今回は、この相反する(と感じてもおかしくない)二つの姿勢について考えてみたいと思います。一般に「謙虚(な人)」は尊敬されて一目置かれる存在になることも多いと思いますが、「貪欲(な人)」は敬遠されて誰も近寄らない傾向がありませんか。貪欲な人ってあまり良い評価ではありませんよね。ところが学びに関して言えば、「貪欲」と言う言葉を使っても決して悪い評価ではない場合があります。私が学びの時期だった頃は、「貪欲」はむしろ推奨されるような姿勢だったと思います。
貪欲と似た言葉に「強欲」と言うものがありませんか。たいていの場合で同じような意味の言葉として使っているように感じますが、少しニュアンスが違うようです。個人的に感じているニュアンスでは「貪欲は根こそぎ、強欲は独り占め」と言ったものなのですが、実際には違うようでした。
まず貪欲の方ですが、調べてみると「貪欲(どんよく)」は「何かを手に入れてもまだ満足せず、さらに多くを欲しがる」という意味合いがあるそうです。いわゆる「もっともっと」といった感じでしょうか。貪という漢字は「むさぼる」と読みますので、腹を空かした獣が脇目も振らず夢中に獲物にかぶりついている様子を想像してしまいます。仏教では煩悩の原因とされる三毒の一つとして「際限のない執着や欲望」といった意味に用いられている漢字ですね、こわい、こわい。しかし、何に対する欲かと言うと「物欲、金銭欲、所有欲」等の物質的なものですが、中には「知識欲」も含まれているのだとか。この知識欲を含むことから、学びの時にだけは悪いイメージが感じられないのでしょう。
それに対して「強欲(ごうよく)」の方はというと、「悪徳」「異常」「醜悪」といった否定的なニュアンスを強く含みます。その人の人間性(性根)や行為そのものに対して「醜く、欲深である」とする非難の意味で投げかけられるんですね。ですから、どんな場面でこの言葉が用いられたとしても、決して良い意味はありません。人間性にまで及ぶ言葉ですから、きっと社会的な倫理にも反するようなことをしているイメージがあるのでしょう。
さて、今回は「謙虚(さ)」というもう一つの言葉を挙げているのですが、貪欲と謙虚って同時に存在できるのでしょうか。あるいは、一人の人物の中で同居出来るものなのでしょうか。
謙虚の意味は、「自分の肩書や立場を鼻にかけて威張ったりおごる言動をせずに、控え目で慎ましい態度を取ること」となっていました。さらに続けて、「他者の意見や能力を尊重し、常に学び続ける姿勢を指す言葉」だと書かれていました。他者の意見や能力を尊重するためには、自分自身の性格や能力的な得手不得手をよく把握していて、しかも自己肯定感が高く自分に自信を持っていなければ、なかなか難しいことだと思います。そうでなければ、他者の秀でたところを認めるなんて、素直にできないんじゃないでしょうか。よく「マウントを取る」ような言動をする人がいますが、こんな人は謙虚とは程遠い、誰かを貶めないと自分が劣っている事がバレてしまうと思って、常にビクビクしている人でしょうね。
謙虚な人は相手を尊重してくれますし、学習意欲が高く向上心も旺盛なタイプの人が多いようです。そして、いつも感謝の気持ちがあって、他者の成功を一緒に喜んでくれる、自分の成功でも周囲の人に感謝を忘れない、そんな人なら、尊敬されても当然です。
尊敬され、一目置かれる存在になるのですから、当然ですが周囲には沢山の人が寄ってきます。謙虚な人であればその人たちからも学ぶことがあるでしょう。きっと周囲の人たちのことを大切にするでしょうから、人間関係も良好になるでしょうし、人脈も広がります。何かあれば周囲の人が挙って助けてくれるでしょう。
さて、普通に考えると謙虚さを持つ人と貪欲さを持つ人は別人じゃないかと思いませんか。同じ人が両方の側面をもつなんてちょっと考えにくいと思うのですが、どうでしょうか。「貪欲さ」の言葉に悪い方のイメージを強く感じ取るのであれば、謙虚な人の裏の顔(?)のように受け止められてしまうかもしれませんが、貪欲さの対象に「知識欲」がありましたよね。謙虚な人は向上心が旺盛で学習意欲も高いというタイプの人が多いとありました。だとすると、知識欲に対しての貪欲さであれば謙虚さと同居するのは可能かもしれませんね。
学習意欲が旺盛で向上心にまかせて貪欲な姿勢で学びを続けていく、しかし学んだことや知識をひけらかす事もない、そんな姿が浮かんできます。きっと「静」の面が謙虚さで「動」の面が貪欲な学習意欲といったことなのでしょう。
余計なことかもしれませんが、ここで一つだけ注意することがあると思います。それは「舐められたり、蔑ろにされたりしないようにする」という事。世の中にはいろいろな人がいます。いつも周囲の人を観察していて、ちょっとしたミスを見つけようモノなら、たちまち「鬼の首を取った」かのように大騒ぎして他人を貶める人が、必ずといってよいほどいます。また、ちょっとその人を尊重したり意見に耳を傾けたりすれば「自分は優れているから、相手はそんな態度を取ったんだ」と勘違いして、すぐに調子に乗って周囲の人を見下すような態度を取ったりする人もいます(経験が浅い人に見られる傾向があるように感じます)。
こういった人が周囲にいるなと感じた時は、出来るだけ他人にスキを見せない事が大切です。このような、年齢にふさわしくない言動の人には出会いたくないのですが、残念な事にどこに行っても必ずといっていいほど居るんですよね。
こんな人には気を付けましょう。


