白鶴美術館(新館) | 散策日記Ⅰ

散策日記Ⅰ

美術館&博物館で開催された展覧会の記録、それにまつわる散策記です。

本館の近くに新館があります。

 新館は1994年、開館60周年記念事業により、開設されました。

 

新館の展示テーマは「美術品としての絨毯」

 白鶴美術館第4代理事長で、白鶴酒造10代目でもある、嘉納秀郎(1934-2010)の中東絨毯のコレクションです。

 

以下、パンフレットの説明文から一部抜粋しています。

 羊毛や絹をパイル状に織った敷物を一般的に絨毯と言いますが、中東でキリムと呼ばれている綴織りの敷物や、羊毛を固めただけのフェルトの敷物を含めることもあります。

 現存する最古の絨毯は、紀元前5世紀頃に織られたものです。南シベリアのアルタイ山中のパジルリク古墳から発見されました。

 

 製作地の大部分は乾燥地帯で、厳しい乾燥と寒さに対処するため、絨毯は生活に欠かすことができない物でした。家畜と共に牧草と水場を求めて移動する生活で、女性は家事・育児の合間に絨毯を織っていました。

 実用品は腐食しやすく、後世に残っていません。現在見る絨毯の多くは、専門の職人が商品として織った17世紀以降の物です。

 

 また、中東の人々の多くはイスラム教を信仰しています。

 メッカの方向を示すために「礼拝堂(モスク)の内壁に設けられたアーチ型の凹み(ミヒラーブ)」を図案化した、ミヒラーブ絨毯と呼ばれる礼拝用の絨毯があります。

 偶像崇拝を禁じるイスラムでは、生き物の造形的表現を嫌う傾向があり、それが絨毯の文様にも表れています。

 

 19世紀後半から20世紀初頭にかけて織られた絨毯が展示されていました。3つの生産地があり、それぞれに特徴があります。

 

● トルコ(アナトリア)絨毯

 セルジューク朝(1038-1194)の影響を受けて発展し、オスマン朝(1299-1922)の宮廷を中心に華やかな絨毯が製作されました。鮮やかな色彩と幾何学文様が好まれています。

 

●ペルシア(イラン)絨毯

 16世紀のサファヴィー朝の宮廷工房で頂点に達しました。つる草、草花、鳥や獣など自然をモチーフにした文様や宇宙を象徴するようなメダリオン(円花文)文様、優しい色合いが好まれています。

 

●コーカサス(アゼルバイジャン、ダゲスタン)絨毯

 コーカサスは、黒海とカスピ海に挟まれた山岳地帯で、様々な人種が混在しています。ペルシアやトルコの影響を受けて発展しました。シンプルな幾何学文様と、重厚で深みのある色彩が好まれています。

 

 絨毯の文様もよく見ると、宗教だったり自然だったり何かを表現していました。色彩の違いは微妙で、何となく濃いか薄いか分かる程度でした。

 

 絨毯はシルクロードや海を経由して、ヨーロッパやアジアに運ばれました。

 日本で中東の高級絨毯はあまり見かけませんが、意外なことに、祇園祭の山鉾の飾り部分に使われているそうです。

 今年の夏は祇園祭を見に行く予定です。その時、山鉾を意識して見ようと思います。