
グローバリズムの終焉
世界の貿易により品物が活発に動き、人が往来し、資本が国境を
越える時代がここ数十年継続している。
人々はこの状況をグローバリズムと呼ぶ。
そこには共通のルールがあり、国境での国別の少しの規制はあれど、
特定の国を差別せず、取引が出来てきた。
しかし、ロシアのウクライナ侵攻を機に、この状態が大きく変化して
来ていると思う。
もちろん、リーマンショック時には金融危機がアッという間に世界に
広がり、各国経済を混乱させるのを目の当たりにして、もう少し規制を
強めた方が良いという動きも出てはいたが。
昨今の状態は、これが大きく変化しようとている状態だ。
国の安全保障に重大な影響がある、エネルギーと食糧の安定確保が
特定の国々によって阻害されつつあるという事だ。
ワシは、50年も前から一貫して、エネルギーや食糧の自給率は
それが購入できる限りにおいて、ある程度低いのはやむを得ないし、
国々の特性を生かして、分業によって共栄すればよいと考えてきた。
そして、今まではそれが十分に機能していた。
だから、寒冷化や温暖化による干ばつなどで、世界的な食糧不足
などの状況が起こらない限り、買えなくなるという状況は起こらない、
多少の不作で価格高騰は起こるだろうけど、買えなくなるまでには
至らない事を前提としていた。
ところが、今回のロシアによる侵攻を契機に、関係国での生産の
縮減はもとより、流通の阻害が起こり、気に入らぬ国へは売らない
というような恣意的な動きまで出てきた。
食糧を政治的に使うという禁じ手が堂々とまかり通り始めた。
即ち、共通のルールが壊されようとしているわけだ。
これが進めば、世界が分断され、ブロック経済化が進まざるを得
なかろう。
世界のどこからでも買えるから、仕入れ先を好きに選べばよいという
ルールが壊れれば、囲い込みが始まるのは当然の成り行きだ。
世界の役割分担が大きく変わり、分業が成立しなくなれば、やれる
ことは限られてきて、ブロック内での交易と、自前での供給しか道が
なくなる訳だ。
何故分業してきたかといえば、そこで作る方が安いからであって、
国産化=物価高という強い相関が生まれるのは当然の事。
それでも、高くても買えるのなら、輸入価格が国産価格に迫るまでは
買えば良い訳だが、量が不足して買えないとなると話が別になる。
買えなければ、高くても自分で作るしかなくなる訳だ。
食糧自給率が問題になるんだが、今の指標が現状把握に妥当か
といえば、全くナンセンスだというしかない。
食糧自給率=国産カロリ/(国産カロリ+輸入カロリ±在庫増減)
が今の指標で、国民がたらふく食ってるか、飢えているかは埒外に
なっているのだ。
だから、明日輸入を全面禁止すれば、即刻、食糧自給率は100%
になる訳だ。
食糧問題を云々する場合、自給率の指標から変えないと、現実を
見誤る訳だ。
食糧自給率は
国内食糧生産額(あるいはカロリ)/国民の必要食糧費(またはカロリ)
で測られなければならないだろう。
しかも、生産額については、種子や肥料や農薬の輸入額は割り引か
ねば意味がないし、F1種子の如く一代限りのものは国産と数えては
いけないだろう。
恐らく、こういう計測をすれば、現在の食糧自給率は10%を下回る
と思われる。
現時点で食糧輸入が止まれば、食糧自給率は100%になるが、
大半の国民が1年ほどで飢える。
ロシア侵攻の如き、世界的に見れば極く小規模の争いですら、
これほどの大きな影響を受ける。
数ヶ国が絡むような中規模の争いになれば、流通は大きく阻害
されようから、影響は甚大となる。
グローバル化の終わりは食糧とエネルギーの危機の始まりである。
そろそろ、高くても自給できる体制を構築し始めないと手遅れに
なってしまうかもしれない。
食糧生産の経験やノーハウが失われつつある今が最後のチャンス
かも知れない。
併せて、種子の開発や肥料の国産化が求められるが、窒素は
ともかく、リンやカリウムは国産化できないから、仕入れ先の拡大や
多角化も視野に入れねばならんだろうし、回収技術も必要だろう。
もちろん、即刻そういう事態になるとは思えないし、紛争が終われば、
再び活発な交易が回復するという楽観的予測もあろうけれど、
世界はその方向に動いていないのは確かで、今までのような
役割分担や分業での共栄に依拠するにはリスクが大きすぎる世界
になって来たと言えるんだろう。