言語聴覚士(ST)のつぶやき

言語聴覚士(ST)のつぶやき

小児のST(言語聴覚士)をしています。
訓練方法などはあまり書く予定はなく、訓練室での出来事を書いています
※個人情報がわからない様に書いています。

ブログの内容は個人的な見解として述べています。
また、個人が特定できない様に、状況を詳細に記述する事ができません。ご了承下さい。

私の最初のブログです。↓
https://ameblo.jp/yazzuu/entry-12823570487.html

発達がゆっくりなお子さんの言語訓練をしている言語聴覚士です。
いわゆる「小児ST」と呼ばれています。

現在のクリニックに常勤で勤務して、十数年が経ちました。

今日は、読み書きに苦手さのあるお子さんについてのお話です。

  「あれ?文字が読めていない」


実は、私の勤務するクリニックでは、読み書き障害(LD)だけのお子さんは訓練していません


ところが、普段の言語訓練をしていると、

「あれ?この子、ひらがながあまり読めていないな」

と気づくことがあります。

たとえば、言葉の訓練をしている中で文字を使う場面が出てきたときに、文字の読みにつまずいていることが分かることがあります。

そういう場合には、その子の必要性に応じて、読み書きについても訓練することがあります。

私が担当するのは、ASD、ADHD、知的障害、ダウン症、機能性構音障害など、さまざまな背景のあるお子さんたちです。

そして、その中に読み書きの苦手さを併せ持っているお子さんがいるのです。

  すべてをSTが教えるわけではありません


では、どこまで訓練するのか。。。。

時々、読み書き障害を専門にしている小児STさんもいますが、


私のところでは、ひらがなを覚えて、簡単な単語がある程度読めるようになったところで終了となることが多いです。

その先は、学校にお願いしています。

学校の先生方は、子どもたちに文字や勉強を教えることについて、私たちよりずっと経験がありますし、教え方も上手です。

STが何でも抱え込む必要はありません。

その子にとって、どこをSTが担当し、どこから学校につないでいくのがよいのか。

そこを考えることも、支援の一つだと思っています。

  教え方も、その子によって変わります


ひらがなを覚える方法はいろいろあります。

学校では、文字とイラストなどを結びつけて覚える「キーワード法」が使われることもあります。

ただ、私が担当しているお子さんたちの場合、知的な発達の遅れなどがあることで、キーワード法が使えない場合が多い。

「みんながこの方法で覚えているから、この子にも」

とはいきません。

そこで私は、その子に合わせて別の方法を考えます。

例えば、読みやすさに配慮して開発されたUDフォントを使って文字を提示することもあります。

文字の形を見やすくしたり、読み間違えにくくしたりすることで、少しでも文字への抵抗感を減らせればと思っています。

時間がかかっても、その子のペースで。。。

もちろん、すぐには覚えられません。

時間がかかります。

そして、そもそも「文字を覚えたい!」というモチベーションが高くないお子さんもいます。

そんなときは、焦りません。

一文字覚えるのに時間がかかってもいい。

今日はここまでできた。

前回できなかった文字が読めた。

そんな小さな変化を積み重ねながら、その子のペースで進めていきます。

  「読み書きが苦手」といっても、みんな違う


小児STをしていると、本当にいろいろなお子さんに出会います。

ASDの子。

ADHDの子。

知的障害のある子。

ダウン症の子。

構音が苦手な子。

そして、その中に読み書きの苦手さを持っている子もいます。

同じ「文字が読めない」という状態でも、理由は一人ひとり違います。

だからこそ、

「この方法が正解」

と決めつけるのではなく、

この子には、どんな方法なら届くだろう?

