バンクシー展 天才か反逆者か⑤ | 散策日記Ⅰ

散策日記Ⅰ

美術館&博物館で開催された展覧会の記録、それにまつわる散策記です。

先日の続き。「バンクシーのねずみたち」から。

 

ネズミはバンクシーが多用するアイテムのひとつ。バンクシーに言わせると、どんな環境にも適合する姿が、システムが作り出す環境なかで生き抜こうともがく人間の姿に重なるとか。

 

 

バンクシーは、ネズミの中でも生活に密着したドブネズミを好んで描きました。

 

 

バンクシーズ・ラット

2004年に制作された看板を持つネズミシリーズ。「ウェルカム・トゥ・ヘル(地獄へようこそ)」の他、「ビコーズ・アイム・ワースレス(どうせ俺は役立たずだ)」「ゲット・アウト・ホワイル・ユー・キャン(逃げ出すなら今のうち)」がある。

 

 

ファリントン・ラット・フォトグラフ

ロンドン・ファリントン・ロード沿いの柵に掲げられたネズミ。中に郵便仕分けセンターがあり、そこの従業員はロイヤルメールの事を「オールウェイズ・フェイル(何をやってもうまくいかない)」と呼んでいた。このメッセージは消えてしまい、今ではネズミの絵だけが残っている。

 

 

ベルサイズ・パーク・ラット・フォトグラフ

レストランの壁に描かれたネズミはいずれ消える運命にある。永久に残すには写真しかない。撮影していると、レストランのオーナーが現れ、カメラマンにクレームを言ってきた。自分の建物に描かれたネズミは自分のものというわけだ。

 

 

ラブ・ラット

ストリートアートに対する愛を表現した絵。ストリートアートは空間を変え、社会に影響を与え、異なる角度から人生を見せてくれる。人々は愛を表わす町のネズミを見て、そこに自分自身の姿を重ねるだろう。

 

 

アイ・ラブ・ロンドン・ラット・フォトグラフ

2004年、バービカンエリアに現れたネズミ。そのネズミは前足に「ロンドンは働かない」と書かれた看板を持っていた。しばらくして、バンクシーと有名なグラフィティライターのキング・ロボとの対決が激化していた頃に、キング・ロボのチームが絵を描き替えた。今、ネズミの看板には「ロンドンが大好きだ。ロボ」とある。

 

 

ギャングスタ・ラット

ラジカセの横に座ったギャングスタ・ラットは、労働者階級の服装をし、太い鎖のネックレスをつけ、ニューヨークメッツの野球帽を横向きにかぶっている。ネズミの上には、スプレーを使って、昔ながらのグラフィティ文字で「POW」と書かれている。これは、バンクシーのプリント作品の発行を手掛けるピクチャーズ・オン・ウォールズの頭文字だ。

 

 

次は、バンクシーアートの生と死。

 

バンクシーのアート作品は、他のストリート・アーティストのものと同様に短命である。作品は市政当局や競合するグラフィティ・グループ、ただ嫉妬心をもつ人たちによって塗りつぶされてしまう。ある作品は壁から切り取られて金儲けのために売られ、その一方で自然に崩れていくものもある。
 
 
それでは、作品の行方を見ていきましょう。
 
グラフィティ・エリア

ロンドンのショーディッチ地区に10年以上前に出現した作品。違う時期で、キャラクター絵なしの同じようなメッセージがブリストルやサンフランシスコでも見つかっているが、既に上塗りされてしまっている。しかし、ロンドンでは作品が保存されることになった。

 

 

チューズ・ユア・ウェポン・ライト

武器を選択せよ。ストリートアートは民衆の正義のための手段であるということを意味している。描かれているのは、バンダナを巻いた正体不明の男。男が連れているのはキース・ヘリングの犬で、漫画チックなのが面白い。最初、建物の所有者は有機ガラスを使ってこれを保護したが、その後誰かが壁にネコの絵を描いた。作品は壁から取り去られ、最終的にオークションで売却された。

 

 

ブルドッグ

ブルドッグの頭を持つプードルの絵が、マンチェスターで初めて見つかったのは2001年。その後約10年間、この絵は蔦が絡む垣根に隠されてきた。しかし2010年5月、市職員が建物の修復作業中に、バンクシーの署名が入ったグラフィティを発見。この壁はそれから24時間も経たないうちに話題となり、バンクシーのファンが押し寄せる名所となった。

 

 

ファイア・スターター

2011年2月、ロサンゼルスの街に出現。バンクシーは、つい最近火事が起きたビルの壁にその放火犯を描いた。チャーリー・ブラウンは、1969年に米国で製作されたアニメ映画「スヌーピーとチャーリー」の主人公である。しばらくして、この作品は壁から切り出され、売り出された。こうして空いた穴をふさぐために、ビルにはベニヤ板がもう1枚張り付けられることとなった。

 

 

ノー・ボール・ゲームス

2009年にロンドンで描いた作品。2人の子供が「ノー・ボール・ゲームス(球技禁止)」と書かれた標識で遊んでいる。政府は保存の為、作品を保護ガラスで覆った。

 

 

しかし、2013年に「ザ・シンクラ・グループ」という会社が、作品を剥ぎ取って3部作にした。しばらくして、彼らは「盗まれたバンクシー展」を開き、バンクシーのコレクションを展示。この会社ともこの展覧会とも、バンクシーは何の関わりもなかった。

 

 

イフ・グラフィティ・チェンジド・エニシング

アナーキストであり女性の権利のための活動家であるエマ・ゴールドマンへ賞賛の意を込めた作品。ロンドンのオックスフォード・ストリートのガレージの近くにある。作品は保護ガラスで覆われているが、壁の表面から塗料が剥がれ始めている。

 

 

ウェル・ハング・ラバー

2006年、性的医療機関の壁に描かれた作品。市当局が行った調査では、人口の97%が作品を残すことに賛成。一度損傷を負って修復されたが、2018年に破壊された。

 

 

バンクシーの作品を買ったらおまけで家一軒

英ブリストルの住宅にかかれた壁画。25フィート×6フィート(約14平方メートル)のサイズで販売され、おまけに5ベッドルームの住宅が付いていた。

 

 

今日はここまで。次に続きます。