日韓 こわーい噺対決(1) 東海道四谷怪談 | あなたの知らない韓国 ー歴史、文化、旅ー

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 皆さんこんにちは。
 
 いかがお過ごしでしょうか。
 
 さてもう9月の話になりますが、新装開場となった京都南座で歌舞伎を見ました。
 
 演目は関西では20数年ぶりの公演となる「東海道四谷怪談」。伊右衛門が愛之助、お岩が七之助と豪華な出演陣、11時に始まり3時に終わる長丁場でしたが、迫力たっぷりで堪能できました。
 
 
 
 
 四谷というのは実際には東海道ではなく、本当は甲州街道になるのですが、どういうわけでしょうか。それはともかく、本作は四代目鶴屋南北の代表作となります。田宮伊右衛門にひどい目に遭わされたお岩さんが、亡霊になって復讐する話ですが、実際にはもっと幅広い内容を含んでいます。
 
 怪談的要素のみならず、当時の庶民生活の実態も綿密に描いており、下層民衆がたくましく生きていく姿を描いているのも興味深い点です。
 
 

 
 またこの東海道四谷怪談は仮名手本忠臣蔵の外伝とも言うべき内容になっています。登場人物には塩谷判官の関係者と高師直の関係者が複雑に絡み合い、因果応報の勧善懲悪ものになっています。歌舞伎の世界では赤穂浪士を裁いた江戸幕府にはばかり、浅野内匠頭は塩冶判官、吉良は高師直と室町時代の話に置き換えています。
 
 

 
    田宮伊右衛門は塩冶家臣、伊右衛門がお岩を捨てて一緒になろうとする女は高師直の家臣伊藤喜兵衛の娘です。両者が入り乱れ、裏切りが交差し、やがて仇討ちへと向かう愛憎に満ちた内容になっています。
 
 最大の見せ物は大仕掛のトリックです。伊右衛門が釣りをしているところに流れてきた戸板。そのむしろをめくると、戸板の両側にお岩と小仏子平の死体がくくりつけられているという仕掛けの隠亡堀「戸板返し」、蛇山庵室でのお岩がちょうちんから飛び出す「提灯抜け」、仏壇が回転し悪人を奈落の底に引きずり込み「仏壇返し」など遊びゴコロたっぷりの見所がいっぱいです。エンターテイメントの要素がたっぷり。
 
    特に提灯抜けの時は提灯から抜け出たお岩役の役者が宙乗りになり、客席の上を飛び回ります。その時、場内では幽霊役の大部屋の役者が徘徊し、あちこちで驚きとも嬌声とも分からないの声が響きます。

 

 

 

 

    四谷怪談はおそらく日本の怪談ものの中で最もポピュラーな存在で、数多くの文芸や演芸に取り込まれてきました。日本にはこれ以外にも古典的な怪談ものが数多くあります。三遊亭圓朝作『牡丹灯籠』『真景累ヶ淵』をはじめ、皿屋敷有馬の化け猫騒動など多様です。それ以外にも歌舞伎や文楽、能、講談に至るまで怪談話のない文芸はありません。これら怪異な話が日本の文芸振興の一役を担っていたことは間違いありません。

 

    人間の明るい部分だけでなく、心の襞からうかがえる精神の深淵部分を垣間見せたのが、まさに日本の古典の怪談噺だったように思います。

 

 では朝鮮の怪談噺はどうだったのでしょうか。それは次回にお送りしたいと思います。

 

 

(次回に続く)