自分の絵だけで使える生成AIはない | 牧村しのぶのブログ

牧村しのぶのブログ

漫画家牧村しのぶのブログです。
新刊、配信情報、創作関連の記事を投稿しています。
Xもご覧ください。https://twitter.com/buncho108

画像生成AIに自分の絵だけを学習させて使えば良い、という人がいます。それができれば自分の絵が描ける弟子として死後も使えます。確かにそれなら良いと私も思います。

 

しかし現状では残念ながら不可能です。

 

Stable Diffusionにはモデル(画像生成に使うアルゴリズム)が用意されており、モデルを活用してAI画像を生成します。

様々なモデルから使用するモデルを選びます。モデルを変更することで、生成される画像の特徴も大きく変わります。写真のようにリアルなモデルもアニメ風モデルもあります。

 

 

学習済モデルファイルの本体はcheckpointといいます。

checkpointに対して追加学習を行った差分ファイルをLoRAといいます。

 

LoRAはLow-Rank Adaptationの略語で、低コスト、少ない計算量で追加学習できるモデルです。LoRAを利用すると、少数の追加学習で生成画像を自分の好みに変えられます。特定のアニメのキャラクターや実在する人物も続けて複数生成することができるようになります。ただし既存の作品には著作権があり、人間には肖像権、有名人にはパブリシティ権の問題があります。

さすがにそうした使い方には批判がありますが、自分の絵や漫画なら良いという人もいます

 

しかし前述したように、自分の絵だけで生成できるわけではありません。追加学習分が自分の絵であってもStabLe Diffusionのモデルに依存しており、その影響を受けます。自分で描いたことのないものは他人の絵に依存します。自分の絵でLoRAを作っても著作権問題がクリーンになるとはいえません。

 

その上Stable Diffusionが使用したデータセットLAION-5BにはCSAM等違法性のあるものが含まれていることがスタンフォード大学インターネット観測所によって明らかにされ、現在DL禁止となっています。適切な安全対策がなされていないStabLe Diffusion1.5をベースとしたモデルは廃止し、できる限り配布を中止すべきだと勧告しています。

The most obvious solution is for the bulk of those in possession of LAION‐5B‐derived training sets to delete them or work with intermediaries to clean the material. Models based on Stable Diffusion 1.5 that have not had safety measures applied to them should be deprecated and distribution ceased where feasible.

 

残念ながら原文の邦訳はありません。

フォーブズの報道です。

 

データセットの問題が解決しない限り、安心して使える権利侵害のない生成AIはありません。

 

よろしければ問題をまとめた先日の投稿もご参照ください。