事あるごとに、私は表現力がないのでと言う人がいる。

 そんなことは言われなくても知っている。


 そんなくだらない御託を並べる暇があったら、なぜどうやったら少しでもその問題を解決できるかを考えないのだろうか。

 

 私なんかは表現力がないとはっきり思っている。だから、いろんな本を読むたびに、少しでも気になる表現があれば書きだし、テーマ別に整理している。


 それが○○バンクと呼べるほどのものになっている。


 手のうちを全部明かすのはいくらなんでも惜しいので、小出しにしていく。 


 たとえば、空。くだらないのもあるけれども、出典も書いているし、何かの役に立つのではないかと思う。


 少なくとも、「私は表現力がないので、、」などと、夫婦喧嘩以上に犬が敬遠する科白を何百回となく繰り返して、どうしようというのだろうか。


空 空も乳白色のふくらみをみせて 

  空は泥絵具で描いたような濃い橙色に染まった 

  りんどう色の空が次第にすみれ色にかげり始める 

  くすんだ茶褐色とたれこめた 

  その空のおもてに、昼から夜へと移る色彩の凋落をながめることで、

  空の端が明るく濁り 

  水色の空は深く輝き

  濃紺色であり、空というより宇宙をのぞく思いであった 

  空がすすけて感じられるのはちょうど北九州の沿線のようだ 

  空は澄んでいたが、きらめきを欠いていた

  藍色の闇に染まった空 「十二月の空」

  空が藍色に垂れこめた 「私の男」

  空はうす灰色をしていて、雲間からきらきらと朝陽がこぼれ落ちていた 「私の男」

  群青色をした空が、海に向かって垂れこめるようにただ茫漠と広がっていた 「私の男」

  空もまだ暗すぎてこぶのような起伏があるように見える 「狙われたキツネ」 

  雲一つない裸の空 「調書」

  空はますます薄い黄色に染まって雲と光の層がパイ生地のように積み重なり、「熊の敷石」

  毎日空が冷たいすりガラスに包まれたようだった 小川洋子「ドミトリイ」

  細長い海が水色の空と混じり合っていた 小川洋子「夕暮れの給食室と雨のプール」

  陽の名残を宿す狐色の空が低いところまで降りており、 

ゴルトシュミット 富重与志生「隔離の風景」

絶壁のような限りない空 「隔離の風景」

黄色く色づいた空 「隔離の風景」

夜明け前の透明な群青の空 「一瞬の風になれ」

黄色い靄の立ちこめる空 「夷狄を待ちながら」

巨大な木の間から黒い森の上に青く色づいている空 「リナ」

干された洗濯物の上に広がる薄青い空 「リスボンへの夜行列車」

雲のかからない空は何か重たい鋼のようで、鬱然とした光を放っていた 「築路」

スペインの墺火のように真っ赤に燃えた空の下で ラファエル・ビエドュー 高野優訳

「私の夜はあなたの昼より美しい」

真っ青な空は優しく地平線を愛撫しているかのようだ 「フランス組曲」