オリヴァー・ウェイクマン・インタビュー(抜粋)


メジャーリリースはされませんでした


20191223

By Andy BurnsBiff Bam Pop!


このプロジェクトが実現できた経緯を教えてください。


引っ越そうとしていたとき、ツアーマネージャーだったポール・シルヴェイラからメールがあり、クリスがその日の朝に亡くなったと知らされた。

バンドを脱退するとき、彼らは私が一緒に制作していた曲のレコーディングセッションのファイルをDVDで送ってくれていた。

それで引っ越したら、それを聴いて使えるものがあるかどうか確認しようと思ったんだ。

Gift Of Love」はクリスと書いた曲が元になっているからファイルを開いて、すべてのテイクを調べて、何があるか確認するのに多くの時間を費やした。

キーボードのパートを追加したり、ヴォーカルを追加したりしたが、トラックの大部分はオリジナルのセッションからあったものだ。

クリスを偲んでこの作品を作ることにしたんだ。

また、自分のためにイエスの作品を作ることで、ツアーだけでなく、クリエイティブなレコーディングのラインナップであったことを常に覚えておこうと思った。長い間この曲は私だけのイエスのトラックだった。

それから数年が経ち、「Gift Of Love」を何度も聴き続け、「イエスの未発表の新曲を聴いていて、とても気に入った」というツイートをしたところ、イエスのマネジメントから連絡があった。

電話をして、どのようにリリースするか検討した。私がすべてのトラックを形にし、スティーヴ・ハウとミーティングをして、このプロジェクトについて話すのがベストだということになって、ラフミックスをしてからスティーヴと会い、リリースするための選択肢について話し合い、最終的に合意に至った。


この30年間でバンドの最も優れた作品に思えました。当時、キーボード奏者なしで録音した『Magnification』以来、スタジオに入っていませんでした。創作の過程で自分の楽器を強調することの重要性について議論されたことはありましたか?


強いイエスの音楽だと思ってもらえるのは素晴らしいね。出来栄えにはとても満足しているよ。

制作しているときは、自分たちが持っている最高の素材を持ち込めるかどうかを確認することにしていた。かなりいろいろな作品を持っていった。

いい曲だけど、イエスのアレンジには向かないということで、途中で捨てたものもある。でも、その中にはイエスのようなアレンジができそうな曲もいくつかあった。

年ほどツアーをしていて、クリスはレコーディングを始めたがっていたが、スティーヴはレコーディングを始める前に、もう少しツアーで時間をかけて、私たちが完全に融合していることを確認することを望んだ。

ある楽器を強調するような特別な狙いはなかった。ただ、最高のレコードを作ることが目的だったんだ。


スティーヴ、クリス、アランと一緒にスタジオに入ったとき、新しいイエスの音楽を作るにあたって、怖さはなかったのでしょうか?


特になかったね。長い間一緒に仕事をしてきたし、一緒に過ごす時間も長かったし、お互いに居心地が良かったから、自然な流れでできたんだと思う。

私はイエスの世界に馴染んでいたし、スティーヴとは以前から何度も一緒に仕事をしていた。

最初はイエスの35周年記念盤で、それから私のアルバム『3 Ages Of Magick』で一緒に仕事をした。

また、彼のアルバム『Spectrum』ではキーボードを担当した。だから、過去に一緒に仕事をした時間はかなり長かったんだ。

また、クリスと彼の奥さんのスコッティと一緒に過ごす時間が多かったので、彼とはとても気が合った。

アランと私はサウンドチェックで多くの時間をジャムりながらアイデアを出し合い、そのうちのいくつかはアルバム『Fly From Here』に収録された。例えば、「Into The Storm」のコーラスは、サウンドチェックの時にアランと一緒に考えたもので、この曲のエンディングのインストゥルメンタルセクションも私が考えたものだ。

