12の要素の中の最初の一つ、主体性の話が前回で一区切りつきましたので、今回はその次に出て来る「働きかけ力」を取り上げたいと思います。この要素も「前に踏み出す能力」の重要な構成要素になっているようですね。社会人基礎力の中では「周囲の人に働きかけて、巻き込む力」と定義されています。
主体的に目的を決めて取り組み始めたとしても、一人でできることは限られていませんか。自分一人では乗り越えることが難しい壁なんかはいくらでも出て来ます。一人では出来なくても複数の人たちで協力し合って為せば、もっと大きな効果を発揮出来ますよね。
周囲の人にも協力を得ようとすれば、ちゃんと自分の思いを誰かに伝える事から始めなければなりません。そして相手の理解を得て納得してもらったうえでの協力や協働ということになります。ですから、働きかけ力にはコミュニケーション能力も必要だと思います。かといって、立て板に水というほど弁が立つ必要はありません。話し方が上手で理路整然と雄弁に話す事が出来るなら良いのですが、朴訥としていても相手にキチンと目的や理由を伝える事が出来て相手を納得させる事が出来るなら、話し方の上手下手は大した問題ではないと思います。
なによりも、聞いてもらうことが大事ですが、コミュニケーションの目的が「協力を得る事」なので明確です。強い思いがあって道理を通して他者の納得を得るなら、その話し方が少々稚拙でも相手は耳を傾けてくれるのではないでしょうか。相手が「面倒事は御免だ」というような人ならば何を言っても無駄でしょうが・・・。
「働きかけ力」は目的の達成を目指すために、周囲の人々や関係部署を巻き込んで、その人たちに協力を促す力です。目的を設定した本人が一番「目的」の事を理解しているでしょうから、最初の協力依頼のコメントは本人の仕事ですね。それから先は協力者にも手伝ってもらえば良いと思います。その際には単に協力を依頼するだけでなく、相手の立場や状況などを理解した上で、コミュニケーションを建設的に行うことで、共に課題解決や目標達成へと導く、「働きかけ力」ってこんなことを指すんですね。
これは、捉え方によっては「調整力」だとか「根回し力」といった考え方が出来るかもしれません。
この力って、様々な専門性を持つ人や部署と連携したり部署間の壁を越えてプロジェクトを進めたりするうえではどうしても必要なものですね。周囲の人を動かして巻き込むことが出来れば、一人だけでは到底できないであろう大きな成果を生み出すことも可能になりますし、組織全体のパフォーマンスをアップさせることにもなります。
「働きかけ力」は考え方や解釈を少し変えれば、「リーダーシップ」と重なる部分があるように感じます。
社会人基礎力の内容は、最近では教育の場でも取り上げられているように聞きます。ただ、それが就職した企業ではどのように受け止められているのか等については不明ですが。少なくとも私がかつて勤めていたところでは、社会人基礎力というものはコトバすら耳にすることがありませんでした。企業によっても受け止め方はいろいろなのでしょう。
やはり、「働きかけ力」はリーダーシップと重なるところが多いようですね。「働きかけ力」はリーダーシップを鍛えるための基礎的なものとして捉えられているようでした。スポーツ系のクラブ活動などが分かりいやすいように書かれていましたが、アルバイト先やグループで何かに取り組むときなど、使える場面はいくつもあるようですね。
分かりやすくするために、教育の場では「働きかけ力」をいくつかに分解して考えているようでした。
例えば、私が調べた資料では「自分から声を上げる、声を出す」こと、「皆をまとめて目的に進む」こと、こんな分け方になっていました。
これは、周囲の人々に自分と一緒に行動してもらうためには、仲間に呼びかけることが大事だという事です。周囲の人々を励まして、気持ちを奮い立たせるという事ですね。スポーツだと分かりやすいと思いますが、チームのメンバーが積極的に声を出して仲間同士で励まし合う、そんな場面を想像してもらえば良いでしょう。仲間を鼓舞して各自の積極的な行動を促すためには、自分から声を出す必要があるんですね。
また、「目的に向かって突き進む」部分も大切にしなければなりません。目指す目的を明確に示して、全員でそこに突き進まなければなりません。全員をまとめ上げて気持ちを1つにして同じ目的に向かって突き進めば、皆が動く事でチームの力を発揮する事が出来ます。個々がバラバラに違う方向に進むのではなく、全員をまとめることも「働きかけ力」と考えるわけですね。
ただ、個人的には「教育の場ならこれでよいが・・・」って思うんです。なぜなら、スポーツ系の部活動やサークルならば目的はだいたい決まっているでしょうし、チームも最初からできているんじゃないかと思うからです。
社会人として考えるなら、最初に行動する目的や理由を考えておかなければなりません。そのうえで、どのようして解決に持ち込むかの筋道もある程度考えておかないと取り組む事が出来ないと思います。この辺りは前回の「主体性」のところで考えました。
社会人になれば問題に正解などありません。うまく解決につながったとすれば、それが正解だったということになります。したがって、やり方が違っても正解になる、そんなやり方がいくつか存在することになるんじゃないかな。人によってゴールが同じでも筋道やルートが違ってくることも有るでしょう。
この辺りはスポーツ系の部活動で考える「働きかけ力」でも先に決まっているという点で同じなのかもしれません。ただ、声を出して仲間を募る辺りから、事情は変わってくると思います。社会人なら「どんな人を巻き込んだら進めやすくなるか、どの部署の人が参加すれば効率よく出来そうか」といったことを考えて、参加してもらう人を選ぶ(人選)必要もあるでしょう、誰でも良いというわけにはいきません。御神輿を担ぐ場合でも、ぶら下がってただ騒いでいるだけの人が参加すれば他の人に負担がかかるだけですから。
人を選ぶことを考えるなら、他人を見抜く力も含んだ方が良いかもしれません。さらに、相手が上司や先輩、顧客という事も出て来るでしょうが、その人たちを納得に導くコミュ二ケーション力、積極的にアイデアを提案する力、人によって異なるであろう多様な価値観、他の人のアイデアなどを受け入れる柔軟性、こういったものも必要になってきそうです。
言葉で「働きかけ力」といっても、それを実行するためにはいろいろな基礎が必要になりそうですね。私もだんだん怪しくなってきました。


