
桐箱や 値札やしつけ 個包装 余分を除き 風呂敷づつみ (着付師心得の短歌)
振袖一式というと、たくさんの荷物になりますよね。
同じ着物一式でも、普段着物と比べると嵩が増すのは確かです。
しかし、振袖といえども、所詮はたったひとりの人間が身につける衣服なのです。
それを親子二人がかりで、しかも車に載せないと運べない、なんていうのは、明らかに必要ないものが入っているのです。
その代表格は、箱。
そういう人の荷物からは、箱、箱、箱、箱、箱……、呆れるくらいの箱が出てきます。
小物のいちいちが、箱に入っているのです。
下手をすると、着物と帯を桐箱に入れてきます。
ここではっきり申し上げます。
着付に箱は要りません。
ついでに申し上げると、値札も、個包装のビニール袋も要りません。
着物用バッグの中の、型崩れ防止の新聞紙など、論外です。
そこまでバッグとして機能させる気がないならば、バッグは無理に持たなくていいと思います。
そうして余分を取り除いていくと、振袖一式は冒頭の写真のように、大きめの風呂敷に十分収まります。
着物一式をまとめる時は、本当に不思議なのですが、風呂敷に勝るものはありません。
それは、今までにたくさんの荷物をお預かりしてきた中で実感したことです。
着物にはやっぱり風呂敷なのです。
さて、写真には草履がない、と言われる方もいるでしょう。
草履は、着付する所が近所であれば、当日履いていけば事足ります。
新品の草履なら尚のこと、当日に歩きづらいだの、足が痛いだの、騒ぎ立てずにすむように、何度かご自分の足を入れて、鼻緒を伸ばしておかれたらよろしいかと思います。
もし草履を荷物に加えたとしても、箱から出せば、大して変わりありません。
それから、しつけ糸。
しつけ糸が着物についたままになっているのを見ると、これからご自分が着られる着物に何の興味もお持ちでないのかなと、がっかりします。
着物のことなんて分からない、ではなくて。
何でもかんでも母・祖母任せ、ではなくて。
ご自分で広げてみましょうよ。
二十歳なんだから。
大人なんだから。
厳密には、今は十八歳で成人ですよ。
成人式の支度にどう向き合っているかで、その子の自立度が美容師には見えています。
話が逸れました。
コンパクトな荷物は、着物を着たあとの荷物もコンパクトになり、身軽にお帰り頂けます。
また、着物に積極的に触れることで、着物に対する知識と愛着が育ちます。
結果的に、荷物の余分を取り除くことは、お客様にとっても美容室にとっても、メリットしかないのです。
ごくたまに、過不足のない完璧な荷物を持ち込まれる方がいます。
そんな時は、感謝と安堵で鳥肌が立ちます。