私の頭の中にあったのは、「最高の曲を持ってきて、最高の演奏をすること」だけだった。



To The Moment」には素晴らしいイントロ、クラシックなキーボードの音、べノワのヴォーカル、そしてジョン・アンダーソンが確立したイエスのサウンドなど、イエスの真髄がたくさん詰まっています。構想から最終バージョンに至るまでを教えてください。


この曲は、家族を養うためにツアーで一定期間家を空けるが、子どもは置き去りにされる、子どもにとって、親がいない理由を理解するのは難しい、ということをテーマに書いたものだ。自宅でかなり長い間制作し、歌詞のバージョンも何種類か作った。

スタジオに入ったとき、冒頭のリフを軽くして、ギター、キーボード、ベースがコール&レスポンスをするようなアイデアを思いついた。最後のキーボード・ソロでは、そのリフのバリエーションを曲の最後の数音で演奏して楽しんだよ。


Words On A Page」はどのようにして生まれたのでしょう?


最高のイエスの音楽は、伝統的なコードに基づく音楽ではなく、すべての楽器がラインを演奏する音楽を書いたときに生まれたと思う。

そして、そのラインが一体となって曲のコードやフィーリングを作り出し、結果的に楽器の美しいアレンジが曲の個性を際立たせることになる。

Words On A Page」は、このようなアプローチで作りたかった。

歌詞はイエスのスタイルで書きたいとは思っていたが、ただジョンの真似をして、ジョンのように聞こえるようにするために、エスプリの効いた言葉を書いたり、変わった言葉を書いたりするのは避けたいと思っていた。

そこで、誰かが本を読んでいる様子を歌にすることを思いついた。本の中で、素晴らしい非日常的なフレーズや場所を作り出すことができるのだが、それはすべて、本を読むことによって思い浮かぶ思考に基づいている。曲のアイデアはそこから生まれた。

スティーヴにペダルスティールギターを持ってないか聞いたのを覚えている。彼にソロをお願いしたんだが、スティーヴが今までやったソロの中で一番好きだ。


べノワの自然な声質が強調されています。

また、この曲はあなたと彼の2人だけで構成されています。もともとこのような意図で作られたのでしょうか?


レコーディング・セッションの途中で、みんなが数日間スタジオから離れることにした。でも、スティーヴと私はイギリスに住んでいたから、家にいられるのは1日か2日しかないのでロサンゼルスに滞在した。

べノワがアコースティックギターを置いていったので、ギターで曲を作ってみようと思った。私はギターを弾くとき、あまり理論的なアプローチなしで楽器に接するので、この曲は完全にメロディで動くようにすることができた。

バンドに聴かせたら気に入ってくれて、2010年末の南米ツアーから戻ってきたら、この曲を検討するつもりだった。

しかし、トレヴァー・ホーンが加入し、バンドをジェフ・ダウンズと一緒に仕事をする方向に持っていったので、結局全員揃うことはなかった。

この曲をゴードン・ギルトラップと一緒に作ったアルバム『Ravens And Lullabies』で演奏したよ。そのアルバムではフルバンドアレンジだが、イエスではピアノを主体としたアレンジにする予定だった。

そこで、アルバム『Ravens』に収録されているベノアのヴォーカルに、スタジオで制作したピアノパートを加え、他のメンバーとともに制作することになった。ピアノとヴォーカルのバージョンはとても気に入っている。


The Gift Of Love」は、このアルバムの中で最も長い曲です。意識的に長い曲を作ろうという話し合いがあったのでしょうか?


The Gift Of Love」は、クリスの曲と私の曲の2つから始まった。クリスはべノワと一緒に自分のパートの歌詞を考え、私たちは2つのパートをつなぎ合わせた。その後バンドのメンバーも加わって、新しいパートやアレンジ、ソロを追加していった。アレンジのアイデアやキーの変更、テーマに沿ったさまざまなメロディーのバリエーションを経て、どんどん発展していったんだ。

アランと私はいくつかのアイデアを練っていたので、そのアイデアをイントロにアレンジする作業を始め、イントロが出来上がったところで、イントロをエンディングとしてやり直し、その上にさらにテーマを演奏するのがいいと思ったんだ。

本当に素晴らしいコラボレーションで、有機的なイエスらしい展開と成長を遂げた作品になった。


The Gift Of Love」は、イエスの2014年の楽曲「The Game」に収録された要素もありますね。そのことをご存知でしたか?


