設備〜分電盤1L-1の幹線には、設計上、36.5Aの電流が流れるということになります。



2.幹線保護用遮断器の選定(電技第63条、電技解釈148、内線規程3705-8)


電技解釈148より、低圧幹線の電源側には、その電線を保護するために過電流遮断器を設置することが義務付けられています。


受変電設備〜分電盤1L-1の幹線には、設計上、36.5Aの電流が流れることがわかったため、36.5A以上の定格の配線用遮断器を選定する必要があります。

よって幹線保護用遮断器の定格電流は36.5A以上の直近上位である50Aとします。

(50ATのMCCBを選定します)



3.配線サイズの選定


50ATの遮断器を選定したため、50A以上の許容電流を持つ電線を選定する必要があります。

なぜなら、許容電流が50A以下の電線、例えば、設計負荷電流を基準に36.5Aの許容電流しかない電線を選定してしまうと、その電線に45Aなどの過電流が流れても、50ATの遮断器が動作せずに、電線に許容電流以上の電流が流れ続けてしまうからです。

焼損まではいかなくても、熱の影響で絶縁体の劣化の原因になり、ケーブルの寿命を縮める可能性があるので、避けたほうがよいでしょう。

よって、配線サイズは、ブレーカーの定格電流以上の許容電流を持つものを選定します。


(三相動力の場合はこのルールは適用外となります。 三相動力の場合も、本来は、ブレーカーの定格電流以上の太さの電線を選定したいのですが、動力負荷は始動電流の関係でブレーカーの定格電流が大きくなっている場合があり、それにあわせて電線を選定するとコスト高となり経済性が悪いため、このルールは適用されないこととなっています。三相動力の場合、分岐回路ごとに過負荷保護を行っているので、短絡に対してのみ配慮すればよいという考え方を採用しています。)



配線サイズは、ブレーカーの定格電流以上の許容電流を持つものを選定するため、今回の場合、50Aより大きい許容電流をもつサイズのケーブルを選べばよいということになりますが、配線の敷設方法によって許容電流は変わるので、そこは注意が必要です。


↑EM-CET、EM-CEDの許容電流



例えばEM-CET14sqの許容電流は91Aとなります。

(EM-CET14sqの許容電流は86Aですが、これは3相3線式の場合の電流値であり、単相3線式の場合はCEDの許容電流似の値をとります。)



しかし、ケーブルラックに他の電線といっしょに当該配線を敷設した場合は他の電線からの熱の影響で周囲温度が上昇するので、91Aより許容電流が少なくなり、50A以上という条件を満たすとは限りません。


ケーブルラック配線の場合の低減率を0.7とすると、


91A×0.7=63.7となり、50A以上となったため、

EM-CET14sqで問題ないことになります。



※温度が30度なので補正をしても良いですが、気中なら、一律に40度として計算することが一般的です。また、今回の場合30℃は安全側なので、補正しなくても問題ないと思われます。



※今回の場合、一部配管も使用していますが、ケーブルラック敷設として計算したほうが安全側なので、ケーブルラック敷設として計算を行いました。


基本的には、2種類以上の敷設方法が混合の場合は、敷設方法ごとにケーブルの太さを変えるのはジョイント部が多くなり良くないため、どちらか一方の悪い方の条件(今回の場合ケーブルラック)で計算して、ケーブルラックでも配管部分でも同じ太さの1本のケーブルで敷設するのが良いと思われます。

また、一部ケーブルが密集する場所(例えば分電盤へのたち下げ)などがある場合、許容電流は原則として、一番条件が悪い部分で算出するため、そこに合わせて計算する必要があります。例えば100mのうち5m程度、ケーブルが密集していて、許容電流を満たしていない場所があった場合、そこの部分の熱放射性が落ちるため、例え5mであったとしてもケーブルの劣化や焼損の可能性があります。そのような場所でもケーブルを密集させないか、もしくは密集させる前提で許容電流を計算する必要があります。

(ケーブルを密集させた5mの部分のために、残りの95mの部分の密集させてない部分のケーブルも含め、許容電流の大きなものを選定するのはコスト高となるため、一般的には、ケーブルを密集させるところを作らないほうが良いかと思います)




4.電圧降下の確認(内線規程1310-1 資料1-3-2)


幹線+分岐の長さが60m以下の場合、電圧降下の許容値は幹線3%以下、分岐2%以下となります。


EM-CET14sqの場合、電圧降下が、3V以下になっているか確認します。


3%というのは、単相の場合、100V回路でも200V回路でも、3Vである点に注意してください。200V回路であっても、3%は6Vとはならず、単相である限り3Vとなります。


計算式は先ほども記載しましたが以下になります。


e=K×I×L×(RcosΘ+XsinΘ)/1000


e:電圧降下 V

K:電気方式による係数(単相3線:1  三相3線:√3)

