六甲ミーツ・アート2018⑤ | 散策日記Ⅰ

散策日記Ⅰ

美術館&博物館で開催された展覧会の記録、それにまつわる散策記です。

 記念碑台からバスに乗り、ロープウェイ山頂駅で下車しました。

 

 駅構内にとても面白い作品がありました。作品名は「向き合う人」。解説によると、男性の動きに女性が反応し、女性の動きに男性が反応する。しかし男女のコミュニケーションが常にうまくいくとは限らない、そんなもどかしさを表現したとのこと。

 

 この作品を制作した志茂浩和(1960-)氏に直接お話を伺いました。作品の男性は志茂氏本人で、女性は彼の助手です。動きは男女別々に撮影したとのことでした。装置は鏡の効果で、あたかも3人の人がいるように見えます。

 

 

 六甲有馬ロープウェイは1970(昭和45)年に開通されました。駅構内に開通当初から1993(平成5)年頃まで使われていたゴンドラが保存されています。

 

 現在使われていないホームに、幻の三流画家、ユアサエボシ(1924-1987)氏の絵が飾られていました。このレトロ感、ホームの雰囲気に良く合っています。

 

 ユアサエボシ氏の経歴が木板に細かく書かれていました。尋常小学校卒業後、看板屋の仕事をする傍ら、福沢一郎氏の絵画研究所に入所する。ヘルニアを患っていたため軍隊には行かず、戦後は進駐軍相手に似顔絵を描き日銭を稼ぐ。前衛美術展に5回、ニッポン展に1回出品。32歳から2年間アメリカで絵を学び、独自の絵画を展開する。晩年は母の死をきっかけに引きこもり、自身の過去の作品を繰り返し模写する日々を過ごす。

 

 現実のユアサエボシ氏が生まれた1983(昭和58)年、59歳のユアサエボシのアトリエ兼自宅が全焼。作品の大半が焼け、自身も重度の火傷を負う。火傷の後遺症により63歳で死去。現実のユアサエボシ氏は、架空のユアサエボシが遺したわずかばかりの作品と創作ノートを頼りに、作品を再制作しているとのことでした。

 

 

 ロープウェイは20分毎に発車し、12分で有馬に着きます。駅から有馬温泉街までは徒歩15分。ロープウェイを使えば、六甲山と有馬温泉を1日で周れます。

 

 ロープウェイに使用されているワイヤーロープは4種類あります。ゴンドラの車輪が走る「支索(しさく)」、運転室のモーターでゴンドラを動かす「曳索(えいさく)」、ゴンドラの走行を安定させる「平衡索」、先に70トンのおもりをつけて支索を引っ張り緩まないようにする「緊張索」です。

 

 曳索と平衡索は2本ずつ連結され、12本のワイヤーでゴンドラを支えています。ゴンドラ自体にモーターはついていません。山頂駅のモーターが滑車を回転させてロープを引っ張り、ゴンドラを動かしています。

 

 屋外には原動滑車とベルタワーが展示されています。ベルタワーは開業15周年記念に、ロープウェイの建設に携わった日本ケーブル(株)から寄贈を受けたものです。公募により「Mt.六甲ベルタワー」と名付けられました。