不法投棄を認めず犯罪者に加担する下関市 | ニッコリ会・下関

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不法投棄を認めず犯罪者に加担する下関市

 

 2月6日、下関市政記者クラブにて黒井の不法投棄問題について記者会見を下関市政記者クラブで行った。当方から被害者の金山三郎さんと私たちのニッコリ会・下関の3名が同席した。そこで金山さんが1月19日付けで前田晋太郎下関市長を黒井不法投棄問題で規制権限不行使の職権濫用で事件解決を妨害していると刑事告訴状を送付したこと。そしてこの問題について2月24日に熊本一規明治学院名誉教授の講演会を行うことをお知らせした。縷々説明して質疑応答して理解してくれたようで、提訴の時には報告してほしいといわれた。

記者会見を終えて 市政記者クラブ室前

 

市の規制権限不行使は犯罪加担

2009(平成21)年4月16日以降、 ㈲膳家代表取締役を名乗るU氏が 豊浦町黒井の金山三郎氏の所有地に詐欺により賃貸借料を踏み倒し逃亡したことに端を発した。その建設残土等約15,000㎥を業者は山口合同ガス㈱北営業所、西日本液化ガス㈱下関支店の解体工事並びに株ハローディ綾羅木店新築工事にともなう開発工事から排出されたという建設混合廃棄物(産業廃棄物が混入している建設残土)であり、金山さんの所有地は自由使用できなくなった。金山氏はその被害後、早い時期にその被害を訴え、その撤去のためにだましたU氏と排出事業者である元請のS社、運び込んだI社等関連会社の責任を下関市に文書で訴え、下関警察署にも被害届を提出した。

これに対して下関市は2010(平成22)年2月、その撤去のための措置命令はできないとした。

その理由として

①    「土砂等」については廃掃法にいう廃棄物ではない。

②    「土砂等」以外のものについては「廃棄されたならば廃掃法上の廃棄物に成り得るが、その排出者が明らかでないため。

③    現状においては、生活環境の保全上支障が生じ、又は生ずるおそれがあるとは認められないため。

との中尾友昭下関市長から被害者・金山氏への公文書が示された。そして以後今日まで市は一貫してこの姿勢を変えない。

また下関警察署は市の姿勢を根拠に被害届を受理しなかった。逆に事情聴取の中で金山氏は全指10本の指紋を取られることになった。既往犯罪歴でも調べようとしたのだろうか。被害者がなぜ全指の指紋を取られなければならないのか、ここでも金山さんの人権は軽んじられた。金山氏には全く犯罪歴はなかった。

 

下関市と下関警察署が動かないために、被害者は今日まで、だまして行方をくらましたU氏や搬入に係った元請、下請各社を提訴するしかなかった。細々とした年金生活者で資力のない被害者は民事法律扶助制度で受けてくれる弁護士を探したが、下関市内では見つけられず、北九州市内の弁護士さんに受けてもらった。

2012(平成24)年3月、ようやく裁判になった。6年近くかかった裁判結果はだましたU氏に全責任、との判決となった。しかしU氏には何の財力もなく解決できないので、引き続き2018(平成30)年7月、発注者責任を問う裁判を行うことになった。しかし、3年半の裁判の結果は残念ながら敗訴であった。

 

公開質問状で市の不当性暴露

そして2022(令和4)年5月より下関市の行政責任を問う公開質問状を提出し回答を求めた。市は文書回答はしたが、回答に対する質問には一切口頭では答えず、質問をするのなら話し合いをしないと言い、質問があれば文書で再提出するように求めた。公開質問状は2023(令和5)8月まで6回に及んだ。

その中で明らかになったことは市が放置された建設残土等の中にコンクリートくず等があるのを知りながら、コンクリートくず等が産業廃棄物であることを認めないこと、そして「廃棄されたら廃棄物の可能性があるが、残土は廃棄物ではない」と問いに対してまともに答えずに、「廃棄されたら廃棄物の可能性がある」という言葉が廃掃法にはどこにもないことを追求され「行政処分の指針」によると回答している。

「行政処分の指針」は環境省から各都道府県・各政令市産業廃棄物行政主管部長への通知であり、現場が取るべき方針が示されている。それはA4全52ページからなり(令和3年4月14日付け)様々なことが記されている。しかしその中にも「廃棄されたら廃棄物の可能性があるが」という記述はどこにもない。廃掃法上には何ら規定されてない文句を使い、法を無視して現場の裁量で廃棄物にしたり、しなかったりできることになってしまう。そんな無法なことが許されてよいのか。

片や犯罪行為で暴利を貪った輩は、それにより建設残土等の廃棄物の最終処分費用等、数億円単位の莫大な経費を浮かせ不当利得をせしめたのである。そしてその犯罪被害者に対しては詐欺を働き逃亡した返済能力のないU氏だけの責任ということになり、犯罪被害者は今もその建設残土等の小山のために所有地を自由に使えず生活は困窮を極め心理的にも追い詰められて来たのである。

下関市はまさに豊浦町黒井での産業廃棄物不法投棄(法12条2項違反、法16条違反)という明確な犯罪行為に対して関連業者等に対して何の規制も告発も行うことなくこの犯罪を放置している。下関警察署は市の姿勢を根拠に被害届を受理しようともしない。こうして被害者はその圧倒的な建設残土等(建設混合廃棄物)の小山によって所有地を自由使用もできないままに15年間を過ごすことになった。今、その生活は少ない年金だけで困窮を極めている。