From A Page』がリリースされるまでは、「The Game」は聞いたことがなかった。

From A Page』がリリースされて、クリスのパートのコード構成が再利用されていると誰かが言っていたのを聞いて初めて知ったんだ。



ボックスセットには『Live From Lyon』も収録されています。イエスのデビューとなったそのライヴは、どんな思い出ですか?


最初のライヴはとてもはっきり覚えているよ。少し緊張したが、とても楽しかったし、ファンはとても応援してくれて、フレンドリーだった。リハーサルは2週間ほどしかしていなかったので、覚えることがたくさんあったが、すべてうまくいった。あのツアーはどの瞬間も楽しかったし、とても幸せな思い出になったよ。


このラインナップで私が気に入ったことのひとつは、ついに『ドラマ』の楽曲を聴くことができたことです。


『ドラマ』からの曲は、長い間なかったので、バンドはとても熱心に演奏していたのを覚えている。ジョン・アンダーソンは歌ったことがなかったので、べノワと私がバンドにいることで、これらの曲を久しぶりに演奏する絶好の機会になった。

演奏も楽しかったし、ジェフ・ダウンズがどのようにキーボードを演奏しているのかを学ばなければならなかった。

実際、このツアーでは、さまざまなキーボードプレイヤーのスタイルを学びながら、自分の個性も少しずつ加えていった。これはとても楽しいことで、勉強になった。

また、久しぶりに聴くイエスの歴史的な楽曲に対するファンの反応を見ることができたのもよかった。特に、スティーヴがギターソロの最後をピーター・バンクス風に弾いているのを聴けたのは嬉しかったね。


最終的にこのコレクションは、美しくキュレーションされ、作り上げられました。

イエスでの活動やレコーディングをどのように振り返っていますか?


とても幸せな思い出がある。バンドと一緒に仕事をするのが楽しくて、一緒にロードに出るのが楽しくて、スタジオで仕事をするのが本当に楽しかった。バンドにいる間にレコードを出すことができなかったことをずっと後悔しているけれど、『From A Page』がそれを少しでも解消してくれることを願っている。また、ベノワと私がクリスやスティーヴ、アランと一緒にスタジオで作業したときのイエスのサウンドがどんなものだったかを、ファンの皆さんに知ってもらうことができる。

とてもハッピーでクリエイティブな時期で、そのすべてが大好きだった。


最後にクリスの思い出を聞かせてください。


2009年のツアーで、ヨーロッパを回ったときのことだ。一緒にツアーバスで移動した。

クリスと私だけが起きていて、これから作る新しい音楽について何時間も話していた。

クリスがべノワと一緒に新しい音楽を作ろうと意気込んでいるのを聞いて、とても刺激になった。

特に覚えているのは、彼が私を見てこう言ったことだ。「イエスのレパートリーの中で、このメンバーで演奏できない曲は1曲もないと思う」私はそれをとてつもない賛辞として受け止め、その言葉はずっと心に残っている。

彼がいなくなってとても寂しいし、彼との仕事は本当に楽しかった。

彼が亡くなったとき、「今度、空で大きな雷が鳴ったら、クリスはどこかにいて、リッケンバッカーをつないでいるんだろうな」と思ったのを覚えている。


出典と全文:

https://biffbampop.com/2019/12/23/exclusive-oliver-wakeman-discusses-the-new-yes-box-set-from-a-page/



◾️オリヴァーはイエスサウンドの特徴と魅力をよく理解していますね。

最近のイエスの新作よりイエスらしい作品だと言うと叱られるかな。

もう聴けないクリスの入ったヴォーカル・ハーモニーも素晴らしいです。


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