R:電線1kmあたりの導体抵抗 Ω/km

X:電線1kmあたりのリアクタンス Ω/km

cosΘ:力率

sinΘ:√(1-cosΘ²)


今回の場合、単相なので力率は0.95とします。

EM-CET14sqで力率0.95の場合の

インピーダンスの値(EM-CET14sq)は、建築設備設計基準の表より1.66となるため、上記の式に値を代入すると、以下のようになります。


1.66Ω/km×60×10-3 km×36.5≒3.63V 



計算結果より3V以下にならなかったため、直近上位の配線太さであるEM-CET38sqを選定します。




例2

単相3線式で、幹線の途中分岐ありで、電線管主体の場合



【諸条件】

配線方法

 電線管主体


こう長

  分岐前30m 分岐部分 5m及び10m


基底温度 

 40℃


負荷容量 

 L-1:20kVA

 L-2:30kVA


ケーブルの種類 

 EM-CET





1.設計負荷電流、幹線保護用遮断器、配線サイズの算出



幹線分岐部分〜分電盤1L-1の設計負荷電流は20000VA/200V=100A


幹線分岐部分〜分電盤L-2の設計負荷電流は、30000VA/200V=150A


設計負荷電流は100+150=250A



よって、分岐前の幹線を保護する過電流遮断器の定格電流は、250Aとなります。


分岐点から過電流遮断器にいたる分岐幹線の長さは、原則3m以内と定められています。(電技第56.57.63条、電技解釈149条、内線規程1360-10)

よって、図中のA点、B点にそれぞれ、分岐後の幹線を保護するための過電流遮断器を設置しないといけないのですが、今回は、緩和規定を適用することにします。



緩和規定


(1)電線の許容電流が、その電線に接続する低圧幹線を保護する過電流遮断器の定格電流の55%以上である場合

(2)電線の長さが8m以下であり、かつ、電線の許容電流がその電線に接続する低圧幹線を保護する過電流遮断器の定格電流の35%以上である場合



今回は(1)を適用し、分岐後の幹線の太さを幹線保護用遮断器の定格電流の55%以上の許容電流を持つものにすることによって、分岐点から3m以内の過電流遮断器

の設置を緩和することとします。



幹線保護用遮断器定格電流は225Aなので、

225×0.55≒120A


よって、分岐後の幹線は、120A以上の許容電流を持つケーブルを選定します。


しかし、先ほど、許容電流からの算出結果により、

幹線分岐部分〜分電盤1L-1の設計負荷電流は100A

幹線分岐部分〜分電盤L-2の設計負荷電流は150Aとなり、設計負荷電流のほうが大きいため、分岐部分は、設計負荷電流を基準に150A以上の許容電流を持つ電線を選定します。


今回は電線管主体で、EM-CETを使用するため、建築設備設計基準の「保護管配線の場合のEM-CE及びCVケーブルの許容電流」の表における、EM-CEDの値を確認します。(単相の場合、通常、EM-CETの中性線に電流が流れないため、EM-CEDの値を参照する)



よって、分岐後のケーブルは、EM-CED60sqの許容電流が165Aなので、EM-CET60sqを採用します。



分電盤の主幹ブレーカーは予備回路を含めた設計負荷電流以上であればよいので、それぞれ100A、150Aであることを考慮し、100A、150Aとします。

※今回は適用しませんでしたが、分岐回路と同じ考え方で80%の余裕をもたせ、ブレーカーを選定する設計者も多いです。メーカー側から80%にするように言われることがあります。


ちなみに、分電盤は主幹ブレーカーを設置することが一般的ですが、内線規程では、分電盤の主幹は、特に必要のある場合以外は取り付けなくても良いとなっています。(内線規程1355-1) 

送り出しのブレーカーは幹線の保護のため(法的にも)必須ですが、分電盤の主幹は任意です。

しかし、今回の場合、幹線分岐があったため、L-1のメンテナンス等で送り出しのブレーカーを遮断すると、関係のないL-2まで停電になってしまうため、今回は、内線規程における「特に必要のある場合」に該当すると考えられ、主幹ブレーカーは必須だと考えられます。単独幹線の場合でも、主幹ブレーカーがないと盤を触るときに、わざわざキュービクルまでいかないといけなくなるので、任意とはいえ設置したほうが良いでしょう。また、建築設備設計基準では分電盤の主幹はブレーカーを設置することになっていますが、動力制御盤の主幹は端子とするとなっています。

