なぜ最近の学部・学科名はわかりにくいのか | 中小企業診断士グループ“YTD”のブログ

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しんしんです。

最近の学部や学科の名称は、一見しただけではわかりにくい名前が増えている。是非は別において、社会の変化の要請により学部・学科名が変わっていく様を、佐藤優の著書「蘇る怪物」からモスクワ大学を例にとって見ていきたい。

ソ連時代、モスクワ大学哲学部では「科学的無神論学科」が存在していた。専攻内容は宗教研究であり、神学、宗教史、宗教事情に関する研究を行っていた。ただし、ソ連では宗教はアヘンであり、神は存在しないことが建前となっていたので、科学的無神論という立場から、宗教を批判的に研究することを前提としていた。当時のソ連では、大っぴらに宗教研究を行える場が限られていたため、クリスチャンが無神論者の仮面をまとって宗教研究を行っていた例もあったという。

ペレストロイカが進むにつれて、科学的無神論という建前が外れたため、「科学的無神論学科」は、「宗教と自由思想研究学科」と改称した。ただし、この場合の「自由思想」とは宗教的偏見からの自由という意味なので、無神論とほぼ同義である。1991年のソ連崩壊後、イデオロギー的な縛りがなくなったので、学科の名称も時代の変化に対応できるように「宗教史宗教哲学科」へと改称した。

一見すると奇妙に見える名称でも、それぞれに歴史的な背景がある。面白いので他の学科の例を見てみよう。

同じく哲学部の「現代ブルジョア哲学批判学科」では、ホルクハイマー、アドルノ、ハーバマスなどのフランクフルト学派やデリダやフーコーなどのポストモダン系の哲学を扱っていた。情報が自由に入ってこない割には、研究水準は高いらしい。ただし、論文の構成がユニークで、普通の論文であれば、最初の論旨と最後のまとめに目を通してから本論に入るという読み方をする。

しかし、「現代ブルジョア哲学批判学科」では、批判的に西洋哲学を扱うことを建前とするため、「西欧では、こういうケシカラン思想がある」という出だしと共に、本論で西欧の最新の思想の潮流を紹介し、結論部分では適当にマルクスやレーニンを引用して終えるような構成を取っていたようだ。見出しと結論を見ただけでは、全く学問的価値はないのだが、途中で繰り広げられている論旨を丁寧に読むと、高度な研究が行われていたことがわかるというカラクリになっていた。

「哲学部科学的共産主義学科」は政治学科のことである。しかし、ソ連では政治学はブルジョア学問であると位置づけられていたので、政治学科という名称では政治学の研究や講義は行われていなかった。しかし、実際にはソ連にも政治はあり、共産党官僚や最高会議代議員になるための教育は必要である。そこでマルクス・レーニン主義の知識や宣伝や扇動についての訓練を受けるための学科として、「科学的共産主義学科」が設けられたという。ソ連崩壊後は「政治学科」と改称した。

ロシアでは、政治権力の存在感が日本と比べ物にならないくらい強い上、政治体制そのものが激変したため、今の日本の大学における学部・学科名の変遷とは比較にならないかもしれないが、歴史的な背景に応じて名称変更が行わている点は同じだろう。日本における歴的背景とは、少子化対策としての募集人員の確保である。ロシアでは時の政権の要請に応じて、大学側がそれに対応したのに対し、日本では社会構造の変化をもとに大学当局がそれに対応をしている。また、各大学ごとに判断の基準や方針が異なるため、なぜその名称になったのかという説明が難しくなる。

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