シモーヌ・ヴェイユと、ティク・ナットハン

1970年代、良く読みました。

感謝です。

 

シモーヌ・ヴェイユは、自殺のようなものでした。

キリスト教の洗礼を、拒んでいたように、記憶しています。

 

 

 

 

 

 

或る日のこと | 書き散らしの記 (ameblo.jp)

 

感謝です。

 

「中国禅」「臨済正宗」

ヴェトナムの禅僧・・・

・・・「白隠禅」の「正念・持続」の実践、

 

ティク・ナット・ハン(注 釈・一行)

の「ビーイング・ピース/ほほえみが人を動かす」

・・・

 

シモーヌ・ヴェイユ」に関する新書版

 

 

たとえこの身が汚泥となりはてようと、なにひとつ穢さずにいたい──

絶え間なく人間を襲う不幸=重力と、重力によって自らの魂を低めざるをえない人間。

善・美・意味から引きはがされた真空状態で、恩寵のみが穢れを免れる道を示す。

戦火の中でも、究極の純粋さを志向したヴェイユの深い内省の書。

その生の声を伝える雑記帳(カイエ)からの新校訂版。

 

==或る書評より

・神秘主義者であり社会運動家であったシモーヌ・ヴェイユを語る時「純粋培養」という単語が使われることがある。
たしかに彼女は重力(肉体性、自我、自我が産み出すシステム全体…)を憎悪し、重力からの脱却を試み、生涯貫き自己無化(自己消滅)の方向へと一直線に進んだ。

そこにはカタリ派、グノーシス的傾向がはっきり感じられる。
シモーヌ・ヴェイユの摂食拒否による死は、まるでカタリ派(生存拒否)そのものであったように思う。
またユダ福音書中のイエス(購罪の死ではなく、肉体拒否としての死)を想像させる。

・また彼女の社会運動は、社会の底辺に生きる人々に希望を与えるとか、援助するとか、改革するとかいったような類いのものではなかった。

どこまでも底辺へと堕ち、底辺の人々と共に苦しむだけ苦しみ、そこに美しさを見いだそうとした。
何しろ「何を行おうと悪でしかありえない。わたしが消滅しないかぎり。」

これは現代のキリスト者にも一部見られる「受難(苦難)礼讚」「滅びの美学」にも似ているけれど、シモーヌ・ヴェイユは「来るべき天国」を待ち望んではいなかったし、「来るべき天国」は妄想以外の何物でもないとした。

「わたしは消滅するだけでよい…完璧なる愛の合一が存在するだろう」、まさに自らの思想どおりの生涯の終え方をした。

・シモーヌ・ヴェイユが、もし重力を敵に回し戦闘の道を行かず、
重力との調和・和解・受容の道を進んだならどうであったろう ? と私は妄想する。

自己無化の道でなく、自己新生(再復活、聖変化…モーリス・ズンデルやダグラス・ハーディングのように)の道を発見できたなら?と妄想してしまう。

・しかしながら、こんなにも興奮して書物を読んだのは久し振りで、
それはいったい全体、何がそうさせたのだろう。?
何に引き付けられたのだろう?
何に頭をガツンとやられたのだろう?

以下、本書から引用。

◆ われわれが神は実在しないと考え、
なおかつ神を愛するなら、
神はその実在を現すだろう。

◆ 浄めのひとつの様態。
神は存在しないのだと考えて祈ること。

◆ どうしようもなく、神を欠く、
そのかぎりにおいて、
この世界は神そのものである。

◆どこまでも神を欠く世界は、その壮絶な美しさを啓示する。

◆ 愛すべきものがない。
これこそ神の愛の証である。

◆ 奴隷は 何もしていない。

やはり 何もしていない。

◆ 観照においては愛、

行動においては隷従、
これが神との正しい関係である。

愛にみちた観照のうちに
奴隷として行動するのであって、

愛するもののために行動するのではない。

◆飢えている者に糧を、裸でいる人に衣服を与えずにいられない、そういう心境にあったのであって、
キリストのためにそうしたのではない。

◆ 愛ゆえに存在するのをやめなければならない。

わたしは消滅するだけでよい。
そうすれば、わたしが踏みしめる大地、わたしが潮騒を聴く海 … と、神のあいだには完璧なる愛の合一が存在するだろう。

◆ わたしは自身の苦しみを愛さねばならない。
有益だからでなく、そこに在るからだ。

身体的苦痛のいっそう大いなる純粋さ。

だから民衆にはいっそう大いなる尊厳がある。

◆ 善を行う。わたしが何をやっても、それは善でないことを、わたしはこのうえなく明晰に知っている。「神のみが善き方である。」
あらゆる状況において、何をやっても、ひとは悪を行う。

『重力と恩寵』

・自己無化か?自己新生か?は、古来キリスト教でも仏教でも扱われてきたテーマの一つではあるが…、

そんなものがどうでもよくなってしまうほどにシモーヌ・ヴェイユに引き付けられてしまった。

一点のごまかしもない「潔さ」ゆえか? まるで微かな欺瞞さえもえぐり削ぐようなクリスタルかダイヤモンド製ナイフのような「鋭さ」ゆえか?

