現在と比べると昭和時代は不便に感じられるだろう。それでも、当時の人は不便を感じることなく暮らしていたのである。
商店街での買い物は単なる商品を手に入れる場ではなかった。売り手と買い手の間に自然な会話が生まれていた。「今日はこれが新鮮です」といった雑談が温かなコミュニティを形成していたのである。
昭和の年末年始の風景は現代のそれとは大きく異なっていた。年末には多くの準備が必要で、食材や日用品を大量に買い込み、冷蔵庫や台所に保存したのである。おせち料理は日持ちするよう味付けがなされ、家族が十分に楽しめるように計画されていた。
年始の静けさは、当時の人々にとって特別な時間だった。年の初め、商店街は一斉に休業し、人々は自宅で静かに過ごしたのである。この時間を活用して、多くの家庭では家族団らんの時間を持ち、新年の計画を立てたり、家族の絆を深めたりした。年賀状も重要で、紅白歌合戦が会話に上がったものである。
1996年、ダイエーとイトーヨーカドーが大手スーパーで初めて、全国規模で元日営業を開始した。この静けさを打ち破ったのであり、伝統的な商慣習や市民生活とのかかわりで注目されたのだ。
元日営業は実施する企業に働く労働者のみ関係することではない。関連企業やまわりの自営業者にも営業操業を余儀なくさせるなどその影響は決して小さくはない。元日営業は消費者ニーズの多様化にあわせたということなのだろうか。内実は企業の競争原理にあると言わざるを得ないだろう。
日本チェーンストア協会など業界団体は2003・2004年元日営業の自粛を要請された。2004年の際、元日営業は本来望ましくないと思うが、競争など経営上の理由で仕方なく追随して踏み切る店がある。法律で規制することも検討してほしいと述べている。
2009年頃から元日営業しても売上がそれほど伸びないことや経費がかかる点が認識されるようになった。さらに祝日の勤務に伴う従業員の福利厚生を理由に中小スーパーを中心に元日営業を取り止めるか、縮小する動きが広がってきている。
今年(2026年)はどうだったのだろう。イトーヨーカドーやイオンなどは通常通り元日営業を行っている。松屋は2024年から2日も休んでいて、年始は3日からの営業になる。高島屋も2025年から2日まで休業としており、そごうと西武は14年ぶりに全店舗で元日を休業にした。スーパーのサミット1日~3日を休業にした。コンビニはどうだろう。セプンーイレブンやファミリーマートは従来通り元日を含め24時間営業を継続している。一方、ローソンは店によって対応が異なる。ビジネス街にある店であれば、客は少ないだろう。
筆者は年始の休業が増えるのは良いことだと考える。年始は時間の流れをもっとゆっくりさせて、寛ごうではないか。