と考える。

それが小児STの仕事の面白さでもあり、難しさでもあるのかなと思います。

時間はかかります。

でも、ある日突然、

「読めた!」

という瞬間がやってくることがあります。

その瞬間を見ると、

「ああ、やっぱり焦らなくてよかったな」

と思うのです。

発達がゆっくりなお子さんの言語訓練をしている言語聴覚士です。

いわゆる「小児ST」と呼ばれています。

現在はクリニックの外来に常勤勤務して、十数年になります。

今日は、小学4年生の吃音の男の子のお話です。
※個人が特定されないよう、一部内容を変えています。



  吃音の男の子、もうすぐ訓練終了です


小学4年生のAくん。

吃音があります。

でも、最近はずいぶん落ち着いてきました。

もちろん、「吃音がなくなった」というわけではありません。

それでも、本人も上手に吃音と付き合えるようになってきて、そろそろ言語訓練も終了かな……というところまで来ました。



そんなAくん。

この日の訓練が始まってすぐ、お母さんがニコニコしながら、

「Aくん、今週末デートなんですよー」

と。

……え?

デート???

小学4年生ですよね?

「えー!素敵~♡」

思わず声が出ました。



  なんと、告白されたそうです


お母さんによると、

「好きだって言われたそうなんですよ!」

とのこと。

おおお……。

小学4年生で告白ですか!

そして、Aくんもその女の子と仲良くしているらしい。

お母さんも嬉しそうに、

「楽しく学校生活を送れていて、嬉しいです」

と話していました。

うんうん。

それは嬉しいですよね。

吃音のあるAくんが、学校でお友達と楽しく過ごしている。

好きな女の子もできた。

そして、今週末はデート。

なんだか私まで嬉しくなってしまいました。

……ところが。

話は、ここでは終わりませんでした。



  まさかの「もう一人」登場!


なんと。

その女の子に告白されたあと、

その女の子と仲良しの別の女の子、Bちゃんからも告白されたそうです。

……え?

ちょっと待って。

情報量が多い(笑)。

つまり、

Aくん

女の子Aちゃんから告白される

その後

Aちゃんと仲良しのBちゃんからも告白される

ということらしい。

そしてAくん、

「どうしよう……」

と迷っているそうです。

いやいやいや。

小学4年生ですよね???

昭和のおばちゃん、ここで完全に時代についていけなくなりました。





  【ツッコミ①】小学4年生で「デート」!


まず、これですよ。

小学4年生でデート。

昭和のおばちゃんとしては、カルチャーショックです。

私の小学生時代なんて、

「○○くんが好き♡」

くらいでも、かなりの大事件だった気がします。

ましてや「デート」ですよ。

デート!

令和の小学生、恐るべし。



  【ツッコミ②】そしてBちゃんまで!


そして、もう一つ気になったこと。

AちゃんとBちゃんは仲良し。

AちゃんがAくんに告白した。

そのことを知っているのかどうかは分かりませんが、その後、BちゃんもAくんに告白。

うーん。

私がBちゃんの立場だったら……

好きだったとしても、

「友達が好きな男の子だから……」

と、いったん自分の心の中にしまっておくかなぁ。

友達との関係を優先するかなぁ。

……なんて思ってしまう。

これも、昭和のおばちゃんの感覚なのでしょうか。

「今どきの子は、好きなものは好き!なのね~」

と、妙に感心してしまいました(笑)。



  吃音があっても、青春してね


Aくんの吃音は、以前よりずいぶん落ち着いてきました。

もうすぐ言語訓練も終了です。

でも、吃音があるからといって、学校生活や友達関係、好きな人との関係まで遠慮する必要はありません

もちろん、恋愛だけが青春ではありません。

友達と遊んだり、好きなことに夢中になったり、学校で笑ったり。

そういう一つ一つの経験が、その子の人生を作っていくのだと思います。

だからAくん。

吃音があっても、

どうぞ、思いっきり青春してください♡

……それにしても。

子どもたちから教えてもらう「今どきの世界」は、まだまだ知らないことだらけです。

そしてAくん。

さて……

いったい、どちらの女の子を選ぶのでしょうか?  