しかし…真空に流入してくる、180度逆転してしまった"それ"は、「出て行け。」「山を下りよ。」と強くけしかける … 。

深い熟睡への欲求、永遠に留まりたくも、聖霊の風に、押し出されてしまう…。

最後に… 493箇所もの訳注をつけて解説する訳者の情熱には、頭が下がると共に謝意を感ぜずにはいられない。

 

 

==或る書評より

本書は『シモーヌヴェイユ・カイエ(雑記帳)』の断章を、
抜粋・分類・編集して表題を与えた別書『重力と恩寵(ティボン訳)』の内容に沿う形で、
ティボン訳で部分的に省略されている、
下記内容を訳注として数百項目挙げている書である。
 ・古代神話(プラトン、ギリシャ悲劇、メソポタミア、エジプト、インド)
 ・東方の宗教(仏教、道教、禅、ウパニシャッド『バガヴァッド・ギーター』)
 ・カタリ派異端、詩(オック語文明圏、吟遊詩人)
 ・哲学的言説(デカルト、カント、スピノザ、ヘーゲルなど)(445)

「ヴェイユの思想をできるだけ忠実に反映すること」を試みる目的をもつ本書は、
工場労働などの現場の経験を通じて、
世界の構造と歴史の原初を考察しながら、
「宗教の起源と派生、簒奪のサイクルの歴史」と、
「哲学的言説の起源と派生」の歴史を解体するヴェイユさんの魂が、
下記のような形で記録として残されている。
 ・思考の軌跡、論文の要旨、古典の抜粋
 ・備忘録、読書記録
 ・引用や数式、概念集
 ・思想の萌芽(断片、強固な意志反映、単刀直入)

『カイエ』は、そっけなく、荒削りであるが、
ひとつの思想が生まれようとする場に立ち会うことができるプロセスは、
スリリングな読書体験となる(あとがき)

工場労働からの追認(停止、観照すること)、
人類共通の運命たる不幸への共苦から、
 【真空へ移行】—「対象無き空間へ移行、本性と自足(精算)」
 【天秤、梃子、錘の関係性】—「真空との距離と、その代償(債務)」
 【幻想と偶像崇拝への馴致】—「代償のすり替え(遮蔽幕となる媒介)」

といった空間を通じて、本書は、
「ひとに伝えるべき純金の委託物」として、
ある何かによって遮蔽され、忘れ去られようとしている、
真空へと諸精神を媒介する。
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一  重力と恩寵            二  真空と代償作用
三  真空を受けいれる         四  執着を断つ
五  埋めつくす想像力         六  時間を放棄する
七  対象なしに欲する         八  自我(モワ)
九  脱-創造(デクレアシオン)    一〇 消えさること
一一 必然と従順            一二 幻想
一三 偶像崇拝      一四 愛   一五 悪
一六 不幸        一七 暴力  一八 十字架
一九 天秤と梃子(てこ)        二〇 不可能なもの
二一 矛盾               二二 必然と善とを分かつ懸隔
二三 偶然               二四 愛すべきものは不在である
二五 浄めるものとしての無神論     二六 注意と意志
二七 馴致               二八 知性と恩寵
二九 読み               三〇 ギュゲスの指輪
三一 宇宙の意味            三二 仲介(メタクシュ)
三三 美                三四 代数学 
三五 「社会の烙印を……」       三六 巨獣
三七 イスラエル            三八 社会の調和
三九 労働の神秘
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【真空へ移行】—「対象無き空間へ移行、本性と自足(精算)」
「無垢、無対象、本性」
 ・愛すべきものがない、これこそ神の愛の証
 「どうしようもなく神を欠く、その限りにおいて、この世界は神そのもの」
 (同義語=神の不在、必然、善)

 ・みずからの根を断たなければならない
  樹木を切り倒し、そこに十字架を作り、日々、この十字架を担が~
  社会的、植物的にも自身の根を断つこと
  あらゆる地上の祖国から自身を追放すること
  脱ー創造の代替—幻想—他者に仕打ちを加えること
  自我ではなく、集団的自我はさらによくない
  都市は我が家にいる感覚を与える
  流謫の地であっても、我が家にいる感覚をもつこと(435)

