
Jousseaume, Galerie Vivienne
去年のパリで、いちばん心に残っているできごと。
大切すぎてなかなか書けなかったことです。
閉店まぎわに入った、すてきな古書店。

気のいいおじさんとしゃべって、写真を撮らせてもらって、古書を一冊買いました。

この中から、一冊。
雰囲気と、文字と、余白のバランスが気に入ったのと、
タイトルのある扉ページに手書きでメモが残されていたことと。
誰かがこの本を読んでいた、と感じれるのがよかった。
支払いのときに、ふと思いついて「ここに書いてるの、なんていう意味ですか?」とおじさんに聞くと、
「何か書いているとは気付かなかったなあ。どれどれ」と目を通し、
驚いた様子で、まずこんなことを教えてくれました。
本の元の持ち主は、先々代(お爺さん)の時代のお客さん。ルーブルの近くに住んでいた女性で、しょっちゅうお店に来ていた常連さんだったとか。

彼女の死後、所有していた多くの本がこのお店にやってきたのだそうです。
そして、そのページに記されていたのはこんな言葉でした。
「この本は、ある日、ルーブルで母から譲りうけたものです。
私が死んだら、本を手にした人は我々のために祈ってください」
・・ 私へのメッセージ、だったのです。
おどろきで、息がとまりそうでした。
おじさんも、びっくりして目を丸くしていた。
その本は、1922年に出版された 女流作家 DELLYの著書 “ MITSI ”
まだ女性が自由に生きることができなかった時代に、女性が己のえらんだ道を歩む姿を描いた小説だったはず、とのこと。
きっと特別な想いとともに、母から娘へこの本が手渡されたのだろうと思います。持ち主の女性も、その日のことをずっと大切にしていたのでしょう。
母と娘、女同士のちいさな儀式だったのかな。私がこの世に産まれるずっとずっと前、はるか遠いパリの空の下、ルーブル美術館でのできごと。
そんな本を、はじめてのパリ、はじめて訪れた本屋さんで、数ある中から選んでいたこと。最後にふとメモの意味が気になって尋ねてみたこと。。不思議な巡り合わせ。
おじさんも、こんなことってあるんだね。とびっくりしていました。
このあと、パリでいちばん美しい橋 に行って、本を手に、セーヌ越しにルーブルを眺めながらお祈りしました。
パリのおばさん、私のところに来てくれてありがとう、一緒に日本に行きましょうね~! なんてつぶやきながら。
いま私が何よりも大切にしている本です。3年学んだフランス語はすっかり忘れて読めないけど、その存在が大切です。

本を包んでくれるおじさん
じつは、母から聞いて週末に録画した NHK「世界ふれあい街歩き」の再放送「パリ・オペラ座かいわい」を昨日見たのですが、
まさにこの本屋さんとおじさんがたっぷりと登場(!) 1826年、曾おじいさんの時代から続く古書店で、おじさんが4代目なんだそうです。ギャラリー・ヴィヴィエンヌのJousseaume。
子どものころ、学校が終わるとお店に遊びにきてたから、(覚えてはないけど)持ち主の女性には会っているはずだ、別の本にはさんであった写真で姿を見たことがあるよとおっしゃってました。

おじさん、あの日は素敵な時間をありがとう。また会いにゆきます♡
本は、一度だけ写真に撮っています(→cliquez ici!)