おばちゃん、ちょっと気になります(笑)。

発達がゆっくりなお子さんの言語訓練をしている言語聴覚士です。いわゆる小児STと呼ばれています。

現在では、クリニック外来に常勤勤務して十数年が経ちます。



  支援学校に入ったばかりのAくん


今回は、支援学校に入ったばかりのASD児、Aくんのお話です。

Aくんは偏食が強く、基本的には好きなものしか食べません。

園に通っていた頃も、給食はほとんど食べませんでした。

「給食は食べなくても、家に帰れば好きなものが食べられる」

Aくんにとっては、それで特に困ることはなかったのだと思います。



  園に通っていた頃の生活


園で給食を食べなくても、2時〜3時頃には帰宅します。

そして、家に帰れば好きなものが食べられる。

つまり、

給食を食べない

家に帰る

好きなものを食べられる

という生活でした。

Aくんにとって、「苦手な給食を頑張って食べる理由」はなかったのでしょう。



  ところが、支援学校に入ると…


支援学校に入学すると、生活リズムが変わりました。

給食を食べないまま学校が終わると、その後は放課後等デイサービスへ。

そして、家に帰るのは夕方6時近くです。

朝ごはんを食べてから夕方6時近くまで、何も食べずに過ごすのは、さすがにお腹が空きます。

そこでAくんは考えました。

「給食、食べようかな…」

そして少しずつ、給食を食べるようになったそうです。



  子どもなりの「妥協」


今までAくんは、

「給食は食べなくても、あとで好きなものが食べられる」

という環境にいました。

しかし、環境が変わったことで、

「給食を食べなければ、お腹が空く」

という現実に直面しました。

その結果、Aくんは自分なりに折り合いをつけたのだと思います。

嫌いなものを急に好きになったわけではありません。

でも、

「食べた方がいい」
「食べないと困る」

と理解したのかもしれません。

子どもって、大人が思っている以上に、周囲の環境をよく見ていて、その中で自分なりに生きる方法を考えているのだなと思った出来事でした。


偏食がある子にとって、ただ「食べなさい」と言うだけでは、なかなか変わらないこともあります。

Aくんを見ていると、子どもの行動を変えるのは、言葉での説得よりも環境の変化なのかもしれないなと思います。

Aくん、妥協したのね(笑)

でも、その妥協も大きな成長です。

発達がゆっくりなお子さんの言語訓練をしている言語聴覚士です。

いわゆる「小児ST」と呼ばれています。

現在はクリニックの外来で、常勤の言語聴覚士として十数年勤務しています。

  幼児の吃音に「リッカムプログラム」


小児STをしていると、吃音のある幼児さんを担当することがあります。

幼児の吃音への支援方法のひとつに、

「リッカムプログラム」

があります。

リッカムプログラムは、オーストラリアで開発された、幼児の吃音に対する行動療法です。

STの指導のもとで、保護者がお子さんとの日常の会話の中で、毎日決められた方法で取り組んでいきます。


リッカムプログラムについては、対象となるお子さんの年齢など、条件があります。

  年に1回、横浜で講習会があります


このリッカムプログラム。

毎年1回、横浜で講習会が開催されるのですが、そこで改めて感じることがあります。

対象となるお子さんに、講習会で教わった方法をきちんと行ってもらう。

すると……

対象となる条件に合ったお子さんであれば、

不思議なくらい、吃音が減ってくるんです。


「ちゃんと方法に沿って続けていくと、こんなふうに変化していくんだ」

と、臨床をしていても感じます。

本当に不思議です。

  「減ってきたから、もういいかな?」が落とし穴


ところが、ここで注意していただきたいことがあります⚠️

吃音が減ってくると、親御さんも当然、

「よくなってきた!」

と安心しますよね。

そして……

「吃音も減ってきたし、家で毎日やるのは大変だから、少し減らしてもいいかな?」


となってしまうことがあります。

お気持ちは、とてもよくわかります。

毎日取り組むというのは、親御さんにとっても負担があります。

でも、

ここで自己判断で取り組みを減らしてしまうと、吃音がまた増えてしまうんです。

せっかく減ってきたのに……。

これは、もったいない!

