不妊治療のための通院を理由として解雇されたら不当解雇?
不妊治療に関するご相談を受ける中で、
お聞きすることが多いのが、
不妊治療のための通院と仕事の両立の難しさ
です
そもそも、
不妊治療をしていることを職場に伝えていない、
という方も多くいらっしゃると思います
ただ、
実際に治療をしていくと、
例えば、
採卵を適切なタイミングに行うために、
病院側から、
「明日の午前中に来てください」など、
急遽、通院日が決まることがあるため、
仕事の半休を急遽取ったりする、
ということがありますよね
そのため、
事前に職場の上司など、
必要最低限の人に、
治療を受けていることを伝えている、
という方もいらっしゃいますよね
今回から複数回に分けて、
不妊治療と仕事の両立に関して、
通院のために仕事の半休や、
遅刻、早退をしていることを理由として、
解雇されてしまった場合、
その解雇は有効なのか
ということについて解説します
初回の今回は、
そもも解雇とはなんなのか
解雇が可能な場合はどういう場合か
について、解説します
次回以降の記事で、
具体的に、
不妊治療のための解雇は、
不当解雇(違法)なのかどうか、
ということについて解説します
解雇とは(自主退職との違い)
まず初めに、
解雇というのは、
従業員の意思に関係なく、
会社が従業員との雇用契約を、
一方的に解消すること
を指します
ここで注意したいのは、
会社から、
退職を打診されること、
いわゆる
退職勧奨
は、
基本的には解雇ではない
ということです
会社側から、
退職を打診されて、
それを自ら承諾して、
退職届や退職願を、
提出した場合は、
解雇ではなく、
自主退職
という扱いになります
また、会社と合意書を交わして、
退職についてサインをして合意をした場合は、
合意退職
であり、
この場合もまた、
解雇ではありません
解雇の場合は、
解雇の有効性を争って、
解雇無効などの主張をすること
が考えられますが、
自主退職の場合は、
そもそも、解雇ではないため、
少なくとも
解雇無効の主張はできない
ということになります
ポイントは、
退職をすることになった際に、
自ら退職をする意思がない場合は、
自主退職や合意退職を内容とした書類には、
安易にサインをしない
ということです
よくわからない場合は、
事前に弁護士に相談することをおすすめします
安易な判断は避けるのが良いでしょう
解雇が可能な場合とは
解雇というのは、
本来は、
そうそう簡単にできるものではなく、
相当高いハードルがあります
残念ながら、
実際に解雇となっている中には、
本当は解雇が正当なものではなく、
違法なものもかなりの数含まれていると思います
解雇というのは、
そもそもいくつかの厳しい条件や手続きをクリアして、
初めて可能になる手段です
解雇には、
普通解雇や、
懲戒解雇といった種類があり、
懲戒解雇は、
従業員に対する制裁の意味がありますので、
その分
懲戒解雇が認められる条件は、
とても厳しいもの
です
なお、解雇の中には、
整理解雇(いわゆるリストラ)
もありますが、
条件が異なるため、
今回は割愛します
まず、
普通解雇の場合でも、
解雇の理由が、
客観的に合理的な理由
でなければなりません
解雇になる基準として、
会社の就業規則等に、
普通解雇となる事由の記載があるのが一般的のため、
この普通解雇となる事由に該当するかどうか、
が1つの目安となります
ただし、必ずしも、
上記の事由に該当したらOK
ということではありません
上記の通り、
客観的に合理的な理由かどうか、
が個別に判断されます
例えば、
会社の就業規則に、
3回遅刻したら普通解雇
と書いてあったとして、
実際に3回遅刻してしまったとしたら、
一応、会社の規定では普通解雇に該当するように見えますが、
一般的には、
これで直ちに解雇とするのは、
有効とは言えないのではないか、
と考えられるでしょう
(もちろん職種や状況により異なりますが、
一律に解雇有効とするのは、
難しいでしょう)
また、
解雇は、
社会通念上相当である
と認められる必要があります
例えば、
ある従業員が配属された部署で、
どうしても仕事が上手くいかないことが続く場合に、
勤務不良を理由として、
直ちに解雇するのではなく、
会社としては、
配置転換(別の業務への変更)
など、
可能な対策を尽くすべき
とされているのです
それでもどうしても改善がされなかったり、
従業員が真面目に仕事をしない場合など、
やむを得ない場合に、
ようやく解雇が可能とされています
さらに、
懲戒解雇の場合は、
この様な普通解雇の条件に加えて、
懲戒事由及び懲戒の種類が就業規則に規定されていること
規定に該当する懲戒事由が存在すること
懲戒処分に際して弁明の機会の付与等の適正手続が実施されていること
といった、
さらに厳しい条件が必要とされています。
特に、適正手続が実施される必要があるという点が、
仮に、懲戒解雇相当の理由があったとしても、
ちゃんとした手続きを踏んでいないと、
解雇が無効になってしまうリスクがある、
ということです
以上の通り、
解雇には、
高いハードルがあることが通常です
解雇が有効かどうか、
解雇するためにはどの様な手順が必要か、
ということについて悩む様であれば、
弁護士に相談、確認するのが良いでしょう
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