 ・超本性的なものの領域に入り込んではじめて、
  人間は社会的なものを凌駕できる(真空)

 ・自身の中の怠惰と宿痾を認める—工程を開始する

「執着を断つ、真空を受け入れる」
 ・真空—死の側にある
 ・真空—自己の占める一点に切り詰める(対象無き孤独)
 ・受容—死、過去
 ・放棄—霊的な裸性(時間性の放棄)
    —「彼は自身の神性を脱ぎ捨てた」
    —奴隷の本性を身にまとう(自然界の原理への従属)
    —生成から身をもぎ話す
    —希望、快楽と失望の無化

 ・対象なしを浴する—その媒介としての欲望(対象無き空間に向かう射)
 ・無媒介的な精神への移行(∋白痴∋無神論(懐疑)∋一神教)
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【天秤、梃子、錘の関係性】—「真空との距離と、その代償(債務者)」
「相反するもの、相矛盾、両立不可能」
 ・人間の生は不可能である。不幸のみがこれを痛感させる(本来の水準)
 ・善は不可能である—善が悪を引きづり、悪が善を引きづる
          —実在的な善は硬さ厚みをそなえ、青くという影を生み出す(170)          —虚構の善を付け加え、悪を覆い隠す     

 ・欲望は不可能である—諸対象を破壊することによるため(171)
           —何かを欲望することは不可能であるから、無を欲望せねば~
           —特定の相手を対象に欲望を充足できぬ共通点(欲望と欲望の対象)
           —ドンファン、ナルキッソス(理想の対象を追う、投影する)

 ・この世界に純粋な善はない
  すべては仲介、手段、架け橋にすぎないのだから(架け橋は目的ではない)
 (哲学、幾何学、芸術、詩、物理学、天文学、生物学など=架け橋)

 ・われわれは被造物であると同時に矛盾—神であると同時に無限に神から遠い存在である
 ・天秤として、梃子としての十字架—上昇の条件たる下降
                 —地へと下りる天が、地を天へと押し上げる
「天秤、釣り合い(錘、代償)」
「関連性を捉える(限界点の識別、解体、推論的理性)」
 ・自身のうちに沈黙を生み出し、
  あらゆる願望、臆見を黙らせ、
  内奥の精神への接触させる道具たるべし
  なにも期待しなくなった時
  鉱物の瞬間まで堕ちて無となる。そのとき精神が糧となる

 ・自身が放棄したものしか所有できない(諸精神)
 ・われわれは何かであることを放棄せねばならない—これが唯一の~(65)
 ・魂、本性、精神の動き—重力の類の法則に支配されている(天秤、梃子)
 ・物質的な重力の法則—生、肉、所有支配、諸対象の執着
 ・非ー行為、無為の行為(力が無であるがゆえの公平)

 ・わたしの内奥に隠されている本質的な不完全性がすべて
  人間の思考のまなざしが捉える限りにせよ。
  わたしの眼にあわらにされることを
  せつに懇願する
  わたし自身を真理の中にとどまらせるだけのために(110)

 ・矛盾は必然性を見極める試金石
  —精神がぶつかる諸々の矛盾(176)
  —あらゆる真理は矛盾を含む
  —尖頂、際、境界

 ・相関性—相反するものをつなぐ梯子(矛盾をつなぐ相関性の一表象)(176)
 (保存則、影光、表面裏面など)

 ・相反する断定—同義語、逆説
 ・代価—釣り合う報い
 ・報い、代償—過不足なく釣り合う見返りを受け取る
       —剥奪による絶望(29)

 ・ひとびと—犠牲者、債務者—諸対象に債務を負っている
      —欲求充足、損失補填(20)
 
 ・苦痛の効用—自身が無にすぎぬことを教えてくれる(194)
 ・悲惨、凋落—精神へ到る恩寵
 ・『現象を救う』—連続性、苦痛の代償
 ・生誕—磔刑に処せられた奴隷のようなもの(老病死が含意)

 ・実在的なものと想像上のものの区別—実在の地獄と想像上の楽園(102)
 ・実在物を識別する基準—硬くてざらざら感触が荒いもの
  —想像上のものを廃する
  —幻想を棄てる(時間所有という)
  —(魂:存在)(存在を食する:臆見を食する)
  —偶像崇拝の解体

 ・∋精神∋想像力(思想)∋知覚(生理現象)(想像力は知覚を覆い隠す)(100)
   —苦痛なくして執着を断つことはできない

 ・執着の断念—愛する対象を至高の中で破壊消滅する
       —自己を破壊消滅する(対象への執着を破壊消滅する)
       —所有への執着(未来過去、生への執着)
       —「煩悩の滅却」

