「彼... 彼の遺体、モロッコに帰ることになったそうだ。
息子を故郷の地で眠らせたいという、お母さんの希望らしい。」
そう言った昨夜の主人。 私は、複雑な気持ちでいます。
三日前、主人の友人が突然亡くなりました。
20年近く前に、ディズニーのインターナショナル・プログラムでモロッコから渡米し、
ウエイターからこつこつ努力をし、今では某高級ホテルチェーンの南フロリダのリゾートのディレクターとなっていた、
子供が三人いる四十歳の人でした。
いくら大の大人になっていても、いくらアメリカに家族がいても、いくらこの国で立派な人になってても、
子供の埋葬の場所は親の希望が通され、彼はモロッコに帰っていきます。
奥さんはモロッコ人ですし、もしかしたら彼女もモロッコに帰るつもりでいるのか、
そんなモロッコの風習的な決断に、異論はなかったのでしょう。
でも、もし奥さんがモロッコ人じゃあなかったら、かなり揉めそうな気がします。
うちは、主人の両親は他界してますから、揉めることはないでしょうが、
私の希望、モロッコに帰る帰らないどころじゃあないんです。
主人は名だけのイスラム教徒ですが、それでもイスラム教徒の習慣である埋葬が、当然のこととして意識にあります。
日本人の私は、絶対に火葬です。
灰となって、主人の灰と混ぜてもらい、主人と一緒に息子達の居るこのアメリカの土になることが希望なんです。
なんでも私の言うことを聞いてくれる優しい主人ですが、火葬には抵抗があるようです。
でも、ずっと一緒に居たいと言う私の涙を見て、私の希望を適えることを考えてくれています。
亡くなった主人の友人、人のため、特に同じ故郷のモロッコ人のために貢献した人で、
FACEBOOKなどをするような人ではありませんでしたが、
すぐに誰かが、彼のメモリアルのFACEBOOKアカウントを設定し、多くのコメントが寄せられているそうです。
悲しい知らせに居たたまれず、奥さんにお悔やみの言葉を言いたく、遠くからも集まったモロッコ人のあまりの数に、
彼が働いていたホテルの会場ルームが、集合所として開かれたということです。
妻の私が言うのもなんですが、
もし主人に何かがあれば、もっと多くのアメリカ在住のモロッコ人達が、殺到することになると思います。
そんな中で、私の希望を意思表示し、通すことができるのかどうか、不安です。
まずは、本当に火葬でいいのか、本当にアメリカでいいのか、主人の気持ちをしっかり確かめておこうと思います。
もし主人がモロッコに帰りたいなら、帰らせてあげたいとも、思い始めました。
縁起でもないことですが、風習や考え方が違う大勢のモロッコ人の中で、流されてしまわないようにも、
きちんと決めておき、他のモロッコ人の友人にも希望を伝えておいてもらわないといけません。
...などと、今回の不幸の知らせで、いろいろ考えています。
追記、
さっき主人が帰ってきて、やっぱり奥さんは反論し、モロッコには遺体を送ることを拒否しているらしく、
アメリカでの埋葬になりそうなんだそうです。