パクリを守る親告罪、児童ポルノを守る表現の自由 | 牧村しのぶのブログ

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二次創作は親告罪です。TPP加盟で非親告罪になれば同人文化が終わるという懸念から反対の声が高まり、交渉によって阻止しました。悪質な海賊版の製作は非親告罪ですが、個人の二次創作は親告罪のままです。日本が表現の自由を守るために勝ち取ったTPP交渉の成果です。

 

それが現在生成AIを利用した二次創作と称する生成物が合法だと主張される根拠になっています。しかし合法ではなく、親告罪だというだけです。著作者(著作権者)が認めなければ終りです。

しかし現実には削除してくれと申し入れても応じず、集団で投稿を繰り返し販売までする悪質な利用者がいます。中には殺害予告など嫌がらせをエスカレートさせる完全な犯罪者もいます。

本来同人文化を守るためだった親告罪が、精神的に追い詰められている被害者に告訴の責任を負わせることになっています。

時間がかかり経済的な負担も重く解決を期待できません。

かといって非親告罪化すれば良いともいえません。

それを都合よく利用して被害者を苛む利用者は即座にアカウントを停止するくらいの厳しい措置を取って良いと思います。

 

勝訴して判例を残すべきだ、それをしない被害者が悪い、という非難もよく目にしますが、まず告訴するには加害者を特定しなければなりません。しかしIPアドレスを隠して悪質な嫌がらせを続けている人がいます。特定できないケースもあります。

 

ディープフェイクポルノを作られた被害者、家族のインタビューにも、警察に被害届を出しても犯人は特定できていないと書いてあります。特定できないまま被害が継続しています。

 
加害者が特定できなくても実効性のある規制が必要です。
開発企業、プラットフォームにも責任があります。技術、法規制の両面から被害を防ぐ安全設計を強化すべきだと思います。
 

仮に加害者が特定でき、裁判に至った場合でも、内容をネットで公開することはできません。訴訟の準備を進めていることも公開しないものです。第三者が非難すべきことではありません。

 

示談(民事では和解)になる場合もあります。その場合は加害者の情報は公開されないのが一般的ですが、互いに納得のいく解決になるならそれで良いと思います。

 

裁判で勝訴しろという人は現行法を変えたくない、都合が良いと考えているだけで、被害者の損失を考えていない見物人です。

 

また生成AIで未成年のイラストを描いても日本で児童ポルノとはみなされません。これも本来は性表現の自由、固有の文化を守るために勝ち取った権利でしたが、現在はただのAI CSAMの正当化に利用されています。実在の児童がデータセットに含まれ学習に使われていることは明白ですので、モデルの児童が1人に特定されるのを待たずに規制するのが適当だと考えます。創作物の性表現の自由と、犠牲者のいるAI CSAMは別ものです。AI CSAMの規制は表現の自由と切り離して考えるべきです。