オリジナルメンバーがひとりも居なくなったイエスによるセカンド・アルバム『ミラー・トゥ・ザ・スカイ』を聴きました。



今回は初めて発売日に国内盤を買わず、安い輸入盤のデジパック2CDをアマゾンでオーダーしました。我ながら期待値が低いのを自覚しています。すいません。だからブツはまだ届いていません。しかし発売日にYouTubeアルバム全曲が公開されました(クリック) なんて太っ腹でしょう。



事前にシングル2曲をYouTubeで聴き、そして欧米のレヴューを読みまくった結果、もうすっかり聴いた気分になって、聴く前から以下のような先入感を持っていました。


 本編はたった6曲収録なのに、どうも期待できそうな曲は「Mirror To The Sky」一曲だけではなかろうか。

②「ロック」している曲は今回もあまりなさそう。

 デイヴィソンが関わった曲はつまらなさそう。

 デイヴィソンの書く歌詞は陳腐すぎる。

 ダウンズが曲作りにあまり貢献してなさそう。

 ダウンズが弾いてなさそう。

 アランが居なくなって、前回の来日公演で「不思議なお話を」でぶっ叩いていたシェレンが不安。

 レヴューを読む限り、最悪と評価された『ヘヴン&アース』よりはましのよう。(当たり前?)前作『ザ・クエスト』よりは少しよくなったらしい。(本当?)

 ボーナス・ディスクに期待しちゃいけなさそう。

 それにロジャー・ディーンのアートワーク(宇宙)が今回はつまらない、と思っていました。


また最近、我ながらデイヴィソンに対する評価がダダ下がり、というのも個人的にはありました。

「ものまね」は上手いけど、彼の書く曲がつまらない、とか、やはりヴォーカルにパワーがない、とかです(すいません2)

ハウはイエスでは共作が活きる人だと思うのですが、かわいがっているデイヴィソン以外、これという共作者も見当たりません。

そんなこんなで疑心暗鬼で聴きました。


 Cut From The Stars

以前初めて聴いた時オケのイントロに驚きました。事前に聴いていたわけですが、アルバムを通して聴くとそれなりに良い曲に聞こえます。ロックしてますし、クリスみたいなベースもシンセソロも聞こえます。

エンディングはちょっと尻切れです。

これが今のイエスと思わなきゃいけません。


 All Connected

これも事前に聴いていた曲ですが、最初に聴いたときは出だしのギターメロが小林旭さんの「熱き心に」に聞こえました(苦笑)

途中から展開が変わり、デイヴィソンの明るいヴォーカルが合っていると思います。コーラスも悪くありません。

ただ9分もある曲なので、もっとインスト部が多かったほうがもっと良くなったのにと、無いものねだりをしてしまいます。

ハモンドは控えめに聞こえます。終始ギターが目立ちます。結局演奏は白熱することなく、すんなり終わります。


結局全部聴いてみたら、事前公開された2曲は、このアルバムの中でもキーになる曲だったとわかりました。


 Luminosity

イントロのギターが好きです。

中間部のヴォーカルパートはちょっとダレます。でもコーラスの作りはよい感じです。

これが今のイエスで、ロックはしてないけど、終盤にハウのギターが聴けるから、まあよしとしましょう。オケのアレンジもよくできています。

エンディングのドラマチックな盛り上げが、今ハウがやりたいことなのでしょうね。

ただ悪くはないけど、無理やりつないで9分にしたという感じ。


 Living Out Their Dream

面白い曲です。

でもプログレじゃないし、70年代に聴いたら絶対にイエスとは思わなかったな。

デイヴィソンの低い声がちょっと聞き辛い。

終盤のギターサウンドはハウらしいです。

本編にはこの曲に代えて「Unknown Place」を入れる意見に賛成。

でも、アルバムトータルの中では少し変化を入れてチェンジ・オブ・ペースをするアクセントの役割を果たしていると思います。


 Mirror To The Sky

レヴューを読んで、一番期待していた曲です。ギターのイントロは重い感じだけど、だんだんアンサンブルにはいるとハモンドも聞けて、らしくなります。

Turbulence』収録曲のようなギターリフから前半はハウらしいエレキギター。唐突に曲調が変わってオケをバックにヴォーカル部になります。ハウのエレキギターとオケが盛り上げ、また曲調が徐々に変わってヴォーカルに戻ります。中間部からはハウのエレキとオケのインスト。

ハウは大活躍だけどデイヴィソンのヴォーカルにイマイチ感情移入できません。

終盤は美しい展開だけど、オケで盛り上げるのはイエスらしくない、とも思います。

あくまでも「ノスタルジックな」イエスファンの好みですけど。

シャーウッドのクリスっぽいベースが聞こえます。地味ながら堅実です。

終盤オケを使いすぎだと思いました。

最後もハウのギターが活躍してお終い。

長い曲だけど、ツギハギ感が目立ちました。

決して悪い出来ではありませんが、事前の期待が大きすぎました。


 Circles of Time

あっという間に本編最後の曲。

デイヴィソンらしいヴォーカルとギターのスローな曲。悪くはないけど、いつものデイヴィソン節です。ただし、ヴォーカル部はずっと一本調子です。

スチールギターのサウンドは好きです。

終盤にハウらしいアコギが入るのはマル。

こんな美しい曲が好きな人もいるでしょうね。


ボーナストラック

 Unknown Place

ハウらしい8分を超える曲。ハウのヴォーカルもよく聞こえます。

チャーチオルガンを聴いて初めてダウンズを感じました。

出来は悪くはないですが、ちょっと長め。

本編に入れてもよい曲だと思いました。


 One Second Is Enough

珍しくキーボードから始まる曲。

ポップで乗りも良い曲だけど、プログレではないよねー。

終盤のエレキはハウらしいサウンド。

想像していたほど悪くはありませんでした。


 Magic Portion

軽快なギターで始まる曲。

イエスというより、ハウのソロアルバムにピッタリな曲ではないかと思います。


結局これが今のイエスだと思って聴けば、決して悪いアルバムではないのですが、あえて「イエス」を名乗っているので、間違っているとわかっていても、ついつい無いものねだりをしてしまいます。

ノスタルジーに浸らず聴けば、事前に想像したほど悪いアルバムではありませんでした。


前作と同様「ハウ節」が炸裂しています。

サウンド的にもハウばかりが全面に出るのではなく、もっとアンサンブル重視のサウンドが聴きたいです。それにオーケストラも二作品続くと、さすがに飽きました。

できればハウお気に入りのオケを使いすぎずに、キーボードをもっと弾き倒してくれればもっとロックアルバムになったのに、と前作に似た感想になりました。

これがハウのソロアルバムなら100点💯です。


ヴァイナルでのリリースを意識したせいか、収録時間が短いし、ボーナス含めて1CDにして売ってくれればよいのに、と思います。

(輸入盤プラケース仕様は、本編のみの1CDになっています)





関連記事 :