バンクシー展 天才か反逆者か⑥ | 散策日記Ⅰ

散策日記Ⅰ

美術館&博物館で開催された展覧会の記録、それにまつわる散策記です。

先日の続き。バンクシー作品の生と死から。

 

パルプ・フィクション

2002年、バンクシーは、クエンティン・タランティーノ監督のカルト映画「パルプ・フィクション」の一場面を、ロンドン市内の地下鉄の駅近くの壁に描いた。しかし、銃をバナナに置き換えたシニカルな作品は、暴力を助長する恐れがあると市当局にみなされ、2007年に塗りつぶされる。

 

 

その後バンクシーは新たな場面を描いたが、今度は主人公たちに黒いジャケットではなく、バナナのコスチュームを着せ、バナナの代わりに本物の銃を返した。

 

 

しかし、この作品が壁にあったのはわずか数日だった。オゾンという若いアーティストが上書きし、バンクシー宛に「次のがもっと良ければ、そのままにするよ」とメッセージを残したのである。

 

 

数日後、オゾンは地下鉄の車両に落書きしているところを列車にはねられ、友人と一緒に亡くなった。そこでバンクシーは彼らを偲んで、同じ壁に防弾チョッキを着て頭蓋骨を持った天使を描いた。

 

 

2009年、壁は再度上塗りされたが、イギリス人アーティストのマンティスが、バンクシーの「パルプ・フィクション」をもじって、バナナの皮を持っている痩せ細ったアフリカの子供たちを描き、アフリカの問題を喚起したのである。

 

 

カイト・ストーリー

もとになったのは、メキシコ国境近くに設置されたロサンゼルスの道路標識。移民が高速道路の横断を試みて死亡する事件に端を発している。バンクシーはその道路標識に凧を描き加えたが、黒く塗りつぶされた。

 

 

モバイル・ラバーズ

2014年、ブリストルの若者支援センターのドアに描かれた。テーマは人々が毎日なりふり構わず没入しているSNSの世界だ。支援センターのディレクターは作品の盗難を恐れ、廊下に移して一般公開。破産寸前だったセンターは入館料を取って利益を得た。すると市議会は作品が市の財産であると主張。作品を差し押さえてブリストル・ミュージアムに展示してしまった。

 

 

その時初めてバンクシーは、この絵が自身の作品であると証明する内容の手紙をディレクターに送り、「あなたがこの作品について正しいと思うことをして下さい」と書いた。

 

 

その結果、作品はオークションにかけられ、収益金はセンターに送られることになったが、その日からディレクターは殺人予告を受けるようになる。再びオークションにかけられ、403,000ポンドで個人コレクターに売却された。

 

 

やはりバンクシーの絵は、好き嫌いがはっきり分かれるようですね。次はいよいよ、バンクシー展最後の作品です。

 

 

「ガールズ・ウィズ・バルーン(風船と少女)」は、2002年からバンクシーがはじめたステンシル・グラフィティ作品シリーズ。風で飛んでいく赤いハート型の風船に向かって手を伸ばしている少女を描いたものである。

 

 

初期の作品はロンドンのウォータールー橋やロンドン周辺のさまざまな壁に描かれたが、現在はどれも残っていない。

 

 

バンクシーは社会支援の手助けをするため、このデザインを何度か変えて様々な場所で描いている。2005年にはイスラエル西岸地区の分離壁に制作。2014年のシリア難民危機3周年時や、2017年のイギリス一般選挙時にも別バージョンが制作されている。

 

 

2017年のサムスンの調査で「風船と少女」シリーズは、イギリスで最も人気のあるバンクシー作品の一つであることが判明。

 

 

2018年には、ロンドン・サザビーズのオークションに出品された額縁におさめられた風船少女の作品が、オークション中にバンクシーによって額縁にしかけられた機械によってズタズタに切り裂かれたのは記憶に新しい。

 

 

バンクシーは自身がシュレッダーにかけた責任を負うことに認め、切り裂かれた作品に対して「ラブ・イズ・イン・ザ・ビン(愛はごみ箱の中に)」と名付けた。サザビーズは「美術史においてライブ・オークション中に作られた初の作品だ」と話した。

 

 

落札価格は104万2000ポンド。落札者はドイツ人女性で、作品はドイツ南部のバーデン=バーデンにあるフリーダー・ブルダ美術館に期間限定で展示された。また、ドイツのシュトゥットガルト州立美術館は、今後最も重要な貸出作品になるだろうと話している。

 

 

バンクシー展の話はこれでおしまい。バンクシーは天才か反逆者か?出口に投票所があり、天才に一票入れました。

 

 

おわり