核無き世界 | 悠釣亭のつぶやき

核無き世界

G7広島サミットの閉幕に際して、首脳声明が発出された。
その中に核軍縮に関して下記声明が盛り込まれた。
「全ての者にとっての安全が損なわれない形での核兵器のない
世界という究極の目標に向けて、軍縮・不拡散の取組を強化する」


うーん、苦肉の表現ですなぁ。
「全ての者にとっての安全が損なわれない」ってのは一体どんな
事を意味してるんでしょうか。
1国だけが核放棄しても、その国の安全が損なわれないように
という意味ですか?
例えば、北朝鮮が核放棄した場合、その安全をどう担保すると
いうんだろ?

裏を返せば、「それが出来ないから放棄できない」って事になる
訳ですわな。
ウクライナを見れば自明なように、すぐ目の前でこれに反する
事態が起こってる訳ですわな。

イラクに至っては、持ってるかもしれないという疑惑だけでもって
国家体制が潰されてしまったわけですな。
明らかに声明に反する行為が堂々と為されてきた訳で、今回の
サミット以降は決してそういう事はしませんっていう事ですか?

千歩譲って、それが出来たとしても、誰から先に核を放棄するん
ですか?
あいつが持ってる限り放棄できないと、お互いに思う限り、誰も
放棄なんてしませんよね。


「軍縮・不拡散の取組を強化する」っていうけど、具体的にどんな
ステップを踏んで行こうとするんでしょうか?
今まで以上に何を強化するってんでしょうか?

今回声明に盛り込まれたのは僅かに、
・核兵器不拡散条約(NPT)は、国際的な核不拡散体制の礎石
・軍事目的に使用され得る物質、技術及び研究に対する効果的
 かつ責任ある輸出管理を強化
ってな枝葉末節の文言だけ。

核兵器禁止条約ってのがあるのに、G7諸国はどの国一つ、
見事に批准してないが、どの口が「核無き世界」と言うんですか?
自分たちの核は正しい核だとでも言う積りなんでしょうか?
仲良しクラブ内の核は正しい核なんでしょうからねぇ。

核保有国である、G7の米英仏、ゲストのインドが参加したわけ
ですが、4国が核兵器廃止に向かって、今までに何らかの行動を
しましたか?
保有国が増えるのを阻止する活動までは積極的に見えるが、
自らは廃絶する気はないのに、他の国が廃絶する事を求め
たって、そりゃぁ、受け入れられる訳は無いっしょ。


核兵器を無くす気が本当にあるんなら、どんなステップを踏んで、
「全ての者にとっての安全が損なわれない」ようにするのか、
保有量を漸減してゆくのか、増やそうとする国に対して何をどう
してゆくのか、絶対に手放そうとしない国に対して、何をどう
してゆくのか等々、具体的で実効性のある道筋を示すべき。

「取組を強化する」ってのなら、少なくとも、何をどう強化するのか
だけでも明示するべきだが、それが上記の2項目で、核兵器禁止
条約に触れもしないのは、やる気はありませんってのと同義。


もう一つ、核廃絶後の世界がもし実現したとしても、そこでは
通常兵器の軍拡競争が待ってるはずです。
核で守れないなら、当然通常兵器でしか守れない訳ですな。
ま、世界が滅亡する事は免れるかも知れませんけどね。


岸田氏がどのくらい本気で「核無き世界」と宣っているのかは
伺い知れないけど、各国は「変な文言は入れるなよ」って気持ち
だろうから、結局は上記のような声明文になったって事。

ハッキリ言います。
「核無き世界」は絵空事です。
それに向かって努力することは尊い事かも知れませんが、もっと
現実を見て対処すべきですな。
ホントにやる気があるのなら、G7以外の保有国も呼んでからに
して下さいな。

 

 

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