別れの日の一週間前くらいだったか、彼女と揉めたことがある。
その後、仲直りをした際、 バレンタインデーの日、さようならと言って
書置きをしていなくなるんじゃない?とか冗談を言って笑った。
彼女はその時、そんなことはないよ、いつまでも一緒だよ と言ってくれた。
しかし、それが本当になってしまった。
彼女が去って、
死ぬだの死なないだの、ひどい文章を彼女にメールした。
彼女の心の傷を考える余裕もなく、ただ勝手に自分勝手なことだけメールした。
今考えると、彼女の気持ちを考えると、とてもやりきれない。
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2月15日。
彼女の居場所はつかめないまま、もしかしたら実家に帰っているんじゃないかと思って
彼女の実家近くの駅に向かった。僕の住む町から高速を使っても1時間半ほどかかる。
僕はその時、どうやってそこに向かったのか記憶がない。
駅に着いた。
彼女の携帯にメールした。
するとお父さんから電話がかかってきて、娘は今、会いたくないと言っている
そっとしておいてほしい と言われ、 何かあったのかと聞くと、状況を把握
出来ていないので、わからないと言われた。
ぼくは帰路に付いた。
彼女に、もう2度と会えません とか酷いメールを残して。
もう、絶望だと思い、死に場所を探して歩いた。
彼女と出会ったころ、よく行っていた、通称 あの浜 に行った。
思い出が多すぎて、彼女との思い出が多すぎて、その場所では死にきれなかった。
僕は生まれ故郷に帰って、生涯に幕を閉じる決心をして、車を走らせた。
高速道路を走行中、壁に突っ込んだら楽になれるかもと、何度も思った。
気が付いたら、地元の海に架かる橋のたもとにいた。
ここで入水したら楽になれるかと考えた。
しかしここでも、何度となく彼女と通った橋を見上げると、彼女とした会話、
笑顔を思い出し、死にきれなかった。
僕はもう、自分の生まれた実家で、生涯を終えようと、考えた。
実家に着いた。
鍵を持ってくるのを忘れて、中に入れなかった。
玄関先の軒下に、ロープをかけて、死ぬ準備をした。
郵便ポストの中に墓参りから持って帰っておいておいた線香に火をつけ
彼女に宛てた遺書をしたためた。
実際に書いたもの
僕は最後に彼女に、誤解を招くようなことをしたことと、
彼女の青春を奪ったことを考えながらロープを軒にかけて
首にかけようとした。
思い出が交錯した。
この家で、彼女と何度も寝泊まりした。
楽しいことも悲しいことも、互いに話し合い、解決してきた。
ちょうど風呂場の前なので、彼女と一緒に風呂に入り、
お互いの体を流し合ったりしたことを思い出した。
そんなことを考えているうちに
家の前の神社にお参りしようとした近所の人が
僕の様子がおかしいと、母屋にいる父親に連絡したらしく
父親が飛んできた。
僕は父親に抱えられ、母屋に入った。
すべてを話した。
父親はすべてを聞いてくれた。
僕は父親に 死に場所がない。・・・と言ったらしい
冷静になって考えてみると
死ぬより、今後の彼女の幸せを願うほうが、誠意をもって償いができるんじゃないかと
思った。
今でも彼女のことは大好きだし、できれば元に戻りたい。
でも多分、もう僕のもとに戻ってくることはないだろう。