  減らし方は少しずつ時間をかけて慎重にいきます。


リッカムプログラムでは、吃音の状態を見ながら、取り組み方を少しずつ調整していきます。

ですから、

「吃音が減ったから、今日から家でやることを半分にしよう!」

と、自己判断で減らすのではなく、

「そろそろ減らしてもいいですか?」

とSTに相談してください。

そして、STがお子さんの状態を見ながら、

「そろそろ次の段階に進みましょう」

と判断したところで、少しずつ変えていきます。

  「減った=終わり」ではありません


吃音が減ってくると、

「治った!」

と思いたくなります。

でも、リッカムプログラムでは、そこからも大切な段階があります。

吃音が減った状態を安定させていくこと。

これも、とても大切なんですね。

毎日の取り組みは、親御さんにとって決して楽なものではありません。

だからこそ、

「もう減ってきたから、やらなくてもいいかな」

いやいや、そこはちょっと待ってください

  減らすタイミングは、STと相談してください。


「毎日やってください」と言われると、

「毎日ですか……😅」

となってしまうかもしれません。

でも、その「毎日」の積み重ねが、お子さんの変化につながっていくことがあります。

小児STとして、リッカムプログラムに関わっていると、

「やっぱり、続けるって大事なんだな」

と感じます。

発達がゆっくりなお子さんの言語訓練をしている言語聴覚士です。いわゆる小児STと呼ばれています。
現在はクリニック外来で常勤勤務して十数年になります。


小児STの仕事の一つに、発音の練習があります。


  「つまんない!」から始まった発音練習


数年前、小学校の通常学級に通う定型発達の女の子がいました(以下Aちゃん)


Aちゃんは当初、ほとんど母音だけで話していました。
例えば「こんにちは」は「おんいいあ」。
子音がほとんど出せない状態でした。


発音の改善のために当院に通う事になったのでした。

Aちゃんの将来の夢は「アイドルになること」。
ダンスが大好きで、とても頑張り屋さんでした。

時間はかかりましたが、

練習を重ねるうちに、少しずつ出せる子音が増えてきました。

ある日、一緒に文章を読んで発音練習していると、Aちゃんが突然、

「つまんない。お歌で練習したい!」

と言いました。

「いいアイデアだね!じゃあ『チューリップ(童謡)』でやろうか!」

すると即答で、

Aちゃん「それじゃやだ!」

私「じゃあ、何の歌がいいの?」

Aちゃん「Bling Bang Bang Born!」




私「えーー😱」

あんな速い曲、大人でも難しい(笑)。

残念ながら、私の口が回らないので却下。

私「他には?」

Aちゃん「さくらんぼ!」

大塚愛さんの『さくらんぼ』でした。


なんで昔の曲を知ってるの?と思いましたが、

どうやら、ダンスの曲で「さくらんぼ」がかかっていたみたいで、覚えたようです。




それでも十分速い曲でしたが、一緒に頑張って歌いながら発音練習をしました。

子どもは、大人が思っている以上に「楽しいこと」の力を持っています。

その後、その子は自然に話せるようになり、訓練を卒業しました。

アイドルになる夢は叶えられたかな。

今も元気に過ごしているといいな、と思い出すことがあります。

  暑い夏の午後、子どもたちはぐったり…


発達がゆっくりなお子さんの言語訓練をしている言語聴覚士です。いわゆる小児STと呼ばれています。

現在、クリニックで常勤勤務となり十数年が経ちました。

毎日暑い日が続きますね。

今では小中学校の教室にエアコンがあるのが当たり前になりました。しかし、7〜8年前までは、ここ愛知県では普通教室にエアコンがない学校がほとんどでした。

その頃、午後から来院する小学生は、みんな暑さでぐったり。

特に支援学校のお子さんは、暑さで興奮し、叫んだり暴れたりしながら来院することもありました。(涼しい季節には見られない行動でした。)