以前は、動力は受変電設備から直接という物が多かった時代の名残であり、実際には動力制御盤でも主幹ブレーカーを設置することが一般的になっています。



続いて、分岐前の幹線のケーブルサイズについても算出します。

同じく建築設備設計基準の「保護管配線の場合のEM-CE及びCVケーブルの許容電流」の表における、EM-CEDの値を確認します。


幹線保護用遮断器定格電流は225Aであり、EM-CED100sqの許容電流は230Aなので、EM-CET100sqを選定します。


よって、幹線サイズは


分岐前 EM-CET100sq

分岐後 EM-CET60sq

となります。




2.電圧降下の確認


幹線+分岐の長さが60m以下の場合、電圧降下の許容値は幹線3%以下、分岐2%以下となります。


分岐前 EM-CET100sq、分岐後 EM-CET60sqを使用した場合において、L-1系統、L-2系統それぞれ電圧降下が、3V以下になっているか確認します。

(今回はL-2の方が距離が長いので、簡略のため、L-2の電圧降下が満たしていれば良いこととします)



まずL-2系統の電圧降下の計算は以下のようになります。


(0.255Ω/km×30×10-3 km×250)+(0.406Ω/km×

10×10-3 km×150)≒1.9+0.6≒2.5


よって3V以下になったため、


分岐前 EM-CET100sq

分岐後 EM-CET60sq


とします。




三相3線式で、負荷容量が消費電力表記の場合



【諸条件】

配線方法

 ケーブルラック


こう長

 70m


動力盤の容量

 10.9kW(消費電力) 

 ※分岐回路は、4kW×2回路  2.9kW×1回路で、全て直入れ始動





1.設計負荷電流の算出


まず、設計上、どれくらいの電流が流れるのかを算出します。


三相負荷電流=負荷容量(VA)/√3×電圧(V)


負荷容量を消費電力に変換すると上記の式は以下のようになります。


三相負荷電流=消費電力(W)/√3×電圧(V)×力率



今回は、動力盤P-1の消費電力の合計値が10.9kWであるため、計算は以下のようになります。


10.9×1000/1.73×200×0.8≒39.3A


よって設計負荷電流は39.3Aとなります。



※力率は、メーカーが決まっている場合、メーカーに確認する方法もありますが、建築設備設計基準の「電路」の項を参考に0.8とする場合が多いです。




つまり、受変電設備〜動力制御盤1P-1の幹線には、設計上、39.3Aの電流が流れることになります。




2.配線選定上必要な許容電流(内線規程3705-6)



先ほど設計負荷電流を算出しましたが、電動機の場合、始動電流があるので、それも考慮したうえで、配線の太さを選定する必要があります。

ここが単相との大きな違いで、単相の場合は設計負荷電流をもとに配線の太さを選定すればよいのですが、三相の電動機回路の場合は、始動電流を考慮して、設計負荷電流を補正する必要があります。



電動機の定格電流の合計が50A以下の場合は、その定格電流の1.25倍、定格電流の合計が50Aを超える場合は、定格電流の合計の1.1倍をします。


39.3Aは50A以下なので、1.25倍します。


39.3×1.25=49.1A



よって配線選定上の設計負荷電流は49.1Aとなります。


単相では設計負荷電流をもとに配線サイズのほかブレーカーの定格電流についても選定してましたが、3相動力では、設計負荷電流は配線サイズ選定のみに使用します。設計負荷電流からブレーカーの定格電流を求めてしまうと、始動電流によりブレーカーが遮断してしまう可能性があるためです。




3.配線サイズの選定


配線選定上の設計負荷電流は49.1Aですが、今回はケーブルラック配線なので、低減率を考慮して


EM-CET14sqの場合、86A×0.7(低減率)=60.2A>49.1A



よって、EM-CET14sqを選定します。




4.電圧降下の確認


幹線+分岐の長さが60m以下の場合、電圧降下の許容値は幹線3%以下、分岐2%以下となります。


EM-CET14sqの場合、電圧降下が、6V以下になっているか確認します。

(3相の場合は200Vに対して3%となるため、許容電圧降下は6Vということになります。)


EM-CET100sqの場合の電圧降下の計算は以下のようになります。


1.430Ω/km×70×10-3 km×39.3=3.33V



1.430は力率を0.8と想定



6%以下であったため、配線太さはEM-CET14sqで問題ないということになります。



5.幹線保護用遮断器の選定


電動機負荷の遮断器の選定は、内線規程の表にて行いますが、内線規程の表は出力表記なので、消費電力しかわからない場合、内線規程の表は適用できません。

よって内線規程資料3-7-1の効率の参考にも参考にしつつ、出力は消費電力よりも低い値になると考えられるため、表の直近下位のkW数を採用します。


↑200V三相誘導電動機の幹線の太さ及び器具の容量(内線規定より抜粋)



よって消費電力が10.9kWの場合、内線規程の表の出力8.2kWの場合を参照して、幹線保護用遮断器の定格電流は60Aとします。






三相3線式で、負荷容量が出力表記の場合




配線方法:ケーブルラック

距離150m

動力盤の容量 8.8kW(出力) 

