世界記録遺産 5.18民主化運動記録館を訪ねて | あなたの知らない韓国 ー歴史、文化、旅ー

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   光州訪問の初日に5.18民主墓地で感じた衝撃も冷めやらぬ2日目の朝、光州市内中心部にある5.18民主化運動記録館を訪問しました。場所は全南旧道庁のある芸術の殿堂駅から錦南路4街駅に向かう途中にあります。当時、市民の抵抗が繰り広げられた大通り 錦南路に面したところにありました。

 

    記録館は地下1階、地上7階建の建物で、旧カトリック会館を改築し、光州事件に関する資料8万点以上を保管、一般公開しています。5.18 民主化運動の記録類が2011年にユネスコ世界記録遺産に登載されたことを受けて、その4年後の2015年、関連資料を一堂に集めてこの施設が開館されたのです。事件の真相がさらに明らかになり、民主化運動の原点である光州事件の実態が広く世界に知られることは実にいいことだと思います。

 

 

 記録館正面

 

 

   正面玄関を入ると、展示室入り口前のガラスケースに、銃弾が貫通した痕跡のある窓ガラスが展示されています。これは光州銀行 旧本店の窓ガラスで、戒厳軍により被弾したガラスを事件後もそのまま使用し、1997年に光州市に寄贈したものです。事件の生き証人とも言える窓ガラス。事件の様相を知らせるためにそのまま使用していたのはすごいことであり、それが光州市に寄贈され、永遠に保存されるのは実に喜ばしいことです。

 

 

 記録館入口

  左・光州銀行の被弾ガラス

 

    観覧客の便宜を図るため、一日に6回、解説員による解説があります。解説は韓国語のみですが、案内を聞きながら展示を見ると、理解が深まること確実です。簡潔ながら丁寧な解説で、事件に関する関心が一層深まりました。

 

 

  記録館展示室入口 
  事件の現場へ
 
 

解説員による展示解説

  理解が深まります

 

 

    館内は1~3階が展示室になっています。1階の展示室に入ると、 市民たちの決死の抵抗の様子とともに、暴虐な戒厳軍の状況を記録した動画や写真、実物資料が展示されています。入口近くにある強化ガラスが貼られた床の下には、当時の惨状を再現するかのようにゴム製の履物や血染めの靴などが散乱した状況で展示されており、阿鼻叫喚の状況を想像させるに十分です。

 

   また映画「タクシー運転手」の中に、市民が行動の参加者に握り飯を配る光景がありますが、実際に握り飯の調達に使われたアルミのボールがひしゃげた状態で展示されていました。それを見ると映画の場面を思い出し、市民の連帯と志を同じくする仲間に対する思いやりで感無量になりました。

 

  5月16日 はじまりの日

 

このボールを使っておにぎりが

 

 当時の新聞    民主化指導者の連行

 

 バス、タクシーによるデモ

 

 

    記録館の展示の優れた点はいろいろあります。生々しい実物資料がふんだんに展示されているのはもちろん、一番興味をひいたのは当時の新聞の展示です。記者たちが光州の真実を伝えようと必死で書いた記事に検閲が入れられ、毒にも薬にもならない記事に変えられた様子が、朝刊と朱入りのゲラが並べて展示されることでリアルに伝わってきます。まるで日本の戦前を思い起こさせるものがあり、事件の実態を伝えようと記者が必死で守り伝えたことを考えると、胸があつくなります。

 

 

 新聞朝刊

 

検閲された紙面

 

 

    4階は資料閲覧室、5階は世界記録遺産登録記念物や5.18関連記録物を保存するための収蔵庫で、行政文書や裁判記録、市民の証言や音声資料など多数を収蔵している。そして6階は事件の実態を知らせようと努力されたユン・ゴンヒ カトリック光州大教区長の執務室が復元されています。ここには錦南路が見渡せる窓もあり、大司教や神父たちは、街の様子を見ながら、連帯のため断食闘争を行なったそうです。いわば事件に生き証人とも言える施設です。このような施設が丁寧に保存されていることは、非常に素晴らしく、光州が誇りだと思いました。

 

 

 大司教執務室

 

 6階風景

 

  5.18追慕ミサ

 

  

   記録館も光州で忘れられない場所の一つとなりました。韓国の民主化運動を考えるうえで欠かせない5.18民主化運動の資料を保存するとともに、語り伝えることでこれからの民主的社会の形成に寄与しようとする姿勢が明確だからです。もちろん展示内容も優れており、写真や実物、動画などを交えて臨場感たっぷりに展示しているのはもちろん、運動の中で学生や女性など、多様な方面からの運動への貢献を明らかにしてことは注目すべきですね。また機会をつくってゆっくり観覧したいところのひとつです。

 

 

    民主墓地と記録館以外にも民主化運動に関する施設は数多くあります。今回はまわりきれませんでしたが、それは次の機会に譲り、またゆっくり光州を訪れたいと思います。

 

 

 

追記;光州関係の記事には以下のものもあります。ご覧いただければ幸いです。

 

おしゃれな古書店 アラジン光州忠壮路店 ー光州探訪記(その9)

https://ameblo.jp/yoa1003/entry-12464492237.html

 

 

光州散策の心強い案内書 ー光州探訪記(その8)

https://ameblo.jp/yoa1003/entry-12464322593.html

 

 

よみがえる 歴史の生き証人 518最後の拠点 旧全南道庁 ー光州探訪記(その7)ー

https://ameblo.jp/yoa1003/entry-12463791689.html

 

 

読もう、考えよう 書籍紹介『5.18民主化運動』 ー光州探訪記(その6)

https://ameblo.jp/yoa1003/entry-12455094020.html

 

 

光州の名刹 無等山證心寺を訪ねて ー光州探訪記(その5)

https://ameblo.jp/yoa1003/entry-12454865448.html

 

 

光州で出会った可愛いニャン子たち ー光州探訪記(その4)

https://ameblo.jp/yoa1003/entry-12453091247.html

 

 

 

安らかに 5.18民主墓地を訪ねて ー光州探訪記(その2)ー

https://ameblo.jp/yoa1003/entry-12450399875.html

 

 

映画「タクシー運転手」と5.18民主化運動に思いを寄せて ー光州探訪記(その1)ー

https://ameblo.jp/yoa1003/entry-12449472072.html