 ・恩寵—下降運動から成る法則(精神の上昇、身の降下)(16)
 ・恩寵—精神世界
 ・重力—肉、執着
 ・いかにして転移するか「重力→恩寵」(14)
 ・無際限に沈むことで、限界から逃れる(時間性からの解放)(187)
 ・「俺にはもはや話す術さえ分からない」(下方からの沈黙)(128)
 ・悲惨を真に認識していればこそ、光はほとんど耐えがたく感じる(136)
 ・ついでに与えられる類の事象—友情を斥ける術、孤独を守り抜き
               —夢想はすべて打砕かれるに値する

 ・とことん憎悪を知りつくす、味わい尽くす(自身の精神内で諸対象を破壊する)
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【幻想と偶像崇拝への馴致】—「代償のすり替え(遮蔽幕となる媒介)」
「真空を遮る構造」
 ・社会下における人間(社会∋力、権力、特権∋人間)
 ・どうあがいても社会的なものは人間にとって超越的であり続ける
 ・かくて力の頂点に据えられた変化に酔いしれた犠牲者は、
  前任者と同じかそれを上回る悪行に走り、ほどなく失墜する
 (剣の柄にある悪は切り先にも伝わる)

 ・社会的なものは例外なく力の支配下にある(集団的群)
 (悪の再生産—同次元において、悪を制すること—革命の幻想)

 ・あらゆる問題—時間に帰着
 ・時間の流れの苦痛が非存在と存在を引きはがす—遮蔽幕(76)
 ・時間にさらされるもの—死の危険に応じて虚言を分泌(屈辱からの傲慢、内的虚言)
 ・デミウルゴスの呪詛(恣意的な時間性と十字架の創造)
  —時間性の中で磔刑に処されている、散りばめられた精神(マニ教、粉砕された善)
  —空間と時間は二重に感受しうる唯一無二の必然である()

 ・唯一の暴力—時間の暴力(150)
 ・時間の暴力は魂を引き裂く—その裂け目から永遠が入り込む(150)
  —時間はあなたの行きたくないところへ、あなたを連れていく
  —他の人間があなたの帯をしめさせ
 
 ・時間の糸—恣意的なものへの従属強制(特権構造)(268)
 ・われわれは非実在的な鎖で実在的に縛られている(時間、後悔、悔恨、恐怖、方法)
  —われわれ自身の本性を覆い隠す

 ・口実を作る理由—自己の偶像化(狂信)
         —傲慢と謙遜(虚無と一神教)
         —自己と大義(低劣さと医大)
 
 ・原始的な生へ怠惰な解決策
 ・文明の財産目録の無意味性—諸発明の奴隷に貶めた陥穽
 ・奴隷—労働の疲労困憊の代価、単なる、実存のみ
 ・労働—刹那的にやり過ごす時間—死
 ・服従—物質と同じ流儀、時間に屈すること
 ・干渉—強いる、従属征服
 ・嫌悪—あらゆる労働につきまとう
 ・他者—独房の中の群、その外側が全宇宙

「錘、代償のすり替え」
 ・機械、記号、企図—集団的思考、死人精神の人間
 ・頽廃の介在物(金銭、機械、代数学)
 ・鍵—行為、媒介物
 ・隠蔽—透明なものの向こうの背後に隠された不透明の対象
 ・錘をすり替える精神—「混乱はどこに?苦痛はどこに?」
 ・己の救済を浴する人—代償無き自己保存欲
 ・創造—神を模倣する悪しき企て
 ・数多くある誤謬の元凶—創造できぬという事実を認識も甘受もしない(127)
 ・毒の調合、虚言—進歩、啓蒙、全体主義—相反の混在
         —法的な権威—時間における永続性

「対象、幻想への執着、派生(錘、代償のすり替え)」
 ・神か金銭か—いずれかを選ばなければならない(16)
 ・未来の中に場を占める—守銭奴、n倍創造、享楽
 ・肉への執着—熱力学的な代償作用
 ・諸対象に執着する—所有、願望—贋物(絶対性、袋小路)
 ・報復の願望—均衡を求める願望(悔恨、憎悪、憤怒、怨嗟)
 ・渇望ループ—蓄財
 ・革命—閉じた系 強迫観念—進歩
 ・世界の実在—執着から成り立っている(自我の実在、傲慢)
 ・着飾る女性—高く持ち上げる代償として、自身を低く貶める(天秤)
 ・被造物は無であるのに自身を万象だと思っている 
 ・群は足し算ができない
 ・「裸であることを恥じた」—守銭奴の度合い
 ・巨獣—地上に縛り付ける群的なもの
    —自身の精神から無限に隔たったもの

 

シモーヌ・ヴェイユの名言: 哲学と人生に対する27の考察 (meigen-hibiki.net)