いい話 in 奈良 | グローバルに波乱万丈



今回の日本旅行、最初の三泊は奈良だったんですけどね。


乗り継ぎをしたアトランタで、私のスーツケースが一時行方不明となり、

着替えがないので、奈良滞在中はずっとそのまま、旅行中に来ていたジム服姿。

その上、化粧品もなく、すっぴん。 


とても寒かったので、南国フロリダ人の私達には非常に辛くて、

他にもなんやかんや、事が思うように進まず、

あまりいい日本滞在スタートではなかったんです。



でも、夜、ホテルの近くの居酒屋で...


信じられないほど安くて美味しい物が、たくさんあるお店で、

LOVE・日本食の主人に、「これ、食べてみんちゃい。」 (英語で。) とあれこれ注文して食べさせ、

主人は 「ナビビール、クダサイ。」 (日本語で。) と、

日本行きの目的ナンバーワンである、サッポロビールを5回もおかわりし、

二人で楽しく、ワイワイ過ごしたんです。


で、ふと、キャッシュ・オンリーであることに気が付き、

(アメリカは、ファーマーズマーケットですらクレジットカードが使えるので。)

もし持っている日本円が足りなかったら、主人がお店に残り、

私がカードをホテルに取りに行き、銀行にATMでお金を下しに行く、と決め、

恐る恐る、お勘定を頼みました。


やっぱり足りなかったので、私が慌てて主人のジェケットを着ながら、オーナーの奧さんに、

「あの... 私がホテルに... 銀行のカード取りに行って...」 と説明すると、

「ああ、いいですよ。 いいですよ。 あるだけ払ってもらえたら。」 とサッパリ。


主人と二人、申し訳なく、戸惑っていると、

オーナー達の知り合いらしい、人の良さそうな男の人がやってきて、

楽しそうにお喋りをしながらビールを一杯だけ飲み、

千円をカウンターに置いて、「これじゃあ、多過ぎよ!」 と追う奧さんに、

のれん越しにただ微笑んで、消えて行ったんです。


そして、奧さんが、私達に笑いながら、

「同級生なんですよ。 お客さん達の足りない分だけ、あの人が払ってくれたわ。」 と。



翌日、銀行で日本円を手に入れ、そのお店に行って、 (同じ服着て、再びすっぴんで。)

スーツケースがなくなったりで、いい始まりではなかったこと、

26年前、桜が満開の時に渡米し、ずっと桜を見たかったことを話し、

「念願の桜が見れたし、夜には日本人の優しさに触れることができ、

“とってもいい一日になったね。” と二人で何度も言いながら、ホテルへ歩いたんですよ。

日本でのいい思い出になりました。 ありがとうございました。」 と、

最後のへん、声が震えながら、お礼を言ったんです。


そして、またたくさん食べて、飲んで、 (主人、「ナマビール、クダサイ。」 を四回。)

奧さんと、人生論、家族論みたいなことも語り、

お勘定をお願いした時、「昨日足りなかったの、足してくださいね。」 と言うと、

「昨日のは昨日で、もう締めてますから。 いいんですよ。」 と。


でも、主人、「フランス語で、“Les bons comptes font les bons amis.” 

(貸し借りのない関係が、良き友情を作る) と言うんです。」 と、

お勘定と共に、前夜の分を足して渡したんです。



翌朝、ホテルに奧さんとご主人からの手紙が届いていました。





「居酒屋むーちゃん」、奈良駅前の小さな郵便局から南にちょっとのところです。

もし、行かれたら、

フロリダのモロッコ人&日本人夫婦がよろしく言っていたと、伝えてくださいね。