119にて救急要請した私は殿方の荷物チェックをし、あとは救急隊員が来てくれるのを待った。
時間にしてものの15分程しか待っていないのだけど、その15分がとてつもなく長く感じた。
そして救急隊員到着、3人の屈強な男たちが我が家へなだれ込んだ。
救『患者のお名前は〇〇さんですね?何か身分証をお持ちでしたら(見せてください)』
私『はいはい、えーと…ゴソゴソ』
救『いつからこのような感じに?』
私『夜中の3時に彼の絶叫で目が覚め…』
救『失礼ですが貴方は?』
私『えっ?えーと、友人のような知人のような…シドロモドロ』
救『こうなる前に何かありましたか?』
私『えーと、彼は昨日午後にウチに来たのですが、カクカクシカジカ』
救『(別の救急隊員へ)彼女さん…ボソッ、昨日の午後…ボソッ』
別の救急隊員は殿方にも問いかけをしていて、どこが痛むのかとか身体は動かせるか等聞いていた。
果たして私は彼女という立ち位置なのか?そんなことを思っていたよね。
確かに、傍から見たら男女が同じ屋根の下で寝起きするならそういうことだと解釈するんだろうが、特にそういうことがある訳でもない。
まるで茶飲み友達のような老夫婦のような感じだ。
私と救急隊員とのやり取りを殿方は聞いていただろうか?
聞いていたとしたらなんて思ったかな…。
救『今、搬送先を探していて、〇〇(殿方)さんが通ってる××病院がいいかと思って打診してますので、もう少しお待ちください』
私『彼には息子さんがいるので、今、その方にも連絡してます。前もって状況は話してあります』
救『息子さんがいらっしゃるのですね。ええと、病院へはどなたか付き添いに?』
私『私は病気療養中ゆえ無理です…』
救『あ、そうなんですね。そしたら息子さんの連絡先も教えてください』
私『はいはい、ちょっと待って』
別の救『××病院は現在満床、とりあえず診ることは出来るが入院不可、その時は別の病院へ搬送』
救『××病院は…という訳でして、そういうふうになりますが宜しいですか?』
私『はい。それでお願いします(というか、私が決めていいのか?)』
別の救『今、椅子タイプのストレッチャーを持ってきますので、〇〇さん自力で起き上がれますか?麻痺などないですよね?』
そこで私ははたと気付いた。
殿方の既往症を聞かれた時に高血圧しか伝えてなくて、よくよく考えたら脳梗塞を2回やらかしてたんだと。
私『彼、過去に2回脳梗塞やらかしてます』
別の救『あ、そうなんですね!麻痺が残ってるとか動かせないとかあったんでしょうか?』
私『いえ、それは無いですが、少し不自由してます。普段は杖をついてますので』
別の救『分かりました。そしたら〇〇さん、頑張って、どうにかここまで動きましょう。私が手助けしますので』
殿方、なんとか懸命に身体を動かしやっとこさストレッチャーに乗った。
殿方『じゃ、行ってくる』
殿方はこんなことを言って私に向かってピースサインしてきた。
本人の性格的に、なるべくシリアスにならないようにしたんだろう。
こっちはそれどころじゃなかったのに。
親の心子知らずならぬ、私の心殿方知らずだわよまったく。
殿方が運ばれてから直ぐに私は息子さんにも連絡した。
そして、この状況を誰かと共有したいと、いつもお世話になっている訪看さんにも連絡した。
土曜日で休みだろうとは思ったが、その時はそこまで相手を慮る余裕などなかった。
長くなったので次回。