グリップを引き出す②・・・タイヤを潰す力の正体 | 黄色のトパーズ

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そのバイク、何cc?
俺も昔はバイクに乗ってたんだよ。
スズキのグースってヤツでさ・・・

グリップを引き出す①・・・タイヤが滑っても転倒しない謎 の続き。バイクがコントロール下にある時、滑り出し等のごく短時間を除けば、タイヤの接地面の加速度がゼロ付近であることが分かりました。加速度がほぼゼロの接地面が入れ替わりながらバイクが進んでいるわけです。いちいち“付近”とか“ほぼ”とか付けるのが面倒なので加速度ゼロということで話を進めます。

ここでタイヤ接地面にどんな力がかかっているか考えてみる。

自分のロガーのデータを見ると、バンク角はごく短時間50°(横1.2G)を超えて55°(横1.4G)くらいまで(稀に60度近く・横1.7G)、そこからアクセル全開でバイクがフル加速体制になるときが45°(横1G)前後。その時の最大加速G(縦G)がごく短時間0.5Gを超えるという感じなので、縦0.5G/横1.0Gとしてみました。

この時バイクから接地面には荷重×(縦0.5G+横1.0G)で赤い矢印のような荷重×1.12の力がかかっています。何故かというと力=質量×加速度だから、なわけですが・・・僕が割と信奉している、科学と言う宗教のニュートン力学という宗派、高校で習う物理。物体の運動についてたった3つの法則、うち一つが数式・・・つまり数式はたった一つで説明してしまおうというシンプルで美しい理論なのですが、そのたった一つの数式が力=質量×加速度(F=ma)。普段、何気なく使う力という言葉。ライディングの説明でもよく使うと思うのですが、この力が質量×加速度なので力を知るには質量と加速度を知りたい。データロガーは区間タイムと最高速が人気で加速度は超絶不人気で見る人が少ない感じですが、自分が割と加速度を見てしまう理由もここにあったりします。タイヤに荷重、要はタイヤ接地面に力をかけて走るとよく言うけど、力がかかっているかどうかは加速度グラフが分かりやすい。

前置きで戦車のキャタピラーを思い浮かべたりしてタイヤ接地面の加速度を調べたのも、接地面にかかっている力を知るためです。接地面の加速度はゼロだったわけですが、となると力もゼロ(力=質量×ゼロ)。力がつりあっている状態でなければなりません。ロガーのデータより赤い力が接地面に働いていることが分かるわけですが、つりあっている状態なら赤い矢印と同じ大きさの逆方向の力、青い矢印の力が働いていることが分かります。この青い矢印が路面からバイク接地面に働く力、摩擦力。グリップの正体。

青のグリップ力には上限が決まっていて、上限の範囲内であれば赤がどんな方向でもどんな大きさでも必ず逆側に同じだけのグリップ力が働きます。バイクがコントロール下にあると言うことはグリップしていても滑っていてもタイヤ接地面の加速度がゼロなので、そういうことになってしまいます。上限の範囲を超えると赤い方向に向かってタイヤの接地面は加速し始めます。上の図であれば立ち上がりでスリップダウンした時にバイクが飛んでいく方向と赤い矢印は大体一致しているので、この辺はイメージしやすいと思うのですが。


そして赤と青の矢印がタイヤを潰している力です。
矢印の配置を変えただけで同じ事ですが、こっちの方が潰してる感がイメージしやすいかも? 潰していると言うより引き伸ばしている、引き伸ばされて接地面積が増える感じ。 前述の通り、青い力は上限まで赤い力の逆側に勝手に働くので、赤い力を大きくしたり、青い力の上限を引き上げようと、乗り方だのサスセッティングだの空気圧だのやってるわけです。

いきなり上の図から始めてもよかったけど、赤と青が何故同じ大きさで逆方向に存在するのか?とか考えるとキャタピラーあたりまで遡らないといけない気がしたので長い前置きに。本題の青い力の上限、つまりグリップ力を引き上げるにはどうすればいいか? 続く。