分岐回路は2.2kW×4回路






1.設計負荷電流の算出


前項では、三相負荷電流=消費電力(W)/√3×電圧(V)×力率 の式を使用して、設計負荷電流を算出しましたが、出力表記の場合、内線規程3705-1表の「200V三相誘導電動機1台の場合の分岐回路」を参照して電流値を求める方が一般的となります。


↑200V三相誘導電動機1台の場合の分岐回路(内線規定より抜粋)


出力2.2kWの電動機の全負荷電流(=定格電流)は、11.1Aなので、幹線に流れる設計負荷電流は、11.1A×4=44.4Aとなります。


※電動機は大容量のものを除き、ほとんどが汎用品のため、基本的には、該当する出力と同じものが内線規程の表にあることが多いです。




2.配線選定上必要な許容電流(内線規程3705-6)


電動機の定格電流の合計が50A以下の場合は、その定格電流の1.25倍、定格電流の合計が50Aを超える場合は、定格電流の合計の1.1倍をします。


よって、44.4Aは50A以下なので、1.25倍をします。


44.4×1.25≒55.5A



よって配線選定上の設計負荷電流は55.5Aとなります。




3.配線サイズの選定


配線選定上の設計負荷電流は55.5Aであるが、今回はケーブルラックなので、低減率を考慮して



EM-CET14sqの場合、86A×0.7=60.2A>55.5A


よって、EM-CET14sqを選定します。




4.電圧降下の確認


幹線+分岐の長さが120m以上200m以下の場合、電圧降下の許容値は幹線3%以下、分岐2%以下となります。


EM-CET14sqの場合、電圧降下が、6V以下になっているか確認します。


EM-CET14sqの場合の電圧降下の計算は以下のようになります。


1.430Ω/km×150×10-3 km×44.4≒9.5V


※電圧降下の計算に使用する設計負荷電流は、1.25倍したケーブル選定上必要な設計負荷電流ではなく、通常時に流れる補正前の設計負荷電流であることに注意


※1.430は力率を0.8と想定



6V以上であったため、配線太さはEM-CET22にして再計算します。


0.926Ω/km×150×10-3 km×44.4≒6.167


これでも少し超えてしまったため、配線サイズはさらにワンランク上のEM-CET38sqとします。



5.幹線保護用遮断器の選定


内線規程3705-3表「200V三相誘導電動機の幹線の太さ及び器具の容量」を参照します。


この表に従い、幹線保護用遮断器の定格電流は200Aとします。



単相3線式で構内配電線路(地中埋設)の場合


地中埋設の場合、周囲温度など気中の場合とは条件が色々と異なるため、ケーブルの許容電流については建築設備設計基準の「EM-CETケーブルを管路敷設した場合の許容電流」の表かケーブルメーカーの技術資料に記載の管路敷設の許容電流値を参照します。

一般的には基底温度も25℃と低いこともあり、気中と比べ許容電流は大きくなる傾向にあります。そのため、地中埋設から、建物内に入りケーブルラック配線になるような複数の敷設方法が混合している経路では、安全を見てケーブルラック配線として許容電流の計算を行うことが多いです。


【諸条件】


・埋設配管 

 FEP


管路数

 2管


・こう長

 30m


埋設深さ

 600mm


※建築設備設計基準では地中管路で、引込み管路、幹線ケーブル等で重要な配線については、地表面から600(舗装がある場合は舗装面から300)となってますが、内線規程では300となっています。なお、余談ですがJISでは埋設深さを300以上とすれば20tトラックによる土圧に十分耐えられうるものであることを確認しています。


基底温度 

    25℃






1.設計負荷電流の算出



単相負荷電流=負荷容量(VA)/電圧(V)


10000/200=50A


よって設計負荷電流は50Aとなります。



2.幹線保護用遮断器の選定


幹線保護用遮断器の定格電流は50A以上のものにすればよいので50Aとします。



3.配線サイズの選定


設計負荷電流は50Aですが、今回は地中管路なので、建築設備設計基準の「EM-CETケーブルを管路敷設した場合の許容電流」の表を参照します。



2管敷設でEM-CET14sqの場合、許容電流は82Aであり、設計負荷電流の50A以上となったため、

EM-CET14sqを選定します。



4.電圧降下の確認


幹線+分岐の長さが60m以下の場合、電圧降下の許容値は幹線3%以下、分岐2%以下となります。


EM-CET14sqの場合、電圧降下が、6V以下になっているか確認します。


1.430Ω/km×30×10-3 km×50≒2.14V



6%以下であったため、配線太さはEM-CET14sqで問題ないということになります。



以上です。




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