スーラ―ジュと森田子龍 | 散策日記Ⅰ

散策日記Ⅰ

美術館&博物館で開催された展覧会の記録、それにまつわる散策記です。

5月10日(金)兵庫県立美術館。

 

 

スーラ―ジュと森田子龍を見に行きました。

 

 

ここで中学生の団体とすれ違い。この展覧会、中学生が見ても面白くないのではと思いますが、どうなのでしょう。

 

 

それはさておき、まず始めに人物紹介。以下の文章は兵庫県立美術館のHPから引用しました。

 

ピエール・スーラージュ(Pierre Soulages)1919-2022
1919年、フランス南西部アヴェロン県ロデーズに生まれる。画業の最初期から晩年に至るまで、一貫して抽象を追究した。2014年、故郷ロデーズに、その名を冠した美術館が開館。生誕100年を記念し、2019年12月から2020年3月にかけて、パリのルーヴル美術館で個展が開催された。

 

 

森田子龍(もりた・しりゅう)1912-1998
1912年、兵庫県豊岡市に生まれる。世界的に知られる前衛書家として活躍。雑誌編集者としての側面もあり、師の上田桑鳩のもとで1939年頃から『書道芸術』の、戦後1948年からは『書の美』の編集に携わる。1951年『墨美』を創刊、1981年に301号で終刊するまで、「書芸術雑誌」として幅広い内容を取り上げた。

 

 

  概要

 

戦後まもない時期、海外の抽象画と日本の前衛書は、国境やジャンルをこえて、同時代性を示していました。森田子龍が編集を行っていた『墨美』(1951年6月創刊)では、1950年代、欧米の抽象絵画を次々と紹介しています。



単色の力強い作品で知られるピエール・スーラージュとの関係も、『墨美』をきっかけに始まりました。『墨美』26号(1953年8月)には、本人から提供された作品写真10枚が掲載されています。

 

 

「スーラージュは『墨美』が非常に好きでよく見てくれているそうですが、そんなことから今度アルコプレー(ドイツ系アメリカ人の画家)を通じて送ってくれたのです」(「書と抽象絵画・座談会」『墨美』26号より)

 

 

モノクロームの作品を描く画家たちを、森田は「白黒の仲間」と呼び、そのような仲間ができることは喜びであり、励みになったと述べています。

 

 

1958年、初めて来日したスーラージュは、森田らと直接、意見を交わしました。1963年には、ヨーロッパを歴訪した森田が、パリでスーラージュ夫妻と再会しています。



戦後の抽象絵画を代表する画家のひとりである、「黒の画家」ピエール・スーラージュと、1952年に4名の同志とともに「墨人会」を結成し、新しい書のあり方を追い求めた森田子龍。二人は交流を通じ、互いの表現の共通点と相違点について考えを深めました。

 

 

  スーラ―ジュの作品

 

前半はスーラ―ジュの作品を画材別に並べました。クルミ染料は柔らかい感じ、墨ははっきりした感じ、グワッシュは力強い感じがします。後半は絵画作品。筆の刷け目の技術に興味をもったらしく、素材の良さを生かした作品が並びます。

 

 

クルミ染料

 

『クルミ染料は暗く暖かみのある色調を持っている。原初の力とでもいうべきもので、私は気に入っている。この染料を使えばおのずから透明、不透明が得られ、美しい響きが鳴りわたる。ありふれた安価な画材だが、そこがまた好みだった。(スーラ―ジュ2021年)』

 

《紙にクルミ染料 48.2×63.4cm》1946年

スーラ―ジュ美術館

 

《紙にクルミ染料 63×50cm》1949年

スーラ―ジュ美術館

 

《紙にクルミ染料 65.1×55cm》1950~51年

スーラ―ジュ美術館

 

《紙にクルミ染料と鉛筆 65.1×50.1cm》1950年

スーラ―ジュ美術館

 

《紙にクルミ染料と木炭 63.7×50.2cm》1951年

 

 

 

《紙に墨 66×49.7cm》1949年頃

スーラ―ジュ美術館

 

《紙に墨 65.2×50cm》1950年

スーラ―ジュ美術館

 

《紙に墨 65.9×50.3cm》1961年

スーラ―ジュ美術館

 

《紙に墨 66.1×50.3cm》1961年

スーラ―ジュ美術館

 

《紙に墨 66.1×50.9cm》1961年

スーラ―ジュ美術館

 

《紙にクルミ染料と墨 65.6×50.3cm》1951年

スーラ―ジュ美術館

 

 

グワッシュ

 

《紙にグワッシュ 99.9×72.7cm》1951年

スーラ―ジュ美術館

 

《紙に墨とグワッシュ 50.9×65.6cm》1951年

スーラ―ジュ美術館

 

 

絵画

 

1951年、前年のサロン・ド・メ出品作から選ばれた若手作家の作品30点が、日本で展示されました。日本各地を巡回する「日仏美術交換 現代フランス美術展 サロン・ド・メェ日本展」という展覧会です。そのとき、初めて日本で展示されたスーラ―ジュの作品が《絵画200×150cm、1950年4月14日》です。

 

《絵画200×150cm、1950年4月14日》

スーラ―ジュ美術館

 

《絵画 100×72.7cm、1953年7月19日》

富山県美術館

 

《絵画 162×130cm、1959年5月4日》

大原美術館

 

《絵画 143×202cm、1964年11月19日》

スーラ―ジュ美術館

 

《絵画 202×159cm、1966年7月5日》

スーラ―ジュ美術館

 

 

刷け目

 

『日本の西武美術館で個展を開いた時、ある大学の教授が私の絵に東洋の塊があると言いました。その当否は私にもよく分かりませんが、そのとき刷け目という言葉を知り、興味を持ちました。筆の刷け目の技術は実に面白い。私の次の個展の題名は「刷け目」にしようと思っているのです。(スーラ―ジュ1985年)』

 

《絵画 130×162cm、1966年7月22日》

富山県美術館

 

《絵画 92×73cm、1976年3月4日》

東京国立近代美術館

 

 

形・色・絵肌・透明・不透明

 

『私にとっては色も形も存在しません。あるのは「形・色・絵肌・透明・不透明」だけなのです。色とか形とかいうのは、抽象の言葉でしょう。しかし、私自身にとっては、それらは抽象的ではなく、具体的なものです。たとえば、青とはなんだろう。キャンバスに塗った青と絹に塗った青はぜんぜん違う。透明、不透明によっても、青は異なる。色とは常に絵肌なのです。(スーラ―ジュ1985年)』

 

《絵画 202×143cm、1967年10月4日》

スーラ―ジュ美術館

 

 

  感想

 

私はモノトーンが好きなので、スーラ―ジュ作品はツボにハマりました。彼の抽象画は湧き上がる感情の表現というより「素材と技法の研究」だと思います。

 

 

森田子龍の作品は撮影禁止でした。昨年夏のコレクション展で撮った画像が残っているので、次回はそれを記事にしようと思います。