みんな元気ですか
続きさ
僕たちの脳の中に静かな、
しかし確かな変化が起きていた。
やまとはぼんやりと考えていた。
この脳の変化はおそらく自分に
想像もつかない新しい世界のとびら
を開いてくれる事になるだろう。
そしてこれがすべて今までに気にも
留めていなかった
呼吸と関係している。
感情が乱れると呼吸が乱れる。
しかし呼吸を変えることによって脳に
これほどの変化が起きるとは。
呼吸の持つ意味は自分が考えている
以上に大きいのかもしれない。
イルカたちに案内されて
海にはいる事にした。
最初に栞とやまとそれに
教授とジョアンが潜る。
ダンが船に残る。
潜水をするときには必ず誰かが
船に残り何かの時のために備える。
ダンがその役をかって出てくれた。
やまとたちは潜水を開始した瞬間に
不思議な体験をする。
彼らの呼吸はまだイルカ(精霊)
に同調したまま。
今までに潜った時には遺跡は
ある意味遺跡の残骸のようなもの
として目に映っていた。
今回はまるで光景が違って見える。
あたかも遺跡が目の前にすべて
よみがえったような景観が広がる。
そこにいる全員がこれがイルカ(精霊)
のくれた能力のおかげだと気付いていた。
みんながその景色に驚いていると
すぐにイルカが脳内ビジョン通信で
説明をしてくれた。
「これは遺跡が持ついわば
生体オーラのようなもの。
この遺跡が人と共にあった時には
遺跡は生きて命を持っていました。
そして何万年経ったいまも彼らは
その命の光の残像を伝えているのです。
いまあなた達は遺跡を見ているのではなく
遺跡の命の痕跡を見ているのです。
この遺跡は特に神殿のような目的があり
単なる生活のための建物
ではありませんでした。
このためこの遺跡は特殊なオーラを
いまだに発しています。」
続いて精霊の姿をとるイルカは
再び説明を始める。
「この遺跡は今の地球上のどの
遺跡にも似ているものはありません。
しいていえばスペインのアンダルシア地方
に残るアルハンブラ宮殿のような
施設を持っていました。
アルハンブラは宮殿のほかに
祈りの場所や病院や図書館や学校や
その他の複合的な公共施設から
成り立っていました。
アルハンブラはイスラム文明の
出先の都市でした。
イスラムの中心は北アフリカに
ありましたがアルハンブラは
ヨーロッパに目を向けた
いわばイスラムの玄関の
ような都市だったのです。
この海底遺跡も当時の首都アスカの
出先の都市でした。
アスカは当時日本にとても
関心を持っていたのです。
だからこの都市には日本に対しての
玄関の意味と、アスカの文明の
すべての謎を解くカギが隠されています。
この都市を通じてたくさんの叡智と
知識が世界中にもたらされました。
ちょうどアルハンブラが
中世ヨーロッパに対して
多くのより進んだ智慧と知識
をもたらしたように。
ここには都市に必要なほとんどの
施設がそろっていました。
礼拝の場所や図書館や病院や学校など。」
やまとたちにはその施設の概要
(のオーラ)が
おぼろげながら見えていた。
このあたりの海の透明度は
世界中の海の中でもかなり高いが
それでも見渡せるのは太陽の光の下で
およそ周囲50メートルが限界。
しかしその見えている範囲の光景
だけでも彼らにはその威容を
感じるには充分すぎるほどだった。
点在する大きな建物。
その施設の周りを取り囲む豊かな森。
すべてが水の動きに合わせる
ように揺れている。
イメージの中で絵を見るように。
やまと達は息をのむその威容に
圧倒されていた。
しかし実際に息をのむ
わけにはいかない・・・あは!
海の中だし・・・
それに全員の呼吸がイルカ
(精霊)と同調していた。
やまとはちらっと教授を見る。
彼がこの光景をどれほどの思いで
見つめているか痛いほどわかる。
その学術的価値は計り知れない。
しかしこの光景は記録に
残すことは出来ない。
なぜなら、幻影を見ているのだから。
出来るのは、記憶に残す事だけ。
しかしやまとたちはそれが記憶
だけで終わらない事を
後で知る事になる。
この続きはまたね
あっちさす~い、こっちさす~いと
海底遺跡をしっかり見て回る僕・・・
おいらはイルカでし