  「職員室は涼しいのに…」


会話のできるお子さんからは、

「職員室や保健室はエアコンがあるんだよ。」
「先生たち、ズルい!」

そんな声を聞くこともありました。

今思えば、子どもたちは本当によく頑張っていたと思います。

  豊田市で起きた悲しい事故


2018年7月17日、愛知県豊田市の市立小学校で、小学1年生の男の子が生活科の授業で学校近くの公園へ出かけました。

約30分活動した後に体調を崩し、病院へ搬送されましたが、熱中症で亡くなりました。

この事故は全国に大きな衝撃を与え、学校の熱中症対策を見直す大きなきっかけとなりました。

  一気に進んだエアコン設置


事故の後、学校へのエアコン設置は驚くほどの速さで進みました。

私の勤務先の近隣でも、半年も経たないうちにほとんどの小学校で設置が完了しました。

当時、公立小中学校普通教室のエアコン設置率は全国で約58%でしたが、その後急速に整備が進み、現在ではほぼ100%となっています。

  現場で実感した変化


エアコンが設置されてからは、支援学校のお子さんが暑さで興奮しながら来院することはなくなりました。

午後から来る小学生も、以前より元気な表情で来院することが増えました。

教室にエアコンがあることは、単に「快適になる」というだけではありません。

子どもたちが安全に学校生活を送り、午後からも元気に過ごせる環境づくりにつながっているのだと、現場にいる私は実感しています。

今回の事故で尊い命が失われたことは、本当に痛ましい出来事でした。


でも、最近の親御さんに豊田市の事を話すと、「ふーん」という反応で、知らないんですよね。


ちょっと悲しいなぁ、でもしょうがないよね、と思う一方で私はこのことを忘れずにいたいな、と思います。


発達がゆっくりなお子さんの言語訓練をしている言語聴覚士です。いわゆる「小児ST」と呼ばれています。

現在はクリニック外来で常勤勤務となり、十数年になります。

  「プロですね」と言われて嬉しかった話

私は、少し変わった経歴のSTです。

自閉症の子どもを育て、子どもがグループホームへ入所したあと、言語聴覚士の養成校へ通い、国家試験に合格して、この仕事に就きました。

だから、保護者の立場も、STの立場も経験しています。

先日、あるお母さんからこんなことを言われました。

「先生って、ご自分のお子さんの話をあまりしませんよね。」

「私が先生の立場だったら、『うちの子もそうでした』って経験を前面に出して話しそうなんですが、先生はすごく冷静に分析していますよね。」

そして最後に、

「先生って、プロですよね。」

そう言っていただきました。

正直、ちょっと意外でした。

でも、「プロ」という言葉は、とても嬉しかったんです。

  「私も経験者です」は武器にもなる。でも…。


もちろん、自分の子育て経験を積極的に発信している方もいます。


それは決して悪いことだと言っているのではありません。

経験者だからこそ救われる保護者さんもいます。

ただ、私はあまり自分の経験を前面に出したいとは思わないんです。

理由は単純です。

発達障害には「これが正解」がないからです。

自閉症と言っても、本当に一人ひとり違います。

100人いたら100通り。

私の子どもの経験は、数あるケースのたった1例に過ぎません。

「私は経験者だから。」

その一言だけで正しい答えを持っているように話すのは、少し違う気がしています。

極端な言い方をすれば、

「だから何?」

と思ってしまうんです。

  私が頼りにしているのは「私の子」だけではない


私が保護者さんへお話しするときに思い浮かべるのは、自分の子どもだけではありません。

十数年間、出会ってきたたくさんのお子さんや保護者さんです。

「以前、似たようなお子さんがいました。」

「そのときのお母さんは、こんな工夫をされていました。」

そんなふうにお話しすることが多いです。

もちろん、自分の経験が役に立ちそうな場面なら、その話もします。

でも、それは数ある経験の一つ。

なので、私の子育てを積極的に話すことはありません。


保護者さんと同じ目線でいたい

私は、「経験があるから教えてあげる」という立場にはなりたくありません。

そんな空気は、自分自身あまり好きではないんです。

経験を振りかざすのではなく、

保護者さんと同じ目線で一緒に考える。

それが私のスタイルです。

