前夫を想う | グローバルに波乱万丈





22年前に亡くなった前夫のこと、考えることはほとんどありません。


主人に悪いという気持ちからか、

一緒に居た時間よりも、植物人間の彼のベットの横に座っていた時間の方が長いからか、

あまりにも辛く、悲しい思い出が付き添うからか、


彼のことを思い返すことは、めったにありません。




  



日曜のアカデミー賞で、恒例の今年度に亡くなった映画界の人達の追悼の部分で、

ベット・ミドラーが 『WIND BENEATH MY WINGS』 (私の翼の下の風) 歌うのを観て以来、

彼のことを考えています。



その歌は、25年前、私が渡米した当時にヒットしていた映画 『BEACHES』 の主題歌で、

前夫はこの曲を聴く度に、

ベット・ミドラー本人が演じる歌手が、幼少からの親友をガンで亡すシーンを思い出し、

“It's so sad.” と悲しんでいました。


交通事故までの短い結婚生活の、数少ない彼の思い出のひとつです。 




彼の子である長男は、エクボと、しゃんと背筋の伸びた姿勢、そして絵の才能を受け継いでいます。


前夫が最後の息をついた後、私は部屋の天井を見上げ、

“Now, you will watch over us.”
 「これから、私達を見守って。」

体を離れていく彼の魂に、頼みました。


神とか天国とか信じない私ですが、

長男が、いつもエクボを見せて笑顔で明るく、しゃんと背筋を伸ばして凛とし、

コンピューター・グラフィック・アーチストとして頑張っているのは、

前夫が約束を守り、見守ってくれているからかも知れません。




ベット・ミドラーが、

“I could fly higher than an eagle, 'cause you are the wind beneath my wings” 

(私が鷹より高く飛べるのは、あなたが私の翼の下の風だから)

と歌います。


前夫が風になって息子の翼を押し上げ、高く羽ばたかしてやってるのかも知れません。




今月、長男は、前夫が逝った年齢となります。

突然途切れてしまった前夫の人生の続きとしても、

息子はこれから、彼に見守られ、しっかり生きていくことでしょう。