先日の続き。
兵庫県には、現代美術の収集に執念を燃やしたコレクターがいました。1926年、西宮市に生まれた山村徳太郎です。山村氏は大阪大学卒業後、山村製壜所の所長に、続いて山村硝子株式会社の社長に就任しました。
山村氏が自ら美術品の収集を始めたのは、社長に就任してからの事。1957年、吉原治良(1905-1972)との出会いにより、具体の作品を中心に集めるようになったと語っています。
社長を辞し顧問となった1983年。コレクションに一つの画期が訪れます。東京画廊の松本武と共にイタリア・トリノに赴き、ミシェル・タピエが持ち帰った作品を17点買い戻し、具体のコレクションは充実したものになりました。
また、山村氏の活動で特筆すべきは、各作家に依頼して、失われた作品の再制作を試み、自ら作家へのインタビューを行い、具体に関する資料の整備を手がけた事。
1986年惜しくも急逝した山村氏。コレクションは未完のまま残され、「山村コレクション」として兵庫県立近代美術館に収蔵されました。
以下「Ⅲ 現代美術―山村徳太郎と近美の並走」で見た作品です。
金山明(1924-2006)「作品(1957)」
元永定正(1922-2011)「タピエ氏(1958)」
元永定正(1922-2011)「作品2(1959)」
元永定正(1922-2011)「作品 N.Y.No.1(1967)」
白髪一雄(1924-2008)「作品Ⅱ(1958)」
白髪一雄(1924-2008)「赤い丸太(1955/1985)」
嶋本昭三(1928-2013)「作品(1952)」
嶋本昭三(1928-2013)「この上を歩いて下さい(1956/1984)」
上前智祐(1920-2018)「作品(1958)」
浮田要三(1924-2013)「作品(1958)」
吉原通雄(1933-1996)「作品A(1959)」
鷲見康夫(1925-2015)「作品H(1960)」
正延正俊(1911-1995)「作品(1961)」
村上三郎(1925-1996)「作品(1960)」
村上三郎(1925-1996)「作品(1963)」
前川強(1936-)「垂直のひだ―赤(1961)」
向井修二(1940-)「作品(1963)」
松谷武判(1937-)「Work'65(1965)」
兵庫県立近代美術館は阪神・淡路大震災をきっかけに移転し、2002年4月、兵庫県立美術館と名称を変えて新たなスタートを切りました。
2004年、グループ結成50周年を記念する「具体回顧展」が開催され、グループの後半期に加入した作家たちの作品がコレクションに加わります。
兵庫県立美術館では、2019年にも「山村コレクション展」で一部具体の作品を採り上げていますが、今回は女性作家やグループ後期の作家が加わり、具体に特化した内容でした。
以下「Ⅳ 多角的な理解に向けて 県美のGUTAIコレクション」で見た作品です。
喜谷繁暉(1929-2009)「トルソ6(1965)」
坪内晃幸(1927-2005)「作品(1965)」
今井祝雄(1946-)「白のセレモニー・HOLES#6(1966)」
木梨アイネ(1929-1986)「作品(1964)」
高崎元尚(1923-2017)「装置(1966/2003)」
堀尾貞治(1939-2018)「作品《無題》(1967)」
田井智(1939-1971)「WORK(1967)」
小野田實(1937-2008)「WORK 68-Wa・b(1968)」
松田豐(1942-1998)「CRU-CRU-KATA(1970)」
田中竜児(1927-2014)「棲1(1962)」
具体が活動した時代は高度経済成長期。自由闊達な表現は希望に満ちた時代の象徴と言えましょう。コロナ禍の今、当時の活気を蘇らせたいという願いを込め、「今こそGUTAI」と題して展覧会を開催したと締めくくっています。
おわり