だからこそ、「先生ってプロですね。」と言っていただけたのかもしれません。

あの一言は、今でもとても嬉しくて、心に残っています。

これからも、経験に頼り過ぎず、目の前のお子さんと保護者さんをしっかり見られるSTでありたいと思っています。


発達がゆっくりなお子さんの言語訓練をしている言語聴覚士です。

いわゆる小児STと呼ばれています。

愛知県にあるクリニック外来で常勤勤務して十数年になります。

  発達がゆっくりなお子さんを育てる外国ルーツのご家族


数年前、外国ルーツのASD児の親御さんとお話しする機会がありました。

日本語での会話は難しいため、私たちはGoogle翻訳を使いながらコミュニケーションを取っています。

今ではGoogle翻訳も本当に優秀ですね。



  埼玉県へ引っ越したい理由


その親御さんは、ご夫婦ともフルタイムで働いています。

仕事をしながらASDのお子さんを育てる毎日は、とても大変そうです。

「親戚がいる埼玉県へ引っ越したい。」

そう話してくださいました。

身近に頼れる人がいるだけで、子育ての負担は大きく変わります。

特に発達障害のあるお子さんを育てている家庭では、その存在はとても大きいものです。



  「でも引っ越せない」


ところが、続けてこんな話をされました。

「埼玉県では、日本語ができないと仕事が見つからない。」

「愛知県は、日本語があまりできなくても雇ってもらえる。」


だから引っ越したくても引っ越せない。

私はその言葉がとても印象に残りました。

「愛知県だから日本語ができなくても働ける。」


正直言ってちょっと複雑でした。

この一言が、ずっと頭から離れませんでした。



  いろいろ考えてしまった


私は愛知県で長く働いてきました。


自動車産業をはじめ、多くの製造業があり、外国人労働者もたくさん暮らしています。

だからこそ、日本語が十分でなくても働ける職場が比較的多いのでしょうが、


日本にいるなら、少しでもいいから、日本語を勉強しようとする努力はして欲しいなぁ


「日本語できない状態で雇ってもらえたんだから、もう日本語覚えなくてもいいでしょ!」って思われても仕方ないと思うんです。


もちろん、日本語ペラペラな方も多いけど、覚えようとしない人も多いんですよねー。


正直、この方も覚えようとしないタイプでした。


ASD児を抱えて大変なのはわかるけど、関連する専門用語が多いから、


現場の人間としては覚えて欲しいなぁというのが正直なところです。


Google翻訳を使って頑張ってコミュニケーションを取るのも、時々むなしくなるというお話でした。

発達がゆっくりなお子さんの言語訓練をしている言語聴覚士(小児ST)です。


今日は、小学1年生のAくんとの、ある日の訓練室での一コマをお話しします。
Aくんは、発達障害と境界知能を合わせ持っており、支援学級に在籍しています。


そんなAくんとパパの会話の中に、彼らの持つ「2つの特性」がとてもよく現れた瞬間がありました。


  訓練室で起きた、クスッと笑える「すれ違い」

その日は、パパと一緒に来院していたAくん。
訓練の終盤、パパがAくんに話しかけました。


パパ:「この後、車屋さんに行くんだよ」
Aくん:「何しに行くの?」
パパ:「車検だよ」
すると、Aくんはニコニコしながらこう返したのです。


Aくん:「あ〜、お魚見に行くのね!」


私は「???」
パパも「???」


訓練室に、一瞬不思議な沈黙が流れます。
しばらく考えて、私はハッと閃きました。


「車検(しゃけん)……シャケ(鮭)だ!!」


そう、Aくんの頭の中では、「しゃけん」という響きが、大好きな「シャケ(サーモン)」に変換されていたのです。


  「矛盾に気づかない」のは、境界知能の特性

定型発達のお子さんであれば、
「え?なんで車屋さんにシャケがいるの?」と矛盾に気づいて質問したり、「車検って何?」と聞き返したりすることが多いと思います。


「車屋さんに魚はいない」という前提(常識)があるからです。


しかし、Aくんは「車屋さんでシャケを見る」という状況を、全く不思議に思うことなくすんなり結びつけてしまいました。


このように、**「一見矛盾していることに気がつかない(文脈や状況を総合して判断するのが苦手)」**というのは、境界知能や知的ゆっくりさんによく見られる特徴の一つです。


