可能性 | たった一度の人生、自分の好きな色に塗ればいい

中一の11月に道場内で行われた月例試合、普段はトーナメント戦でする事が多かったが、その日は来ていた人数が少なく、総当たり戦をする事になった。
5試合行い、全試合立ち技で一本負けした。その内の3試合は開始直後に秒殺負け。残り2試合も多分1分持たずに負けたと思う。他の人の結果も含めてその日の試合の事は今でも全て覚えている。
負け癖がついてしまっていて悔しいという気持ちがそれほど湧かず、潮時だと思った。
試合後、先生の一人に「お前も可能性はあるぞ」と言われた。ある程度抵抗して負けたという内容ではない。全て一方的な敗戦。「あの結果のどこに可能性が?」と思った。
その道場は3ヵ月後の2月に去った。もうこれ以上続けても強くならない、見切りを付ける事も必要だと思った。しばらく柔道から離れたが、離れたからこそ見えたものがあった。内部にいた時には気付かなかった、外の立場から見た柔道の魅力がそこにあった。
やはり柔道が諦めきれず、5月から別の道場に通い始めた。強豪道場で練習も厳しく、周りのレベルも凄かった。初日の練習の帰り道は泣きながら帰った。帰宅後も号泣した。
7月の中体連で前の道場の人と顔を合わせた際に「まだ柔道やってたの!?」と言われた。一度目の道場は逃げたのと変わらない。そう言われるのは無理も無い。
二度目の道場も一年程度で辞めた。今度こそもう柔道は終わりだと思った。だが高校では柔道部に入った。その後も大会の時に「まだ柔道やってたの?」って聞かれたなあ。

「昔、柔道やってたんだよ」「へ~黒帯?」「いや黒帯になる前に辞めたよ」「なんだ、黒帯じゃないのか(苦笑)」「昇段審査は受けなかったけど、受けてたら黒帯になれていたよ」
将来このような会話をする事は自分自身に対して許せなかった。高一の時に初段取得した時の気持ち、生涯忘れない。
普通なら一度目に道場を辞めた時点でもう柔道はしないだろうし、5試合オール一本負けもただの嫌な思い出だろうけど、僕はそうは捉えていない。その先へとつながる大切な思い出だと思っている。
高校の部活を引退してから10年間柔道はしていなかったが、熱意は完全には消えていなかった。そして28歳の時に再開。客観的に見たらもういい加減にしたら?という感じだろうし、僕も僕みたいな人が周囲にいたらきっとそう思うだろう。でも人がどう思うかはどうでもいい。

あの時に先生が言っていた可能性、まだまだ諦めてはいない。