不妊治療のための通院を理由として解雇されたら不当解雇?(その2)
前回から、
不当解雇についての解説をしています
前回は、
そもも解雇とはなんなのか
解雇が可能な場合はどういう場合か
について、解説しました
前回の記事
今回は、
具体的に、
不妊治療のための解雇は、
不当解雇(違法)なのかどうか、
ということについて解説します
解雇が可能な場合とは
(前回のおさらい)
1️⃣ 解雇は、厳しい条件や手続きをクリアして、
初めて可能になる手段
2️⃣ 解雇には、普通解雇や懲戒解雇といった種類がある
3️⃣懲戒解雇派従業員に対する制裁の意味があるため、
その分懲戒解雇が認められる条件はとても厳しい
4️⃣ 普通解雇の場合でも解雇に客観的に合理的な理由が必要
5️⃣ 解雇が社会通念上相当であると認められる必要もある
6️⃣ 懲戒解雇の場合は、さらに以下のような厳しい条件が必要
懲戒事由及び懲戒の種類が就業規則に規定されていること
規定に該当する懲戒事由が存在すること
懲戒処分に際して弁明の機会の付与等の適正手続が実施されていること
など
不妊治療のための通院を原因とする解雇は認められる
それでは、
不妊治療の通院のために、
半休を取ったり、
遅刻や早退をしたことを理由として、
解雇された場合、
この解雇は有効なのでしょうか
結論
この理由のみでの解雇は不当解雇となる可能性が高い
理由
不妊治療の通院で、
遅刻や早退、半休を取ったとしても、
それが、無断での遅刻や欠勤などではない限りは、
それを理由として解雇するというのは、
上記の解雇が有効な場合の条件を、
満たすことが難しいのが通常でしょう
そもそも、
会社の所定の手続きに従って、
遅刻や早退、欠勤をしていれば、
本来は何ら問題の無い行為のはずです
もちろん、半休などの時間分については、
その時間働いていないため、
有給を使ったりしていない限りは、
欠勤控除(勤怠控除)として、
給与がその分支給されない、
ということはあるでしょう
ただ、
それを超えて、
解雇の理由にするというのは、
通常は難しいでしょう。
例えば、
無断早退・遅刻・欠勤を繰り返した場合に解雇事由とすることを、
就業規則で定めている会社は多いと思いますが、
きちんと事前に申請をしている遅刻・早退・半休について、
解雇理由として就業規則に明記している会社は、
ほとんどないと思います。
したがって、そもそも、
そのような解雇理由の規定がなければ、
解雇は認められません
次に、
仮に就業規則にそのような規定が存在していたとしても、
通院を理由とした解雇が認められるとは、考え難いでしょう
上述した通り、
解雇には、客観的に合理的な理由が必要です
通院のため、というのは、
それが本当に通院のためであれば、
それに配慮することが会社に通常は求められるでしょう。
なお、以前の記事でも言及した、
厚生労働省のパワハラ関係指針の中でも、
不妊治療に対する否定的な言動や、
通院のための制度を利用しにくいような職場風土を防ぐべき、
との考えが示されており、
こうした通院のための遅刻・早退・半休に対して、
職場としても可能な限り配慮すべきであると考えられます
したがって、
通院を理由として、
解雇理由に該当すると考えるのは、
通常は認められないでしょう
また、仮に、
通院等で現に業務に多大な支障が生じるのであれば、
職場としては、
解雇をするのではなく、
時短勤務への変更や、
配置転換などを検討し、
本人と良く協議すべきです
これらの対応や検討を怠り、
直ちに、解雇という選択肢を取った場合、
解雇が社会通念上相当であると認められず、
解雇が無効となる可能性が高いと考えられます
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