先日は試し掘りについて投稿しました。試し堀りで採掘する鉱脈が決まったら、まずその鉱脈を発破し、一気に鉱石を砕きます。発破は以下の手順で行われました。
発破の手順
1.5m程度の深さの穴を、30ヶ所ほどアーチを描くように開け、穴の中にダイナマイト(筒状の爆薬)を仕掛けます。ダイナマイトは1m当たり15kg使用。扱いづらく危険性を伴いました。
爆薬を仕掛けた穴を導線でつなぎ、点火装置をつないで合図を出してから点火し発破させます。破砕量は1回当たり11トン。中心部から0.001〜0.01秒間隔で爆発し、岩盤を崩しました。
爆発音は大きいので作業員は耳栓をしました。発破後は有害なガスが発生し、粉塵が舞い上がるため、それらが収まるまで発破した所には近寄れず、1週間次の作業に取り掛かれないこともありました。
発破後の採掘は、シュリンケージ採掘法とサンドスライム充填採掘法により行われました。それぞれの採掘法についての説明は下記のとおりです。
シュリンケージ採掘法
発破で砕かれた鉱石を足場にし、鉱脈に辿って下から上へと掘り進めていく採掘法です。破砕鉱石を漏斗(じょうご)に掻き落とし、漏斗に溜まった鉱石をトロッコに積み上げました。破砕鉱石内に空洞ができるため、足元が不安定になりやすいという欠点がありました。
坑道は深さ30メートル間隔で掘られました。下の写真は、シュリンケージ採掘法で掘られた穴です。
サンドスライム充填法
1953(昭和28)年から採り入れられた採掘法です。シュリンケージ採掘法の欠点を補う方法で、掘跡にサンドスライム(砂や泥土)を充填することにより、安全で能率の良い採掘が行えるようになりました。
スラッシャーという機械を使い、破砕鉱石を掻き寄せる作業を行いました。
スクレーパーで奥から手前へと掻き寄せるしくみになっています。
ローダー作業
破砕鉱石を圧力空気を動力としたローダーで回収し、後ろにつながれた鉱車に鉱石を積み込む作業。上から水を霧状に噴射し、埃を抑えました。
トロッコに1トンの鉱石を積み、蓄電池機関車で立坑(エレベーター)まで運搬しました。
坑道にはトロッコのレールが残っています。
姑息作業と落石防止作業
発破した鉱脈は脆く、表面についた鉱石がはがれ落ちたり、天井の鉱石が落ちてくる危険性があります。その危険性を回避するため、浮石(うきいし)を取り除きました。この作業を「姑息作業」といいます。
落石防止のためにルーフボルトを打ち込みました。ルーフボルト1本につき、約2トンの岩盤を支えられます。深さ2m程度の穴を開け、これに長さ1.2mのボルトを打ち込んで固定しました。
支保を立てる
坑道の柱となる支保を立て、落石を防止する方法もあります。この時、電灯や機械装置に必要な電線を配線し、穿岩に必要な圧縮空気と水の配管を行い、空気を送り込むために送風機や風管の設置も行いました。支保の素材や組み方はさまざまで、岩盤の硬さによって使い分けられます。
五枚合掌支柱組。支柱に木材を使って組む工法です。ここでは大きな檜の丸太が使われました。
馬蹄形鋼枠二枚合掌。支柱に鋼枠を使い、馬の蹄(ひづめ)のように組む工法です。
この狭い坑道でどれぐらいの人が働いていたのでしょうか?気になるところです。