第5話 あなたは何ヶ月の滞納で追い出されそうでしょうか? | 家賃減額の決定版

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家主に好かれなかったり、気まずくなりたくない人に合理的な理由があるとすれば、法律を知った今の私には、「家賃を滞納した時に、すぐに追い出されたくない」くらいのことしか思い当たりません。


あなたの家主は、あなたが家賃を滞納したとして、3ヶ月以上、家賃を待ってくれそうですか?もし、「今のいい関係なら3ヶ月以上滞納しても大丈夫そうだ」と思っていて、その関係を壊したくないのなら、家主に好かれることを優先させてもいいかもしれません。実際に何ヶ月も滞納した時に、あなたの期待するその関係が、どこまで有効かは、とうてい保証できたものではありませんが。


3ヶ月の滞納というのは、家主があなたを裁判にかけて法的に追い出すことのできる、現在の目安です。以前は6ヶ月が目安でしたが、現在、3ヶ月になっています。つまり、3ヶ月未満の滞納については、家主があなたを追い出さないとしても、それは温情ではなく法的に無理だからです。つまりは、家主の温情が試されるのは、滞納が3ヶ月を超えてからなのです。


けれども、家主が、何ヶ月も家賃を待ってくれるほど「いい人」なら、順調に家賃を入れてくれて何のトラブルもない借家人が、周囲の家賃相場よりも高くなった家賃を「下げて欲しい」と言ってきた時には、あっさり下げてくれると思います。どこの馬の骨かわからない(保証人を取ると言っても、保証人が家賃を本当に保証してくれるかどうかなんて確実じゃないのが世の中です。家賃を滞納されたら、たいへんな手間の末に泣き寝入り、というのが一般的な現実です)新たな住人に7万円で貸しますよ、と言っている同じ部屋で、今までの実績で家賃が確実なあなたからは、取れるのをいいことに8万円取って、「下げてくれ」と言われたら不愉快になる、そんな「いい人」がいるでしょうか?


不合理に高い家賃を、引越しだの敷金礼金だのの負担という、人の弱みを見越して取り続けようとする。値下げを申し入れられて不愉快になるのは、そういう家主です。そういう家主と「いい関係」を保ったとして、いざ失業などで家賃を滞納した時に、ガンガン請求しないと思いますか?「いいよ、いいよ、あなたも大変な時だから」と待ってくれ、滞納が3ヶ月に及んでも追い出しの訴訟を起さないと思いますか?


期待する方がおかしいと思います。


賃貸住宅の経営というのは、実は大きなリスクを伴うものです。変な人に入られたら、ほとんどの場合損はすべて家主がかぶって泣き寝入りです。「家賃は踏み倒して当然」という感覚の人など、実社会にいくらでもいるし、悪気はなくても入居したとたんに払えなくなる人もいくらでもいます。そんな中で、何ヶ月も取立ての苦労もなく家賃を支払ってもらい、安心して暮らさせてもらっておきながら、引越しや敷金礼金、不動産屋への紹介料が大きな負担になるという弱みを見越して高いままの家賃を強制し、あなたをカモって当然だと思っている家主とのいい関係を保つことに、いったい何の価値があるのか、私にはまったくわかりません。


私の友人に「有名大学を二つ、大学院を一つ出ているニートの成れの果て」の人がいますが、彼など、さすがに学業に優秀だっただけあって、「たったの半年しか滞納してないのに、頼まれたんで出てやった。本当は立ち退き料くらいもらえたんだけど、出て行ってくれと頭を下げられちゃってさ。タダで出ることは本当はなかったんだけど」と、自分の寛大さを自慢していました。まともな人間なら出て行った後でも家賃を返すくらいの気持ちになりそうなものですが、彼などは、半年の滞納の後に立退き料なしで出たのを、家主への温情のつもりでいました。


余談ですが、この彼に奢ってやると言われた私は、さすがに断り、吉野家のブタ丼を奢ってあげました。家賃にすべきお金でなど、奢られたくありません。私にも、わずかですが良心というものがあります。ちなみに、今までの人生の通算で百数十回は人に奢られている私が、人に食事を奢ったのは、この時が生涯二度目です。


この彼はヤクザとか犯罪者ではなく、労働意欲が無い、共産主義系の活動をしている、ということ以外は普通の人です。家賃を踏み倒すのが当然と思っている人、踏み倒すしかなくなる人が多数いる中で、まともに誠実な借家人として暮らし、家賃を払い続けるということが、いかに貴重なことか。その貴重な人に「悪い奴に踏み倒される分の損失は甘い奴をカモってまかなおう」とばかり、高い家賃を請求する、それが正しい人間の姿勢でしょうか。


家主に立ち退けと請求された裁判に勝ち、そんなことがなければ接することが無かった「法律」というものにくわしくなった私は、今度は、自分の割高な家賃を下げるために家主を訴えようと、ネットでやり方を調べました。断片的な情報を集めて、「これはこんなところだな」ということはわかりましたが、「このHPまたはブログさえあれば、ラクに全部できる」というものはありませんでした。それで、私が自分で作ろうと思ったのです。


その「ネットで情報を集めている時」に思ったことがあります。


それは、ネットでは、「そのことをよく知らない人が、自分の思い込みをそのままに、当然こういうものですよとして、人に指南しようとすることが多々ある」ということです。


考えてみれば、それはネットだけの話ではありません。私も、立ち退けと言われた時に、役所がやっている賃貸借関係の相談電話や、無料の弁護士相談などに、立ち退き裁判について聞いてみましたが、どちらでも「裁判の結果、立退き料をもらって出ていくことになるでしょう」と言われました。「立ち退きたくない」と言い、お金が欲しいなどと一言も言っていないのに、です。家主側の有名弁護士も、当然そうなると思っていたようです。


専門家でも、「こういう裁判はだいたいこういうように終結するもんだ」という思い込みの方が大きくて、本当にものごとを決定するはずの要因(この場合は法律と判例)がどうなっているか、考えもしない場合が多いのだと思います。法律と判例を見る限りは、出て行かずに済むのは明らかだったのです。


家賃を減額でも、立ち退きを求められた場合でも、そのことについて、いろいろな人がいろいろなことを書いてはいますが、半分は、実際には惑わされるだけ害になるような、書いている人の思い込みにすぎないものです。現実社会の役所で相談に乗ってくださる人でもそうなのだから、人間が人間である以上、当然のことだと思います。


家賃の減額については、「家賃を下げろと言って、下げてくれたらいいけれど、家主に断られたら、部屋を出なくてはいけなくなる」「裁判にまでなったら、とうてい住んではいられない」という、何の根拠もない自分の思い込みが書かれているのを、私は何度か目にしました。そういうこともあるでしょう。けれども、それは、家主が、犯罪者予備軍といえるような異常な人だった場合のことです。客観性が全くなく、自分の気に入らないことがあると他人を恨む、そういう人も世の中にはけっこういます。わけのわからない逆恨みにかられて隣家の住人を斧で襲うような人もいる世の中なので、そういうことがないとはいえません。


確かに、家主が精神的にあまり正常ではないと思える場合は、借家人は行動に注意しなければなりません。減額を求める内容証明郵便を出す、裁判所に調停を申し立てる、などの、精神異常の人を刺激するような行動は、避けた方がいいでしょう。減額が認められても、ショックに陥った家主が正気を失った嫌がらせを始めては、どうしようもありません。


けれども、そういう特殊なケースにしか有効でないことを、一般論として言うのはどうかと私は思います。