くさや

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 今回はくさやがテーマである。
*初級:くさやの発祥地とされる伊豆諸島は次のどれか。
1) 八丈島、 2) 新島(にいじま)、 3) 神津島(こうづしま)

*中級:くさやに関する次の記述について、誤りが含まれるものはどれか。
1) くさやは長い歴史をもつ食品であり、江戸時代には献上品とされていた記録が残っている。魚河岸の間で「くさいからクサヤ」という名前がついたという説がある。
2) 干物の一種で、クサヤモロなどの新鮮な魚を「くさや液」と呼ばれる魚醤に似た独特の匂いや風味をもつ発酵液に浸潤させた後、これを天日干しにした食品である。
3) 当初は単純な塩水に浸けた魚を干したものだった。塩水を繰返し使って干物を造ったところ、魚の成分等が蓄積し、さらに微生物が作用することでくさや液ができた。
4) 塩は貴重なので、やむなく減った分だけ塩を足しながら塩水を使いまわした。できた干物は傷んでいるように見えたが、喫食できたので広まったという説がある。
5) くさや液は茶褐色の粘り気のある液体で魚醤に近い風味をもつ。塩分濃度は10~15%である。pHは6と弱酸性であり、含まれる窒素は揮発性塩基で占められている。

*上級:くさやは好ましくない臭気が存在する。具体的な物質について述べよ。


正答
*初級:くさやの発祥地とされる伊豆諸島が問題である。八丈島は大きな島のため、可能性が高い。神津島は黒曜石でよく知られており、これも可能性がある。
 しかし、正答は新島なのである。八丈島は新島からくさや液を分けてもらって始められたとの記録がある。

*中級:1)の歴史は正しく、江戸時代にまで遡ることができる。2)の製法も正しい。3)のくさや液の記述も問題ない。4)も同様である。
 したがって、5)が正答になる。くさや液は揮発性塩基が多いため、pHは弱酸性でなく弱アルカリ性なのである。塩分の記載は正しい。

*上級:全体として銀杏のような不快臭が存在する。1977年、くさやの身を水蒸気蒸留してガスクロマトグラム分析が行われた。その結果、臭気成分が多量に検出された。
 塩基性成分ではトリメチルアミン(魚臭、アンモニア臭を持つ)とアンモニアだった。窒素ガスでカルボニル成分を分離して分析した成分ではプロピオンアルデヒド(甘酸っぱさの中に焦げたような臭気)が強大であった。
 酸性成分ではn-酪酸(死臭や銀杏の臭気に含まれる不快臭を持つ)とプロピオン酸(短鎖脂肪酸の一種)だった。いずれにせよ、好ましい香りは存在しないが、これがくさやの特徴になっている。

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 https://yokoyama-food-enngineer.jimdosite.com/発酵食品もの知り講座

*中国ひとり歩記 本年 4月4日より連載再開
 https://www.foodwatch.jp/category/strategy/walkinginchina
*4/07日(株)テックデザイン「食品の腐敗変敗と防止対策」開催予定
*5/26日(株)テックデザイン「発酵食品の動向と新商品開発」開催予定
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