白鹿記念酒造博物館 | 散策日記Ⅰ

散策日記Ⅰ

美術館&博物館で開催された展覧会の記録、それにまつわる散策記です。

 灘に酒造りが発達した要素は4つあります。

 六甲山地よりも北側の美嚢(みのう)郡・三木市等で生産された「山田錦」。六甲山地に降った雨が花崗岩でろ過され、伏流水として湧出する「宮水」。寒造りに好適な気候をもたらす「六甲おろし」。そして六甲山地を越えて出稼ぎに来る酒の技術者「丹波杜氏(たんばとじ)」。

 

兵庫県の稲を比較したサンプル。一番長い稲が「山田錦」です。

 

酒造りは11月~3月の季節労働で、蔵人は会所(かいしょ)部屋で食事や休憩をしました。

 

酒造りの過程

 

1.洗米・浸漬(しんせき)

 斗桝で量った白米を踏桶に入れ、水を入れて3回に分けて足で踏んで洗います。洗った白米は糠桶に入れて充分に水を浸します。

 

2.蒸米

 米の下から蒸気を当てて勢いよく蒸します。米を糊化して麹菌・酵母菌の活動をしやすくします。また、殺菌も兼ねています。

 

昭和20年代まで使われていた釜場跡。石炭を使用しており、煙突がありました。

 

3.放冷

 蒸し上がった米をむしろの上に広げ、麹用・醪用などそれぞれの温度に適した温度にまで冷まします。

  

 

4.麹(こうじ)室と麹

 麹は黄麹菌というカビの一種で米のデンプンを麹に変えます。麹室で種麹(胞子)を蒸米に植えつけます。

  

 

5.酛(もと)=酒母(しゅぼ)づくり

 宮水、蒸米、麹を混ぜた中で糖をアルコール発酵させる酵母菌に育てます。醪仕込み前に優良な酵母を純粋培養させる酒母は、字のとおり酒の母になります。

  

 

6.醪(もろみ)仕込み

 酒母に麹、蒸米、宮水を3回に分けて仕込みます。これを醪仕込みといい、初添え、踊り(仕込みの無い日)、仲添え、留添えと続きます。4日間で終了。その後、低温状態を保ちながら発酵管理をします。

  

 

7.しぼり

 酒袋の中に醪を入れ、槽の中に酒袋を入れて重しをかけます。袋には酒粕が残り、下の垂れ壷に新酒が垂れます。

 

 槽場(ふなば)は酒をしぼる場所です。槽(ふね)の中にもろみを入れた酒袋を並べ重ねて入れ、初めは酒袋から酒が自然に流出し、最後には圧力をかけてしぼり、酒と酒粕に分けます。

 

8.滓引き(おりびき)、火入れ、貯蔵

 しぼった酒の後には少し濁りがあるので、これを取り除く事を滓引きといいます。その後、62~65度で火入れ殺菌し、半年~1年貯蔵し、熟成させます。

 

9.樽詰め出荷

 吉野杉の木樽に酒を入れ、銘柄商標を摺り込んだ化粧菰(けしょうこも)を巻き、とじ縄をかけて出来上がります。そして各地へ船などによって出荷されます。

 

 1~9までの酒造りの過程は分業で、それぞれの過程で専任の人がいました。酒造りに使う道具を作る人もいました。

 

酒造りに使う道具と印版

  

 

酒造りの過程がよく分かる博物館でした。今津・西宮郷巡りでは必見です!