  「パパが言った!」と怒ってしまう、発達障害の特性

もし、私がこの勘違いに気づかず、そのまま車屋さんに行っていたらどうなっていたでしょう。


きっとAくんは、


「お魚がいないじゃん!」
「パパがお魚あるって言ったじゃん!」


と、激しく怒り心頭になっていたに違いありません。


大人は「車検」と言っただけで、「魚(シャケ)がある」なんて一言も言っていません。


それでも、
「自分の頭の中の思い込み(パパはシャケと言った)が絶対の事実になってしまう」
「相手の本当の意図を汲み取れず、パパが嘘をついた!と捉えてしまう」


ここには、発達障害のあるお子さん特有の「こだわりの強さ」や「融通の利きにくさ」といった特性が強く影響しています。


   子どもの「不思議な言動」の裏側にあるもの

大人の何気ない一言が、子どもの頭の中でどう処理されているか。


今回のAくんのエピソードは、
音だけで判断して矛盾に気づかない(境界知能、知的障害の特性)
自分の思い込みから『パパが言った!』と怒る(発達障害の特性)
という、2つの特性が重なり合って起きた「すれ違い」でした。


もし特性を知らなければ、大人は「なんでそんなことで怒るの?」「嘘なんて言ってないでしょ!」と怒ってしまうかもしれません。


でも、理由が分かれば、「そっか、しゃけんがシャケに聞こえちゃったんだね」と、一歩引いて対応することができますよね。
子どもたちの「不思議な言動」の裏側にある頭の中を、これからも丁寧に紐解いて発信していきたいと思います。

発達がゆっくりなお子さんの言語訓練をしている言語聴覚士です。
いわゆる小児STと呼ばれています。

現在はクリニック外来で常勤勤務をしており、十数年になります。

今日は、**「現実を受け入れることの難しさ」**についてのお話です。

  「普通級ですよね?」という自信


発達がゆっくりなAくん。

診断はまだついていませんでしたが、おそらく知的障害の診断がつくだろうと思われるお子さんでした。

ASDやADHDの特徴はほとんど見られず、知的な遅れが中心という印象でした。



年中の終わり頃、私は何気なく小学校について尋ねました。

「小学校はどうしますか?支援学級に行かれますか?」


すると親御さんは少し驚いた様子で、

「えっ、普通級ですけど? 何か?」

という返事。

その口ぶりからは、「普通級で当たり前ですよね」という気持ちが伝わってきました。

私は心の中で、

「Aくんは、頑張れば普通級へ行けるという感じではないので、今の状態では、かなり厳しいな。……」



もちろん、普通級に行くこと自体が悪いわけではありません。

でも、その子に合わない環境を選んでしまうことは、本人にとっても周りにとっても、とても大変なことがあります。

親御さんも他のお子さんとの差は感じていました。


ただ、「支援学級に行くほどではない」と考えていたようです。



この認識のズレを、どう埋めればいいのだろう……と考えました。

  数字は時に現実を教えてくれる


そこで年長になってすぐ、標準化された検査を実施しました。



そして結果を、できるだけ分かりやすくお伝えしました。

「Aくんは今、このあたりです。」

「同じ年齢のお子さんの平均は、このあたりです。」

「普通級で学習を進めるには、このくらいの力が求められることが多いです。」

言葉だけでは伝わりにくいことも、数字やグラフで示すと見えてくるものがあります。

もちろん、検査の数字だけでその子のすべてが決まるわけではありません。

それでも、進路を考える材料としては、とても大切な情報です。

  親御さんが前を向いた瞬間


私は正直、反発されることも覚悟していました。



ところが親御さんは、

「そうなんですね。」

と、意外なくらい素直に受け止めてくださいました。



そして後日、

「支援学級を見学してみます。」

と話してくださいました。

この一歩はとても大きいです。



支援学級に行くことがゴールではありません。

普通級がゴールでもありません。

大切なのは、その子が無理なく学べる場所を、大人が冷静に考えることです。



親の願いはよく分かります。


できれば普通級へ。

みんなと同じように。

そう思うのは、ごく自然な親心です。


私自身、自閉症児の親なので、気持ちは痛いほど分かります。



でも、その願いが強すぎるあまり現実が見えなくなってしまうと、一番苦しむのは子どもです。



親の希望ではなく、子どもの力を見て判断する。


それは時に、とても勇気のいることです


だからこそ私は、感覚ではなく「数字」という客観的な材料を大切にしています。

現実は時に厳しいものです。


でも、現実を知った上で選んだ道のほうが、子どもはずっと安心して歩いていけると私は思っています。