AIの擬人化は人間の責任を見えなくさせる | 牧村しのぶのブログ

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飲食店ではAI配膳ロボットの導入が進み定着しています。

ファミレスの従業員に直接聞きましたが、ワンオペの時に助かると評価していました。できる作業が限られるため人間1人分は働けませんが、まあ半人前くらいは働ける...という話でした。

 

生成AIの規制を求める人が反AIと叩かれますが、AI配膳ロボットを否定する人は見かけません。反AIではなく、生成AIの使い方に問題があるから規制を求めているだけです。

少なくとも私はそうです。

 

昨日も書いたように、文章生成AIのデータセットに海賊版が含まれるため、ホストしているWEBサイトから削除されました。

根拠になっているデジタルミレニアム法は、2000年に米国連邦法として成立したデジタルコンテンツに関する著作権保護に関する法律です。日本では適用されませんが米国に法人のあるXやGoogleには適用されます。これを根拠にデンマークの権利団体がAI研究用のデータを提供するThe eyeに削除要請をし、それが認められて削除が行われたということです。

 

日本企業も開発中の大規模言語モデルから海賊版を削除して学習し直してリリースしています。

 

まずデジタルミレニアム法を作ったのは人間です。それを使うのも人間です。AIモデルの学習に海賊版を使ったのも人間です。法を根拠に海賊版を公開停止にしたのも人間です。

全て人間の責任で、人間の判断で行われたことです。

ソフトウエアを壊した人間はいません。

誰も反AIではありません。

 

技術が新しく発展が速いために法整備が追いついていません。

学習元の権利は守られないまま営利目的で利用されています。

ポルノやディープフェイクなど、悪用も目に余ります。

だから新たな法規制、技術による対応を求めています。

ユーザーにも、クリエイターにもそれぞれの立場から見える問題があります。黙っていては伝わりません。

 

日本が推進の立場を取っているため国賊のように扱われますが、

立場が悪くなろうと、自分の作品がデータセットに入っており、学習用に使われたことが明白である以上、そこから生じる不都合を見すごすわけにいきません。日本の売り物である可愛い少女のイラストが海外でポルノビデオを作るモデルに使われています。

自分の絵も使われないとはいえません。

リスクを知りながら黙っている方が無責任です。

 

日本人は人型ロボットのファンタジーが好きだといわれます。

アトムもドラえもんも心を持つロボットです。

しかしAIは心を持つロボットではなく人間が操作する機械です。

開発も管理も利用も批判も改善も人間が行うことです。

 

愛すべきロボットだから何もいわずに見守ろう、というのは都合の良いファンタジーです。擬人化によって主役をAIにすることで人間の責任から目をそらさせてしまいます。

 

ロボットだとしてもリモコン次第で敵になり人間を殺すロボットです。アシモフのロボット工学の3原則には「ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない」とあります。

 

ロボットファンタジーが好きなら思い出せますよね。

人間を傷つけないように使うにはどうしたら良いかは人間が考えることです。

 

英語ですがAI開発の第一人者であるジェフリー・ヒントンの紹介している論文「急速な進歩の時代におけるAIのリスク管理」は読んだ方が良いと思います。「人類はAIシステムをより強力なものにするため膨大なリソースを注いでいるが安全性や危害の軽減にはあまり力を注いでいない。方向転換が必要だ」と警鐘を鳴らしています。開発者自身の持つ切迫した危機感が伝わります。

AIが人間を操る可能性、核戦争のリスクまで想定しています。

AIに任せておけば破滅するかもしれない、ということです。

 

パブリックコメントの締め切りは11月5日です。