発達のゆっくりなお子さんの言語訓練をしています。
小児ST(言語聴覚士)歴10年と少しです。
その子は、私が小児STになって間もない頃に出会いました。
大体、10年くらい前になるでしょうか?
当時、小学校5年生、普通学級に在籍。成績は良い方です。
知的に遅れのないASD(自閉スペクトラム症)です。
(いわゆるアスペルガータイプ)
その子は、個別訓練ではなく、グループ訓練に参加していました。
お母さまとは、定期的に面談するのですが、そこでびっくりした話を聞きました。
社会科のテストがあり、みんな静かにテストに集中していた時の事です。
シーンと静まり返っている中、その子がいきなり立ち上がり、教室の後ろにあるロッカーに歩いて行きました。
そして、ロッカー内の自分のランドセルの中から、
社会科の教科書を取って席に戻り、
堂々と教科書を見ながら、テストに記入しはじめました。
カンニングって、普通コソコソするものだけれど、
その子は、隠す気もなく、あまりにも堂々としていたので、
クラスの皆や担任の先生は、呆気に取られて、しばし、ボー然。
何が起こっているのか、理解するのに少し時間が必要だったそうです。
しかし、当の本人は、
なんでみんながビックリしているのか理解出来なかったようです。
よく話を聞くと、どうやら、
「テスト」とは、
『今、頭の中にある知識で受けるもので、教科書を見ながら書いてはいけない』という事を“知らなかった“そうです。
※小学校5年生の時の話です。
そして、その子は先生にひとこと、
「そういうものなら、先に言ってよ!」
とケロッとしていたそうです。
先生は、この子は自閉スペクトラム症と診断がついていると知っていたし、
日頃のお母さまの努力のおかげで、クラスメイトにも理解があったため、穏便に済んだようです。
記憶力が良い子なので、今までは、既存の知識で問題なくテストを解くことが出来ていたのですが、
高学年になり、内容も難しくなったため、覚えきれない部分が出てきたらしいです。
それを見るために、教科書を取ってきたんだそうです。
本人、悪気はないですが、世間一般ではそれをカンニングと言うのだけれど。。。。
・・・・もしかしたら、他の子のテスト用紙をのぞかなければ、カンニングではないと思っていたのでしょうか❓
人のテストを見てはダメだけど、教科書は見ていい、と解釈していた可能性も。。。。。
今となっては、確認する術はありませんが。。
お母さまは、まさか「テスト」の本質を知らなかったとは、
『盲点だった』、
とおっしゃっていました。
私も、当たり前過ぎて、予測不可能な出来事でした。
ASDのお子さんに対しては、私たちの当たり前がわからない事を十分理解して、
なるべく、たくさん話し合いをして、どこかズレているところがないかチェックしないと、、、と勉強になりました。