まず、3つの視点について、社会人基礎力に書かれている内容を紹介しておきます。
・何を学ぶか・・・「学び」の部分です。ただ、「何を」学べばよいのかが分かりませんので、具体的に示されているものが参考になると思います。それによると、「社会人基礎力のほか、ITや業務など専門スキル」となっていました。当然ですが、どこかの組織に所属することになるならば、そこでの業務は一通り出来なければなりません。また、その通常業務を通して業界などの中の考え方や傾向、自分の立場なども知ることになります。この辺りは「社会人基礎力」の部分に相当するでしょう。そう考えると、組織に所属するようになったら、なかなか遊んでいるヒマなんか無い状態になるんじゃないでしょうか。
また、自分のキャリアをいくらかでも意識するなら、幅広い知識や専門のスキル、加えて組織外の人脈を作ることも必要になってきそうです。その内容も、キャリアアップを想定したモノか、キャリアチェンジも考えておくのかどうかで変わって来ます。仮に今就いている業務に満足がいかない点があるのであれば、キャリアチェンジは当然ですが、想定しておく必要があります。
・どのように学ぶか・・・ここは「統合」となっていました。これは、自分の体験や経験も含めた多様な学びの手段を手に入れると同時に、それらを貴重な学びとして自分を形作るために体系立てて積み上げていくことも含んでいると思います。
「どのように学ぶか」、それは人それぞれでしょう。その人に合った学び方があると思います。また、学ぶ対象によっても、どのようにすればより効果的かが変わって来ます。それぞれに合う適切な学び方で取り組めば比較的スムーズに学びを得る事が出来そうですね。
「何を学ぶか」をいっしょに考えるなら、自分のキャリアに関わる部分が出て来ます。そのキャリアをアップさせるにしてもチェンジさせるにしても、それをさせない風潮は必ず出て来ますので、足を引っ張られないように「ナイショで」学び続ける、「バレないように」学び方を工夫する、そんなことも必要かもしれません。
・どう活躍するか・・・ここは「目的」となっていました。何の「目的」なのかといえば、それは「自分の自己実現や社会貢献など」になります。つまり、なぜ仕事をするのかといった所にまで及ぶかもしれませんが、自分はどうしたいのか、どうなりたいのかといった究極の姿や理想がないと、働くことの意味が見失われるかもしれない、そんな深いところに根差した自分の姿や状態がゴールになると思います。そして、どうやってそこに辿り着くか、そのルートを自分で考えて作り上げる事まで考えておく事になりそうです。
ここまで書いてきて、新たに視点という捉え方が加わった事は分かるとしても、従来からあった12の能力要素を束ねた3つの能力という枠組みと、新たに加わった「3つの視点」という捉え方、いったいどのような関係になるのでしょうか。
じつは、「3つの能力」は仕事をするための土台という捉え方があるようです。12の能力要素が底にあるわけですから、当然かもしれません。そして、その能力を発揮するために「3つの視点」つまり「行動特性」が必要だという考え方ですね。実際に経済産業省が出している2018年版の社会人基礎力の中では、「3つの能力」があって、その手前に「3つの視点」があり、それらを貫く「リフレクション(振り返り)」があるという、いわば順序というのか、階層の関係になっているようです。この大きなリフレクションの矢印は「3つの視点」から「3つの能力」に向かっています。能力を発揮するために、先に視点を定めよという事のようですね。
詰まるところ、「3つの能力」とは、「何を身につけるとこの能力を発揮できるか」という所でしょう。これらは仕事の成果を出すための要素となる部分です。
「3つの能力」を簡単に一言でまとめると、「前に踏み出す力(アクション)」とは、「一歩前に踏み出し、失敗しても粘り強く取り組む力」を求めているわけですし、「考え抜く力(シンキング)」は「疑問を持ち、考え抜き、答えを見つけ出す力」が必要だと説いています。そして、「チームで働く力(チームワーク)」は、多様な人々と目標を共有、協力して成果を生み出す力」と説明されています。
これに対して「3つの視点」は「(上記の各能力を)どう発揮するか」という捉え方になります。これらは、上記の能力を現場でどのように機能させるかという「指針」に当たります。
ただ、「3つの視点」といっても、捉え方は様々なようですね。経済産業省の策定したものでは「学び」「目的」「統合」となっていましたが、キャリアを考えるならこの3つでよいでしょう。ですが、これらは一体誰の話なのでしょうか。結局は「自分事」ですよね。ですから、自分の責任で行うことなんです。
ここで気になることがあるのですが、ちょっと変だと感じませんか。「3つの視点」は行動する前に必要な前提のようなモノだと思いますが、その視点が「3つの能力」や「12の能力要素」とうまくかみ合ってしないんじゃないかと感じるんです。それに、なぜ「視点」のような前提になるであろう捉え方が、改訂版になってから出てきたのか、言い換えれば後になってから出てきたのは不自然じゃないのかという疑問です。
調べてみたら、ここにもいろいろな問題が孕んでいたようです。
1つ目は「マニュアル人間」への危機感を多くの人が感じていたという点です。2006年に社会人基礎力が提唱された当時は、学校教育の場では「言われたことを正確にこなす、従順な能力」が高く評価される傾向があったようです。「個性の尊重」を叫びながらも、自分で考えて行動しようとすればイヤな顔をされるのが現状だったようです。そのため、知識やスキルを持っていたとしても、それを「何のために」という目的も、「どう発揮するか」という自分事としての視点も、持とうとしない方が良いという判断が生まれてしまい、その結果として、自分で判断できない若者が急増したという背景があったようです。
また、2つ目として、「OS」を教えないまま「アプリ」を入れようとした、そんな無理な状況もチラホラ見えていたようですね。本来なら、学生の間に「主体性(OS)」を育むべきモノにも関わらず、それがうまく機能できていなかったのでしょう。経済産業省は「社会人基礎力」というパッケージの中に、本来は前提であるはずの「視点(OS)」と、具体的な「能力(アプリ)」をごちゃ混ぜにして放り込まざるを得なかったという意見もあります。
本当に優秀な社会人や、社会人になる前の準備ができている人は、「社会人基礎力」をすべて満たしている人だとは限りません。それよりも、「この12の要素は状況によって矛盾するし、3つの視点とは綺麗に繋がらない」という構造の歪みに気づいた人じゃないでしょうか。そして、現場の都合に合わせてツールとして使いこなせる、または組み替える事が出来る人でしょう。
つまり、公式の資料をそのまま丸呑みにして「全部できるように頑張ります!」と言っているうちは、まだ前提に立てていないのかもしれません。
だからといって、社会人基礎力が有用じゃないという訳ではありません。これをヒントとしていろいろと思考を巡らせて、業務の中でその都度「最適解」を導き出すために役立てるなら、本来の社会人基礎力が持つ意図は果たしていると考えて良いんじゃないかな。