 

市もU氏に大きな被害(市民共有財産を破格で売却へ)

さらに市は金山氏をだましたU氏によって金山氏が被害を受けた1年前の2008(平成20)年に同様な産業廃棄物不法投棄の被害を受け、平成24年5月にはU氏が下関警察署で取り調べられていたことも知っていた。同年5月17日の市建設委員会ではこの件が報告されている。そのなかでU氏に対する長府扇町の不法投棄の告訴を「原状に回復したようだ」として告訴を取り下げたとの報告が了解されている。当時、金山氏がU氏に騙され不法投棄されたことを市に訴え続けていたが、それを知りながら金山さんの訴えを無視し、犯罪加害者への告訴を取り下げ、告発義務を有しながら何の告発も行わなかったのである。(刑訴法239条〈公務員の告発義務〉違反)

 これは結果的に下関市がこの不法投棄犯罪に対して加害者を何ら規制せずに、放置することで警察と共に犯罪行為に加担、ほう助したことになるのではないか。

6回にわたる公開質問状に対して、市は回答をしたものの、その回答はゴマカシ内容であり、その回答に対して説明を求めて市役所を訪れても受付に立たしたまま、質問をすると「文書による質問にしか答えられない」と、あえて時間のかかる対応をし続けたため、6回にわたる公開質問状を提出した。

しかし、このような市当局の対応はおかしいと全市議(34名)に対して昨年11月、この経緯を手紙と資料で送り、9名の市議から返信ハガキを受けた。そうして7名の市議が内容を知りたいとしていた。

この15,000㎥にも上る建設残土等のコンクリートくず等の混入は廃掃法12条2項の産業廃棄物保管基準に反しており、廃掃法16条違反の不法投棄に該当し、同法25条1項14号の罰則(5年以下の懲役もしくは1千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。)が科せられる明確な犯罪行為である。

にもかかわらず、当時の中尾市長はごまかしの公文書で問題解決を求める被害者を門前払いにして、犯罪加害者に加担し、以後そのままの対応を続けているのである。

また同建設混合廃棄物の排出工事にかかわった当該排出事業者等の産業廃棄物管理票等状況報告書(マニフェスト)は、記載内容がデタラメであるものを市が受け付けていることも情報公開で明らかになっている。これは廃掃法12条の3第1項に違反しており、市は同法19条の5の第1項3号イ、ロにもとづき支障の除去を求める措置命令をすべきであったが、これも一切対応しなかった。

今回の刑事告訴はこのマニフェストのデタラメに何の行政命令もしなかった市の規制権限不行使(職権濫用)を犯罪として告訴したものである。(別紙参照)下関市はこの不法投棄に対し、結果として犯罪に加担している。今後被害者は下関市に対して損害賠償請求訴訟をせざるを得なくなるだろう。

これらについて下関市政記者クラブで報告した。記者たちは内容を理解し、裁判提訴が行われたら必ず記事にするので報告してほしいと言った。この問題の理解を深めるために2月24日に熊本一規明治学院大学名誉教授をお招きして廃棄物処理法に基づき下関市のどこが違法かの講演会も紹介した。

 

「行政処分の指針」と市の対応は真逆

なお、市が「廃棄されたら廃棄物の可能性がある」の法的根拠だという「行政処分の指針」では「措置命令(法第19条の5)の趣旨」としてこのような処理基準又は保管基準(「処理基準等」)違反があった場合、「速やかに措置命令を行い、生活環境の保全上の支障の発生を防止し、または除去されたいこと。なお、この場合において、処理基準等に違反する状態が継続している以上、いつでも必要に応じて措置命令を発出することができること。(中略)またこれを行使しない場合、「都道府県知事による措置命令の発出が必要であるにもかかわらず、合理的な根拠がなく権限の行使を怠っている場合には、違法とされる余地があること。」と記されている。(p30)

また「不法投棄」をどう見るかについては「有価物と称する廃棄物については、それが廃棄物であること、保管と称する不法投棄については、それが不法投棄であることを行政が積極的に判断し、投棄の実行者に必要な行政指導を行い、その指導の状況を記録しておくこと。」

「不法投棄の悪性立証のため、投棄された廃棄物の排出元の特定が望ましいが、罰条を統合した趣旨をふまえ、排出元の特定が困難な場合であっても積極的に告発を行われたいこと。なお、これについては警察庁とも協議済みであること。」(p45) と記されている。

ところが下関市は「廃棄物混じり土」であることを知りながら「残土(有価物)であるから廃掃法適用できない。」というのは不法投棄犯罪加害者側の言い分に他ならないのである。

 また「廃棄されたら廃棄物の可能性がある」等とは具体的に廃掃法にも規定のない文句であり、言葉のまやかしである。コンクリートくずが産業廃棄物であることは現場で常用するハンドブック の産廃物20品目 にも明確に定められており、それをもゴマカスのはいったい何か不都合なことを隠しているのか。

 黒井での産業廃棄物の不法投棄を認めたら市がよほど困ることがあるらしい。それを隠蔽し続けて犯罪加害者を喜ばせ、被害者を苦しめ法も行政指針にも反することを行っている。このままでは同様の被害がいつ又起こされるかわからない。不法投棄されても市が「それは廃棄物ではないので民民解決を」と廃掃法に基づく管理責任を果たさなければ、犯罪加害者にとってこれほどおいしい町はないことになる。いったい誰のための市政なのか。(つづく)